銀河鉄道物語(2003)各話レビュー
■第3話「運命の動輪」(特急620号ハイジャック事件)
■あらすじ
晴れてSDFに入隊した学は父親と同じシリウス小隊に配属されるが、同僚のブルースは学を父親とSPG隊員だった兄を鼻にかけた軽薄者と辛く当たる。そんな折、特急620号がハイジャックされ、小隊が出動するが、ハイジャック犯を確保した学にブルースの鉄拳が飛ぶ。
Aパート: シリウス小隊配属、特急620号ハイジャック事件
Bパート: 事件解決、撃てないFW−308
■コメント
序章が終わり、いよいよ本格的に物語が始動する第3話、レギュラーであるシリウス小隊の面々が登場し、実質的にはこれが第1話と言える話である。前話に登場したルイと共にシリウス小隊に配属された学だが、ブルースとの軋轢など彼の前途は多事多難のようである。その上、父と兄から銀河鉄道の旧式銃FW−308を受け継いだ彼にはあるこだわりがあり、それが彼を組織やシリウス小隊に馴染みにくいものにしていた。
この物語でスタッフはこれまでの松本零士のキャラとは異なる人格を主人公に与えている。SDFへの入隊は兄より2年遅く、出立の際も兄のような栄転ではないのでタビト住民の歓送はなく、訓練ではブルースにイジめられ、命令への反抗や口答えは人一倍多いなど、有紀学は古代進やハーロックとは異なるキャラとして描かれている。
学は「ここは憧れだけでやっていける職場じゃない!」とブルースに一喝されても、「人を救うために銃は必要ない」という信念のもと、ハイジャック犯には素手で突撃し、シミュレーションでは撃たれ、ハイジャックでは負傷するなどいつも傷だらけである。ブルース曰く「憧れだけ」のこの行動が若さゆえの軽躁さなのか、本当の彼の信念なのかが明らかになるのは少し後の話である。
FW−308が使い物にならないことを知ったブルースは彼に現在の制式銃を手渡す。命がけのSDF任務で撃てない銃は生死に関わる。酷薄ではあるが陰険ではない。松本零士の世界のキャラはどれも譲れない信念と男の生きざまを背負って生きている。が、最初から剣呑なこの二人が和解するのは作品でもかなり後の話である。
(レビュー:小林昭人)
■今週の被害車両
■銀河鉄道620号・・・ハイジャック犯により窓ガラス割れる
■作品キャラ・用語紹介
空間鉄道警備隊(SDF)
この作品の主役である銀河鉄道の擁する準軍事組織、鉄道の保安を目的に戦闘列車や戦闘機で武装しており、その有様はほとんど軍隊であるが、遅延列車の乗客をホテルに送迎など非軍事的任務に就くこともある。主役であるシリウス小隊のほか、スピカ、ベガなど無数の小隊が存在する。SDFの戦闘列車は元になった銀河鉄道999の列車のような旧国鉄ではなく、ユニオン・パシフィック鉄道時代のアメリカ列車を元にデザインされている。その任務から殉職率は高そうであるが、実は案外少なく、シリウス小隊では最終回のアルフォート星団帝国との戦闘まで殉職した隊員はいない。なお、銀河鉄道のあるデスティニー星に死刑はないため、犯罪者は逮捕がてらSDF隊員に射殺される例が多く、これが事実
上の死刑執行になっている。
カオルmemo
3話でようやく学はSDFシリウス小隊に配属される。バルジ隊長は亡き父・渉の部下、同期入隊のルイとは旅の途上で知り合い、気のいいデヴィッド、優しい医療用アンドロイドのユキと隊員の面々とはよいチームになれそうな予感があるが、学の訓練を任されたブルースだけは別である。父や兄の活躍と犠牲的な死に様に「憧れて」入隊してきた軽々しいヤツと思っているようである。
訓練で成果が出せない中、ハイジャック事件の発生でシリウス小隊に出場命令が出る。ビッグワンの出場シーンはこの後毎回登場するが、壮大な音楽と相まって気持ちが高まる名場面である。別れた妻を連れてこい、というハイジャック犯の要求に応えるふりをして列車に突入するという作戦、隊長の説明どおりに展開されていくところにプロの手練れを感じるが、銃口を突きつけられて怯える母親と赤ん坊の声にいたたまれなくなり、命令より先に突入してしまうのが学である。父の死、そして兄の死を目の当たりにし、人を死なせたくないという思いが人一倍強いのだろう。しかしブルースの見るところは違っている。「人を助ける仕事に銃は必要ない」という学、「いつか必要になる時がくる、生きるために」と考えるブルース。くぐり抜けてきた救難現場の厳しさを伺わせる一言である。この二人のぶつかり合いが、今後の見所の一つになっていくだろう。
■今週のメンヘラ社長
・・・今週はお休みです・・・
■評点
★★★ ブルースの存在感は強烈。(小林)
★★★ SDFとしては軽微な事件だが、ブルースとの軋轢で話が引き締まる(飛田)
http://www.muddy-walkers.com/ATZ/GR/03.html銀河鉄道物語|第3話レビュー
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