MUDDY WALKERS 

銀河鉄道物語

 銀河鉄道物語(2003)各話レビュー

 第4話「永遠という名の…」(テリー・ゴールドマン失踪事件)


あらすじ

 疫病や戦乱があった時に忽然と現れ、死者を収容して去っていく幽霊列車、銀河鉄道の時刻表にもない謎の列車に兄テリーを連れ去られたゴールドマン兄妹の妹ジェーンはSDFに兄の救出を依頼する。

 Aパート: ゴールドマン兄の失踪、シリウス小隊出動
 Bパート: カレンとの再会、間の駅での対決

コメント

 現実と幻想が入り混じったファンタジーの世界は松本零士のお家芸であるが、松本の場合、そこには必ず死の影がつきまとう。「さよなら銀河鉄道999」以来久しぶりに登場の幽霊列車だが、その詳細は社長レイラも知らず、現世と霊界を行き来する列車に学とルイは取り込まれてしまう。列車の内部は時間が停止し、幻影と霊の行き来する異空間だったが、そこで学たちは死んだ恋人カレンと共にいるテリー・ゴールドマンを発見する。列車は彼らを乗せたまま、本当の死の世界である「間の駅」に向かっていたが、 学はテリーを現世の世界に引き戻すべく奮闘を続ける。「この列車は死者のものだ!」と叫ぶテリーに機械帝国のエネルギー源とするために生身の人間を運んでいた999の幽霊列車がオーバーラップする。999の列車は機械帝国の尖兵だったが、この物語の列車は実体さえない黄泉の国の使いである。運行する骸骨はさながら朽ち果てた銀河鉄道社員の死骸だろうか。
 全26話の中でも異色の話で、4話ではこの話のためだけにデザインされた旧式のロボット車掌や古いタイプの軌道ステーションが登場する。銀河鉄道物語のOVAは2話ごとに出演声優のインタビューの入る豪華なものだが、松本零士のテイストを翻案しつつ、必要なところにはコストを掛け、丁寧な作品作りを心がける姿勢には好感が持てる。
(レビュー:小林昭人)

今週の被害車両

  ■試作機関車138号・・・行方不明

作品キャラ・用語紹介

レイラ・デスティニー・シュラ CV:麻上洋子
 銀河鉄道株式会社の女社長、SDF司令も兼ねていることから作中では総司令と呼ばれている。常人とは異なる何か神秘的な力を身に付けた女性のようであり、占星術の水晶玉に似た銀河鉄道の運行3D玉に手を当て、これから起こる鉄道事故・事件を予見する能力を持つ。が、予知したからといって特に対策を指示するということはなく、銀河鉄道物語ではしばしば現実の鉄道なら「鉄道史を揺るがす」ような大事件、大事故が頻発するが、数百数千の犠牲者を出した事故につき、彼女がプレスの面前に出たり、犠牲者の遺族に謝罪したりする描写は見られない。
 他にもSDFの任務を妨害するイワノフのような問題社員を野放しにしたり、爆破テロ事件では明らかに爆発物を積んでいる列車を通常通り発車させるなど、そのマネジメント能力には大いに疑問があるが、銀河鉄道内部には信望があり、有紀渉やバルジなど、危急時に彼女にアドバイスを求める社員は数多い。バルジらとは剣呑なイワノフも彼女には敬意を払っている。
 裏人格として「シュラ」がおり、SDFビルをほとんど動かないレイラに代わりアルフォート星団兵を手ずから殺害したり、戦艦を爆破したり、次元の裂け目に落ちた列車を引きずりあげるなど超常的な力を駆使することができる。
 登場はSDF司令官同様、毎回同じカットの使い回しで、社長服である青色のスクール水着を着込んだ姿で運行3D玉に手を当てているという、肩の凝りそうなポーズで独白する場面(しかも止め絵)しかない。松本名物の女神キャラだが、アニメーターからは司令官同様、「話に絡まないから別にいいよ」と、線の多い絵を動かすことを億劫がられている様子が伺える。CVは学の母カンナと同じ麻上洋子。

今週の殉職社員

幽霊列車運転手&旧型ロボット車掌 CV:大橋佳野人






 おそらくはかつての戦災か疫病で死没した銀河鉄道の社員。現世と冥界の間を行き来する列車を操縦しているが、その肉体はすでに朽ち果て髑髏のみの不気味な姿を運転席に晒している。運行に供されなかった試作機関車138号に乗車していることから、ひょっとしたら同車両が試験走行中の事故で冥界に転落した際に一緒に殉職した運転手かもしれない。同時に旧型ロボット車掌(現ロボ車掌よりイケメン)も冥界入りしたが、こちらは人間ではないため、白骨化した運転手と異なり、幽霊相手にそのまま勤務を続けている。

カオルmemo

 恋人カレンを交通事故で亡くしたテリーは、募る思いを捨て切れず、3ヶ月に1度廃駅に現れるという幽霊列車に乗り失踪。妹ジェーンが捜索願を出し、シリウス小隊が出動する。ここまで4話、「死」が絡まない話はない。死ぬことを通して生きることの意味を問おうとしているのか。
 廃駅に現れた幽霊列車に思わず飛び込む学とルイ。隊長と通信不能となり二人で対処せざるを得なくなる。この二人がとっさに動いたのは、やはりまだ新人ということが大きい。経験豊富なバルジ、ブルース、デヴィッドは恐らく数多く救援の失敗、助けられなかった命に接してきただろう。新人二人と彼らの違いは「死」に対する恐れ、トラウマを自覚しているかどうかの違いである(専門的には、このように職業上悲惨な場面に立ち会う救援者が受ける心の傷を二次受傷という)。列車の中でテリーを発見した学とルイだが、カレンと離れたくないというテリーと押し問答になるうち、列車は「間の駅」に到着する。降りれば二度と戻れない、冥界への入り口である。ここでカレンはルイの手首をつかみ、一緒に駅から出ようとする。とっさにその手をふり払った学。やはり人を死なせたくないという強い思いが彼を動かすのだ。

今週のメンヘラ社長(究極の社員操縦術)

冥界と現世を結ぶエターニティー号。
どんな時刻表にもダイヤグラムにも載っていない、
特別列車。 あの列車を止める術はありません。

 ーバルジ「や、しかし学とルイが・・・」

自分たちの意志で行動したのです。運命に任せなさい。

 ーバルジ「そんなことはできません!」

運命の糸をたどるのです。言えるのは、それだけ。

 ーバルジ(だめだ、こりゃ)

カオルのひとこと
 はじめて、総司令が総司令らしき仕事をする場面が出てきました。しかし仮にも自社の社員の命がかかっている緊急事態にこの答えでは…。さすがに温厚なバルジ隊長もキレるレベル。総司令のマネジメントとは「なりゆき任せ」のようです。

評点

★★★ 松本零士らしい話であるが、やはりアニメの線が硬い。(小林)
★★★ 死と生のはざまを描く独特の世界観が明確になってきた。(飛田)

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