MUDDY WALKERS 

銀河鉄道物語

 銀河鉄道物語(2003)各話レビュー

 第5話「ビッグワン強奪」(銀河鉄道534号墜落事件)


あらすじ

 鉱山惑星リオグランデで墜落した534号の事件を調査に向かったシリウス小隊とビッグワンを狙う海賊ガイサンダー。惑星ハクメイでの因縁のある相手に、学はガイサンダーのボスと拳を交える。

 Aパート: ビッグワン強奪、スピカ小隊到着
 Bパート: 学対ガイサンダー、ガイサンダーの最期

コメント

 ブルースとの険悪な関係をひきずりつつ、学とビッグワンは貨物列車が爆破された惑星リオグランデの地表に降り立つ。バルジとブルースが調査に出かけている間、留守車両を預かった学とディビッドだが、ブルースの態度が剣呑な理由はどうも個人的な嫌悪感だけではないようである。
 ビッグワンを奪取された銀河鉄道管理局は車両の破壊を命令するが、この従業員が人質に取られていようがいまいが先ず組織防衛というあり方に、バルジやSDF司令の人格云々はともかくとして、999でも度々垣間見られたこの組織の冷酷さを見ることができる。司令によると「自爆装置が壊れていて遠隔操作できない」という話だが、もし装置が正常なら管理局はディビッドごとビッグワンを早々に爆破してこの件は一件落着としたに違いない。まるで中国の新幹線のような恐るべき銀河鉄道株式会社である。この作品の原型となった999という作品、古い作品のせいか、このように度々現代では受け容れられない組織のあり方が示されるが、それを直すことを仕事というのである。
 前話からなんとなく引っかかっているもの、ガイサンダーのボスはディビッドの鳴らした汽笛の蒸気に巻かれて谷底に転落するが、ボスをぶちのめし、射殺寸前で引き金を引く手を止めた学には父と兄の死を受け容れられない心境、任務で銃を用いることを頑なに拒否する彼のこだわりが垣間見える。主人公にまつわるこの不明瞭さが完全に払拭されるのは、作品でもかなり後の話である。
(レビュー:小林昭人)

今週の被害車両

  ■銀河鉄道534号・・・テロリストの仕掛けた爆弾で離陸直後に地表に墜落、全損

作品キャラ・用語紹介

SDF規約第三百八十七条
 銀河鉄道の車両が敵性勢力に捕獲された場合、いかなる手段を用いても車両を処分することを求めるSDFの規則。執行の際に善意の第三者や銀河鉄道職員を巻き添えにすることも許される。が、かなり柔軟な解釈のできる条文のようであり、バルジの破壊命令を無視した学が単身列車に乗り込んでビッグワンを奪回した際も命令違反については特に処罰もされなかったことから、より適切な措置を取った場合は行為について違法性を阻却する内容も含まれているようである。

カオルmemo

 死の商人がデヴィッド一人を乗せたままビッグワンを強奪する。その悪の手先が学の兄・護を殺した宇宙海賊だったというお話。学は強奪のきっかけに絡むうえ、破壊命令が下ったビッグワンを止めようと独断で行動、敵と走行車両の上で格闘するなど大活躍を見せる。最後にデヴィッドと力を合わせて手動ブレーキのレバーを引く様には、思わず「ファイト!一発!!」と叫びたくなる。
 テンポよく適当にハラハラさせられる話だが、さすがに敵が護を殺した海賊だった、というのは都合が良すぎる。それより目に留まったのは、学とは反対にビッグワン破壊に向けて淡々と仕事をこなすブルースである。彼はロープを使って崖を下り、ビッグワンが通る橋梁を爆破する。学が運命を変えようと奮闘する者だとすれば、ブルースは総司令レイラのいう「運命に身を委ねる」者のように見える。あるいは同僚が死を免れない状況の中で、心を無にし感情を切り離してしまっているのかもしれない。しかしシリウス小隊を上げてかかれば破壊せずとも強奪を阻止できたはずである。それにスピカ小隊もいるのなら、ビッグワンを持ち去ろうとする輸送船を何とかすればよかったのではないか。ことさら運命の過酷さを演出するために作ったようなわざとらしさは、いただけない。

今週のメンヘラ社長(究極の社員操縦術)

人の出会いもまた、運命。

運命という時間の流れ。その流れの中に、
人はただ、身を委ねてゆくだけ。

カオルのひとこと
 運命、運命と言うだけの、簡単なお仕事です。・・・しかし、あの非情なSDF規約を作ったのはこの人なのでしょうか? 実は銀河鉄道、ブラック企業なのかも?!。

評点

★★ こんな話ばかりだったとしたらこの作品は凡作。(小林)
★★ わざとらしい話だが、学とブルースの対比に注目。(飛田)

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