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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第44話「安芸チーム捕まる」

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司令、この場はひとまず他の惑星に逃れて、
同志を結集して再起を!

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第37恒星系第10惑星
 37恒星系の外れにある小惑星で準惑星クラスの大きさの星。ハームがラガーチームを罠にかけるのに用いた。

あらすじ

 第3惑星を離れ、戦艦ラガーガードはガルベストン本星の探索に向かう。一方、探査基地ではテレスが解任され、ローチャーが新司令官に任命されていた。第10惑星を探査した安芸たちはそこで隊長ハームの罠に嵌められる。

見どころ

 タイトルは「安芸チーム捕まる」だが、前半は司令官テレスの再度の解任劇、第3惑星を放棄したテレスは各探査隊に探査の徹底を命令する。本星の崩壊は先月より15%進んでおり(以前は先年から18%であった)、加速度的に崩壊するガルベストン本星のタイムリミットは迫っている。新たな可住惑星といっても、第3惑星ほどの惑星が再び発見される可能性は低く、テレスはこの期に及んで戦争を止めない本星の頑迷さに苛立っている。一方、テレスの態度に業を煮やした本星の司令部はハーム艦隊を37恒星系に派遣する。そんな折、探査基地にジゴローネの艦が到着する。

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「司令、この場はひとまず他の惑星に逃れて、同志を結集して再起を!」

 今週の言葉はサーク副官、皇帝の使者に面会に向かうテレスにサークは脱出と反政府勢力の糾合を進言する。面会したジゴローネはテレスの解任とローチャーの新司令官就任をテレスに伝える。「テレス司令を失ってしまったら、もう地球との間に話しあう糸口は断ち切れてしまうのですよ!」、自分は決定を伝えに来ただけというジゴローネにサークは抗議する。「これで命令系統の混乱はなくなった」、新司令官に就任したローチャーはズッカ艦隊の出撃を命じる。すでに侵入したハーム艦隊にラガーチームが接近していたのだ。

 テレスに叛乱を勧めるサークが興味深い。本来この女性は王宮の警護隊長で、皇帝コルセールとは個人的にも近しい仲のはずである。テレス自身もまた、ガルベストンでは皇帝にごく近い華族、どうも特権階級らしい描写があるが、こういう保守中の保守のような人々が叛乱を企図するあたりに追い詰められたガルベストン政治体制の異常さを感じる。大戦末期の日本でも宮廷を中心とした和平提案(近衛文麿、重光葵、木戸幸一など)が囁かれたが、多分に意図してやっていることとはいえ、末期ガルベストンの描かれようは限りなく大戦末期の大日本帝国に近いものがある。サークの言葉で、すでに反政府勢力がガルベストンに存在し、テレスが彼らのヒーローであることが明らかになる。しかし、皇帝(=天皇)に銃を向けることもまた、彼にはできないことだった。

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「サーク、言葉を慎め。私は最後までガルベストン人としての誇りを持って生きていくつもりだ。たとえ何が起ころうと。」

 「もう、ガルベストンを救える道はないのでしょうか」、サークの活躍が際立っているので(加賀ハルカは完全にヒロイン外)、ついついテレスの存在が霞んでしまいがちだが、優秀なこの美人副官をテレスが冷静に観察していたことには注目したい。テレスはサークの武力蜂起の真意を見抜いており、その行き過ぎを諌める。

「戦いは力と力をぶつけ合うことばかりではない。この苦しみに耐えぬくことも、、」

 この一言は重要である。なぜならば、この言葉でテレスが彼女を止めなければ、サークはさっそく反政府勢力と連絡を取って諸勢力を糾合し、ガルベストンはそのまま内戦に突入した可能性が高いからだ。数多いテレスの名言の中でも、これは最もクリティカルな言葉の一つである。また、サーク(ヒロイン化)にとっても上官に叛意を勧めることは処刑の危険もある、非常に大胆な行為である(ハルカは美人だが、サークとは格が違うこともある)。

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 第10惑星に到着した安芸たちは遭難したガルベストン艦の艦内に侵入する。しかしそれは遭難を偽装したハーム艦隊の罠であった。「まんまと罠に引っ掛かったな」、兵士に死んだふりまでさせて安芸たちを艦橋に誘いだしたハームは哄笑して抹殺を命じる。光線銃の飛び交う中、ハーム艦の艦内を逃げ廻る安芸たちはガルベストン戦闘機を乗っ取り、辛うじてハーム艦から脱出するのだった。そしてバトルマシンを撃破されたハームはズッカと共に第3惑星への進路を取る。テレスが命令に背いてまでして守った第3惑星は再び戦火の危機にさらされようとしていた。

キャラクター紹介

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ハーム

 ガルベストン本星艦隊の将校(タカ)で、テレスではなく総司令カポネーロの部下。第3惑星を奪回するため、ごく少数の艦隊を率いて第10惑星でラガーチームに罠を仕掛ける。艦隊の規模といい、応援に来たズッカの態度といい、正規の艦隊隊長ではなく、ハドラー、ベルトランらと同じ下級クラスの隊長と思われる。ダイラガーに敗れた後、ズッカ艦隊に合流したはずだがその後は描かれておらず、おそらく戦死したものと思われる。ハドラーに続き、戦死場面のない戦死隊長の第2号だが、話も佳境に入ってきている折、ハームぐらいの隊長の戦死はもはや画面でも取り上げられないのである。

今週のバトルアタッカー(1分40秒)

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武器:角ビーム、胸ビーム、巨大ばさみ

 ハーム隊のバトルアタッカー「ガガル558」はノーラン艦隊のアタッカー2号と兄弟機である。時間的に見てノーランの機体をハームに引き渡す余裕はなかったため、ほぼ同じ機体を2機建造して1機をハームに引き渡したものと思われる。やや中途半端な機体で、両腕のハサミは初期のバトルマシンに、ビーム砲の装備方法はゲド以降のバトルマシン、角ビームはジャクソン2号、ルックスはバトルアタッカーといった感じだが、バトルマシンと同じく手足部の防御もそれなりになされている。また、腕の超硬スチールのハサミはダイラガーソードを防ぎ切る硬度を持つ。が、やはり中途半端な観は否めず、装甲されていない頭頂部にラガーソードを突き刺されて爆散し、ラガーソードの刀の錆となった。

皇帝御召艦

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 新型ガルベストン戦艦は前型以上に細かい相違のある艦が多く、旗艦なども指揮官によって仕様が違っているのだが、通常は超光速航行でも通常航行で、戦艦級の艦にワームホール型のワープは用いていないはずである(ルチアーノ赴任の際に大艦隊のワープアウトとおぼしき絵があるが、特殊効果がなく、これはセンサー(作画)の探知ミスと思われる)。が、再度テレスを訪問したジゴローネの艦はガルベストン戦艦で、この艦にはそういう能力はなかったはずなので混乱を招く(そんな能力が標準であったら、地球側にはこの能力はないので、戦いの様相はまるで違うものになっただろう)。で、ここで気になるのは、このワープ装置は戦艦に搭載されているのか、それとも本星と探査基地の双方にワームホール発生器があるのかということである。それならば戦艦に装置がなくてもワープは可能である。しかし、その可能性はごく低いと思われる。

 作中で必ずワープ船で現れるのはジゴローネだが、彼は皇帝の使者という特別な立場で、また、司令官級の人事を扱う都合上、その来訪はいつも唐突である。ジゴローネの来訪が基地に予告されていた気配は今までにはなく、もし基地にワープ装置があるのならば、ジャンプの前に訪問がテレスなどにも伝えられていたはずである。おそらくこの艦はワープ装置を積んだガルベストン戦艦の試作艦であると思われるが、連絡艇で事足りるものを、こういう特別な装備を必要とする人物といえば、作品ではジゴローネのほかはガルベストン皇帝その人である。

 51話で戦い敗れたカポネーロらがバトルアタッカーで本星脱出を図る場面があるが、ダイラガーに追われて地下都市を逃げ廻るばかりで宇宙に逃げる気配がなく、どこを目指していたのか不明であった。以降は筆者の想像であるが、アタッカーの居住性と航続力ではそう遠くに逃げられるとも思えなかったが、こういう艦があるのなら話は別である。一挙に数万光年をジャンプすれば地球艦隊の追撃は振り切ることができ、そういうことだとすると、カポネーロが皇帝に勧めていた脱出計画は十分に現実性のあるもので、おそらく彼らは都市の一角に隠されていたこの艦を目指していたのだろう。

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