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銀河鉄道物語

 銀河鉄道物語(2003)各話レビュー

 第13話「運命列車」(銀河鉄道777号遭難事件)


あらすじ

 「さまよえる列車」銀河鉄道777(スリーセブン)、タビト駅からディスティニーに戻る途中、間違って777に乗り込んだ学は旧友スバルと再会する。が、彼らを乗せた列車は次元断層に転落し、別次元の宇宙で学たちは謎の宇宙人の襲撃を受ける。

 Aパート: スバルとの再会、777遭難
 Bパート: アルフォート軍の襲撃、シュラ出現

コメント

 この作品の前作、銀河鉄道999は人気作だったので様々な玩具が市販されたが、中でも人気だったのがポピー社の超合金シリーズで、オープニングで登場する銀河鉄道の各列車をモデル化した「ポピー超合金・銀河鉄道シリーズ」はテレビに熱狂した多くの子供たちの憧れであった(値段もそれなりに高かった)。いちばんの人気はやはり主人公鉄郎の乗る999号だったが、その次がこの777号で、ノスタルジックな999号と異なり、同時期の松本零士のマンガ「SF西遊記スタージンガー」の宇宙船に似た近未来的デザインの列車である。「行き先不明」という設定は当時からあったが、本話は前作では描かれなかったその設定をあえて掘り返し、話のメインに据えている所にスタッフの作品への愛を感じる。
 その「さまよえる列車」に乗っていたのが、かつての有紀兄弟の友人スバル、画家を志していたが事故で利き腕を失い、絵への情熱も冷めて漫然と旅をしている。思うにこの列車は次の停車駅も分からないことから、建設中の高速道路と同じく運賃はおそらくタダで、「銀河鉄道のフリーウェイクラブ」、安いクルーズ列車に入り浸る運命論者スバル(飛田展男)のただ乗り人生に銀河鉄道社員の学は激昂する。二人を乗せた列車は次元断層に転落し、アルフォート軍の襲撃を受ける。
 いつもスクール水着でくだを巻いている社長レイラが初めてその能力を発揮する回、別宇宙の襲撃軍も第1話と同じアルフォート軍で、最終回に繋がる伏線も配されている。場所が別次元では救援に駆けつけたビッグワンも手も足も出ないが、絶体絶命のその時、社長の裏人格「シュラ」が現れ(4話解説参照)、その超能力で777号は現宇宙に帰還する。そしてレイラに面会した学は彼女から謎に満ちた言葉を掛けられる。
(レビュー:小林昭人)

今週の被害車両

  ■銀河鉄道777号・・・次元断層に転落し、先頭車両三両が切断され中破

作品キャラ・用語紹介

別次元・別宇宙 
 ホーキング博士の論説が流行して以降、宇宙真空仮説と別宇宙の存在はSF界でもポピュラーになったが、同時期に自作の世界観の再編に取り組んでいた松本零士はこの仮説による世界を大胆に取り入れている。本作で銀河鉄道の走る宇宙が何かが起きつつある不穏な世界として描かれているのはそのためである。アルフォート銀河は学たちのいる現在の宇宙とは別の次元にあるもう一つの宇宙で、現宇宙に干渉する存在として描かれている。この物語では全26話の大きな流れとしてこれがあり、1話で有紀渉が謎の敵と遭遇したり、2話で特急ハクバが過去に飛ばされたり、8話でロザムンド星が崩壊したりなど(あるいは惑星アグリの崩壊も)、それまでなかった宇宙規模の惨事の裏側には、この虎視眈々と現宇宙を狙う別宇宙の侵略者による、次元を超えて侵略の手を伸ばそうとする様々な試みの影響があると思われる。

今週の殉職社員

ロボット車掌777号
 777号に勤務する550号と同型の量産型ロボット車掌、銀河鉄道の中でも特別な列車である777に勤務できることを誇りに思っている。別宇宙に飛ばされた777号でアルフォート軍の襲撃を受け、機甲兵のレーザー槍数本に念入りに串刺しにされて殉職する。機能停止の間際にスバルに絵画帳を手渡し、夢を諦めないように言い残した。

カオルmemo

 惑星タビトに帰郷した学は休暇を終えてディスティニーに戻ろうとする。しかし彼が乗ったのは「運命列車」と呼ばれる行き先不明の777号だった。今日中にディスティニーに戻らなければならない学は弱り果てる。その列車で同級生だった昴と再会するが、画家を夢見ていた彼はすっかり様子が変わっていた。その時列車は次元断層に転落。謎の宇宙生物が大挙して列車内に侵入する。SDF隊員として学は必死で応戦するが、昴はここで死ぬのが運命だと覇気なく座り込む。
 学がSDFから離れて孤軍奮闘する話だが、熱血漢でどこまでも自分の信念を貫くことだけが取り柄の彼には人間的な魅力が足りず、バルジやブルース以下のSDFがあってこその物語だと思い知らされる。生きる気力を失っている昴への叱責も、3度も繰り返されれば食傷気味となる。鬱の人への対処としては最悪で、ここに学の「浅さ」が現れている。昴がこうなってしまったのは右手を事故で失ったためのようだが、具体的なエピソードが語られるわけではないため、この列車の意味するところが深まらない。襲ってくる宇宙生物の数も多すぎてさすがの学にも対処しきれず、結局レイラの別人格シュラが出てきてすべてを解決する。学の性格同様やや強引な作話で単調な話となった。

今週のメンヘラ社長

彼女はシュラ。私であり、私ではない。
有紀学、あなたの運命が時折私には見えなくなる。
それがなぜなのか、私にも分からない。
それが、この宇宙にとってどんな意味を持つのか。
お行きなさい。あなたの信じる道を。

カオルのひとこと
 メンヘラ社長のメンヘラたる所以は、突如あらわれた別人格シュラにもあるようです。レイラと違ってやる気満々、学たちを襲う宇宙生物をちぎっては投げ、ピンチから恐るべき怪力で救ってくれます。ただし問題があって、彼女は乗客を助けることには興味がなく、その運命に介入してくるのは学だけ。レイラにさえ分からないその意味が、私たちに理解できるわけもありません。しかし修羅場にシュラ登場で、学の人生はどんなことがあっても安泰なのでしょうか?

評点

★★★ 「さまよえる列車」が何なのか非常に気になる。(小林)
★★ ベテラン飛田展男の演技ならもっと昴の内心を深められた。脚本の力不足。(飛田)

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