MUDDY WALKERS 

銀河鉄道物語

 銀河鉄道物語(2003)各話レビュー

 第20話「選択」(訓練列車650号暴走事件)


あらすじ

 ベガ小隊のシュミット、スピカ小隊のアイと共に銀河鉄道のエリート部隊SPGに研修に派遣された学はSPG隊長ヨハンソンにSPGに誘われる。

 Aパート: 学のSPG研修、ヨハンソンの誘い
 Bパート: 650号遭難、学の選択

コメント

 1話で有紀学の兄護がタビト駅から送り出される際、見送った住民の掲げる垂れ幕に「SPG入隊おめでとう!」とあったのを見て、「SDFの書き間違いではないか?」と思ったが、その真相が明らかになるのが本話。SPGの存在自体は2話で明らかになっていたが、実は銀河鉄道の中でもエリート部隊で、弱冠18歳で入隊した護がタビト住民の誇りなのも頷ける話である(護自身は16歳でSDFに入隊していたと思われる)。反面、20歳でSDFに入隊した学には壮行会の気配さえなかった。
 その学に目を付けたのがSPG隊長ヨハンセンで、シリウス小隊での活躍を見て彼をSPGにスカウトしようと目論む。ヨハンセンには有望な隊員でありながら、若くして殉職した護に対する悔恨の念があった。有紀護の人となりについては作品ではほとんど語られていないが、学には兄に似た所があったらしい。が、シリウス小隊に入隊してさえ日が浅く、学はヨハンセンの申し出に思い悩む。そして、最後の研修で彼を乗せた訓練列車650号が暴走し、たった一人残された学は暴走する機関車を止めて事態を収拾する。その手際は百戦錬磨のSPG隊員すら舌を巻くようなものであった。しかし、彼はSPG入りを断り、シリウス小隊に戻る選択をする。
 ディビッドとの賭けで、学はシリウス小隊に戻らないと賭けたブルースにこの人物のペシミズムを見る。学の生き方は真っ直ぐで若者らしいものだが、そこにシニカルな見方を加えることで、ともすれば危うい学の行き方に一定のバランスが保たれている。
(レビュー:小林昭人)

今週の被害車両・施設

  ■訓練列車650号・・・磁気嵐によりシステムダウン、漂流

作品キャラ・用語紹介

SPG(装甲擲弾兵部隊) 
 かつて有紀学の兄護が所属していた銀河鉄道のエリート戦闘部隊。戦闘列車666を駆り、テロリストの拠点など危険度の高い宙域に先鋒として投入される。SDFのような救助任務は想定しておらず、戦闘に特化した特殊部隊である。砲車や戦闘機など装備についてはSDFと大きな差はないため、練度や隊員の資質で上回っていると思われる。現に学の兄護はその機略でガイサンダーの一部隊を壊滅に追い込んでおり、SPG隊員の能力の高さが伺える。しかし、隊長ヨハンセンの言では各小隊で実績を挙げた隊員を集めたせいか隊員の高齢化が進んでおり、若年隊員確保に苦慮している様子が伺える。SPG隊員の制服はSPDより濃い紺色で、胸に独特の記章があり、コートの丈もSDF隊員より長くなっている。

カオルmemo

 SPGへの誘いを受けた学だが、研修最終で発生した遭難事故を、仲間たちから受けてきた教訓と激励の力で乗り切り、シリウス小隊に残る選択をする。
 この回だけみれば悪くはないが、シリーズ全体を通して見ると難がある。ここが最終決戦に向けての起点になるのだから、今後の展開につながる伏線を学の選択の中に織り込んでおくべきだった。例えばSPGは訓練を見る限りSDFとの違いが明確でない。恐らく制作スタッフも単なるエリート部隊ぐらいにしか考えていなかったのだろう。しかし後に登場する特務機関の専門部隊らしき話が出てくるなら、ここでそれを示しておくべきだった。13話や18話で謎の異星人の襲撃を受けているが、こうした事態への対応はSPGや特務機関が担うべきものだ。そして両話とも学が絡んでいるのだから、それがSPGに誘う理由となる。ただ、そうなると最終決戦に向けた主体がSPGに移り、学も移籍一択となる。それはそれで問題があり、「護兄さんのいたSPGに行くかどうか」という分かりやすい話で終わらせたのであろう。本部の屋上や夜の公園で隊長と話す学の図はまるで学園ドラマのようで見ていて照れ臭くなる。内容次第で後に生かせる話だっただけに勿体ない限りである。

評点

★★★ だんだんと良い感じになってきた。(小林)
★★ テーマとしては良いが、内容が薄い。今後への伏線も必要な個所。(飛田)

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