MUDDY WALKERS 

銀河鉄道物語

 銀河鉄道物語(2003)各話レビュー

 第17話「鎧の女神」(アイリーン捜索作戦)


あらすじ

 列車を脱走した宇宙艇を追ってビッグワンとシリウス小隊は惑星ハーガ・ルーに降り立つ。宇宙艇にはかつてのディビッドの恋人アイリーンが乗っていた。酷寒の惑星に消えた恋人を追い、ディビッドとシリウス小隊はモルガーナ伯爵の古城を訪れる。

 Aパート: アイリーンとの再会、女伯爵モルガーナ
 Bパート: ディビッド奥殿へ、アイリーンの手紙

コメント

 17話は感動的だった12話の二番煎じのような話で、最後に全て幻影だったとコングラで古城が消えるのも同じパターンだが、この作品、やはり作画監督とアニメーターに難がある。なお、カスファンティール城の騎士団長を演ずるのは野沢那智。999の後継作でベテランも思い入れのある作品に、この非力なアニメーターではとため息をつく。見ると銀河鉄道物語のアニメーションを制作しているのはプラネットという会社で、ことアニメ関係においては制作スタッフは会社の後ろに隠れてしまい、誰が何をやっていたのかも分からない。この辺が作品のストーリーや演技の良さに比べてこだわりのない、やや投げやりな作画に影響しているのかもしれない。
 しかし、オチが全て幻覚だったとはいえ、残ったものといえばリンゴくらいだった12話と異なり、この話では冒頭でアイリーンの仲間3人が惨殺されているのであり、下手人のモルガーナが消えたとはいえ、殺害の事実は残っているはずである。前後の辻褄の合わなさは12話の難点だったが、17話では悪いことにさらに悪化してしまっている。消える理由もディビッドの「愛」だったというのも月並みで安直にすぎる。
 とはいうものの、珍しいディビッド主役回で、シリウス小隊の隊員でありながら、ユキなどと比べあまり語られることのなかった彼にスポットを当てたことは評価できる。が、それだったらディビッド以上に目立つあのコインをどこで手に入れたのか、そのいきさつを説明する方が、イネばあさんの二番煎じよりもっと良かっただろう。
(レビュー:小林昭人)

作品キャラ・用語紹介

イスペリルの青い炎 
 惑星ハーガ・ルーに伝わる伝説の宝石。手に取ると自動的にコンバットスーツが装着され、洗脳されて目の前の人間を誰でも殺したくなるという謎のブローチ。伯爵家の庭園の祠に祀られていたそれを令嬢モルガーナが不用意に手に取ったために惨劇が繰り広げられた。華奢な体つきの伯爵令嬢であるモルガーナが宝石を装着すると重い西洋甲冑(スーツ)を着たまま馬に乗れ、人の背丈ほどの大槍を軽々と振り回したことから、おそらくアクチュエーターを仕込んだ強化服であり、頭部には戦闘マニュアルコンピュータがインプットされていると思われる。外見は西洋甲冑に酷似するが、その機能はどう見ても中世のそれではない。過去にバード星の宇宙刑事が持ち込んだコンバットスーツが伯爵家で相続され、伯爵家の滅亡後は犯罪捜査用の映像記録装置(ホログラム)としての機能がディビッドたちに過去の光景を見せたという見方もできるが、スーツの見てくれ等、銀河警察の装備にしては美意識に欠けるので、筆者は別の見方を取りたい。
 銀河鉄道物語は現在から2世紀ほど未来の世界を描いた作品だが(アニメで星野鉄郎が999に乗車するのは西暦2221年である)、宇宙刑事ギャバンは1982年の作品のため、ハーガ・ルー星を宇宙刑事が訪れたのは作品の時代から200年ほど前と思われる。が、スーツの装着速度が0.01秒ではなく、ルックスもギャバンやシャイダーほど洗練されていないため、同時期にこの星を訪れたバードマンが残したパーマンセットの可能性が高い。
 両セットの違いはコンバットスーツには母艦の円盤獣ドルギランが必要だが、パーマンセットの場合はスーツ単独で装着できることである。パーマンのオンデマンド配信はフジテレビであることから、放送局繋がりでイスペリルの青い炎はおそらく朽ちたパーマンセットと思われる。このように不穏な物品のため、伯爵令嬢の起こした事件で遠い昔に封印され、伯爵家が滅びた後は代わりのコピーロボットを置いてバードマンが回収したか、惑星ハーガ・ルーのどこかに眠っているものと思われる。

カオルmemo

 惑星ハーガ・ルーからの救難信号を受信したシリウス小隊。駆け付けてみると、デイヴィッドの恋人アイリーンが倒れていた。彼女を救助したシリウス小隊だが、数人が惨殺されていたことから取り調べのため引き渡すことにする。しかしアイリーンは列車から逃げ出し、トレジャーハンターとして狙う宝石「イスペリルの青い炎」を求めて古都へ向かう。彼女を追ってきたシリウス小隊は謎の古城へ案内される。
 シリウス小隊の中で唯一スポットが当たっていなかったデイヴィッドがメインの回。9話のブルースとの会話の中に登場した「100万エーブル持ち逃げした女、アイリーン」との再会が描かれる。アイリーンはこの話を見る限り金にがめつい宝石泥棒にしか見えない。恐らく恋人から大金持ち逃げ=峰不二子、みたいな図式から生まれたキャラクターなのだろうが、二人が恋人だった頃が想像できるような人物像でなければデイヴィッドが生きない。
 実は本作で一番新鮮だったのはデイヴィッドである。日本人と白人しかいない松本アニメの世界でレゲエミュージシャンのようなドレッドヘアの黒人デイヴィッドは新時代を感じさせるキャラだった。それだけに「ルパン三世」で手垢のついたゴシックロマンではなく、イマドキな男のロマンをひねり出してほしかった。

今週のメンヘラ社長

今週もお休みです・・・



評点

★★ 幻視オチは二回やられると白ける。(小林)
★★ デイヴィッドの扱いが適当すぎないか?(飛田)

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