MUDDY WALKERS 

銀河鉄道物語

 銀河鉄道物語(2003)各話レビュー

 第7話「闇の慟哭:後編」(アディロス分岐点爆破事件・銀河鉄道管理局襲撃事件)


あらすじ

 複数の列車に続きステーションまで爆破され、銀河鉄道管理局は総力を挙げて爆破阻止に動く。一方、謹慎中に駅出入りのベンダー、ショウと出会った学は彼にSDFを辞めるよう勧められる。そんな折、瀕死だった323号の乗客が息を吹き返す。

 Aパート: ショウとの会話、SDF大隊出場
 Bパート: ショウの管理局襲撃、ショウ対メンヘラ社長

コメント

 「心が埋もれっぱなしっていうのかなあ」、キヨスクのキヌコおばさんに言われたという理由で学に近づいたベンダーのショウだが、実は彼こそが一連のテロの主犯であった。が、学同様の心の傷はこの人物にもあり、銀河鉄道の職員を殺戮することには躊躇しないショウだが(潜入の際に管理局の職員一人を殺害している)、自身と親しいキヌコや境遇の似た学を渦中に巻き込むことは避け、職員も逃げる者には手を出さないとうそぶくなど、超国家的機関である銀河鉄道を壊滅させたいにしてはツメの甘さが目立つ。結局、管理局の中枢部まで潜入しながらサイボーグ化された自身の原子爆弾を作動させず、学の説得に折れたショウは彼におそらく自身に通じるものを見ていたのであり、学もまたそれは同じであった。それゆえに彼は管理局やSDFが総力を挙げても発見できなかったショウの爆弾を発見できたし、その動機も看破できたのである。言うなればテロリストのショウはもう一人の有紀学であった。
 「心のありようを分かつのもまた運命」、ショウと学の行き先を分けたのは、最初に学が取り乱した323号で救出された少女であった。重傷で一度は死んだと思われた彼女だが、シリウス小隊の医療アンドロイド・ユキの尽力で息を吹き返し、学はそこに自身の希望を見出す。父や兄の死など、彼にとっては奪われることばかり多かった銀河鉄道だが、それによって救われた人間、命もあったことをショウとの対峙の時、彼はFW−308の筒先に見ていたのである。
(レビュー:小林昭人)

今週の被害車両・施設

  ■アディロス分岐点・・・全壊
  ■銀河鉄道管理局指令センター・・・銃撃戦で壁に穴が空く

作品キャラ・用語紹介

銀河鉄道管理局指令センター
 ディスティニー駅にある銀河鉄道の全列車とSDF部隊を管制する大型のコントロール施設、直上に社長レイラの社長室と展望室がある。ベガ小隊とショウとの銃撃戦で壁に複数の穴を空けられた。

キヌコおばさん CV:よのひかり
 銀河鉄道の始発駅ディスティニーでキヨスクの店子を務める高齢の女性、息子を銀河鉄道の事故で亡くしている。SDF隊員、特にシリウス小隊の面々を良く観察しており、励ましたりアドバイスをしたりしている。あの人付き合いの悪いブルースとも仲が良く、好みを完全に把握していた上に彼が死んだ際には店に祭壇を作って祀るなど並々ならぬ関心を寄せていた。なお、彼女の息子が死んだというデスティニー駅の大事故については結局、作品で語られることはなかった。

ベンダーのショウ CV:浦田優
 ディスティニー駅に出入りしている自販機業者。人好きのする性格でベンダーの仕事のほか、歌や踊りもできるらしい。実はサイボーグで、幼いころに銀河鉄道の列車に撥ねられて重傷を負い、その補償として銀河鉄道により改造人間にされた。撥ねられる原因となった病気の母親については何もされなかったことから、銀河鉄道に深い怨恨を持つ。爆破テロを計画し、溶解型素粒子爆弾で複数の列車、施設を爆破する。その後管理局に乗り込んで一時占拠するが、彼を捕らえに現れた有紀学の説得で逮捕される。数千人規模を殺戮した現代でも死刑相当の重罪人だが、24話で服役中の姿を見ることができることから、銀河鉄道の始発駅ディスティニー星には死刑がないことが分かる。

今週の殉職社員

管理局オペレータ、自動警備ロボ






 ショウと面識のあったオペレータは彼の管理局占拠の際に速攻で殺害され、その瞳孔が認証装置の突破に用いられた。警備ロボはタビト駅に配備されていたものと同型で不審者の追跡能力と簡単な銃器を持つが、これも全身武装化、サイボーグ化されたショウの敵ではなく、破壊場面すらなく複数台まとめて壊され残骸を晒していた。

カオルmemo

 連続列車爆破テロ発生の最中、謹慎中の学はベンダーのショウと行動をともにする。ショウはSDFの仕事は学には似合わないと言い「SDFは銀河鉄道の犬」と言い放つ。ニュースで爆破された列車から救出した少女が一命を取り留めたことを知った学は病院に駆けつけ、そこでバルジ隊長と再会。謹慎解除を願い出る。シリウス小隊は次のテロを防ぐため仕掛けられた爆弾を探すが、学はベンダーの仕事を思い出し、自販機内部から爆弾を発見する。そのとき犯人の真の目的を悟るのだった。
 6話から2話連続の重苦しい展開。クライマックスはベンダーのショウと学の対決である。全身サイボーグの体に爆弾を仕込んだショウと、撃てない銃の銃口を向ける学。二人の行為は対照的だがその過去には共通点があった。銀河鉄道によって肉親を奪われたのだ。しかし運命が似ていても、それを捉える心はあくまで自分のものである。学は「父・兄が命をも捧げた、この銀河鉄道を守りたい」という覚悟を口にし、一つ成長のステップを踏む。しかし当初から気になるのは、学自身に職に殉じたいという「栄光ある死」への切望が垣間見えることである。彼の無謀さはそこから来ているように感じる。やがてその思いとも対決しなければならないだろう。

今週のメンヘラ社長(究極の渉外交渉術)

若者よ、ついにあなたは
ここへ来てしまったのですね。



カオルのひとこと
 一介のベンダーのことも、銀河鉄道総司令はご存じだったようです。しかも、いつかこうなることを予測していたかのような口ぶり。未然に防ぐ気はなかったのでしょうか。あまりにも死者を出しすぎる銀河鉄道、経営責任が問われる事態になりそうですが・・・

評点

★★★★ ここから他の松本作品と違う話になったと思う。(小林)
★★★ 心にある闇を描くだけで十分重い。死者を出し過ぎなのがマイナス。(飛田)

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