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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第43話「テレスとアシモフ」

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あれは間違いなく、人間だ!

あらすじ

 ついに第3惑星で会合したテレスとアシモフ、両軍から離れた岬の一角で、両者は第3惑星の処遇と戦争の行く末について話し合う。

見どころ

 伊勢とノーランの仲介で矛を収めた両艦隊、地球側は司令官アシモフを、ガルベストン側はテレスを代表に立て、発見した第3惑星の処遇について話し合いを持つことが決まる。今回は重要な会談のため、少し長めに引用し、丁寧に交渉の過程を追うことにする。

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アシモフ 「ついに敵はテレス司令が直々に乗り出してくるというのか。」
伊勢 「ガルベストン本星の状況は、かなり深刻なものになっているのではと思われます。」
アシモフ 「ウム、私としても、彼らの星の状況には同情せざるを得ない。伊勢、私は彼らが望むなら、この星を移住の地として認めてやっても良いと思っている。ただし、彼らが銀河制覇の野望を捨てるという条件を呑みさえすればの話だが。」

 ガルベストン側はテレスとローチャーが事前準備の話し合いをしている。ローチャー対テレスの第7ラウンドといった趣きだが、状況が状況なので、これはカウントせずスルー。

テレス 「ローチャー、実は例の可住惑星について、地球の司令官と私が話し合いを持つことになった。」
ローチャー 「何ですって! あの星から我々を追いだそうとしているのは連中の方ではないですか、何を今さら話し合いなど!」
テレス 「何としても我々は、あの可住惑星を確保しなければならないのだ。
ローチャー 「でしたら、どんな手段を用いても手に入れるべきです。だいいち相手は何回、いや何十回も戦いを交えてきた連中ですぞ! 私は承服いたしかねます!」

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 興味深いのは前回仲裁に入ったノーランの報告がローチャーには届けられていないことである。ノーランは5人組ではないので、元々テレスの部下でローチャーとは指揮系統が違うのか、あるいはローチャーの性格を慮って直接報告した可能性がある。探査基地の情報管制は以前の前線基地(ほぼ一元化されていた)と違って複雑であり、ローチャーが先に報告を受ける場合や、本星とのチャネルもあるようで錯綜している。細かく描かれてはいないが、実はかなり雑多な組織という印象がある。

テレス 「ローチャー、私は本星から可住惑星探査の全権を任された司令官だ。私のやり方でこの問題を解決する。」
ローチャー 「そこまで固くご決心なされているのでしたら、お引き留めはいたしますまい。」
テレス 「だが、どのようなことがあっても、会談を無事に済ませるために、決して地球側には手を出すな。」
ローチャー 「分かりました、、」

 こうしてテレスはサークと共に第3惑星に旅立つが、ローチャーを残したことも興味深い。地球右翼のアシモフ(タカ)と同じく、ガルベストン右翼の彼は連れて行っても引っ掻き回されるのがオチだが、バラタリア(極右)のように反乱の懸念はなかったのだろうか?

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ローチャー 「バカな、、話し合いなどと手ぬるい手段で、可住惑星を手に入れることができると、まだ思っているのか、、」

「サーク、あれが我々の希望の星だ」、第3惑星に近づいたテレスは第3惑星の壮麗さに感嘆するサークに、かつてガルベストン本星も同じように美しい星だったと慨嘆する。このレビューの見解ではテレスは地位の割に若い人物(おそらく20代後半〜30代)だが、ガルベストン本星の破壊ぶりというのは、とてもそんじょそこらの数年でああなったようなものではなく、彼が子供の頃にはすでに荒廃していた可能性が高い。

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 つまり、この発言は過去の記録映像などからテレスが得た内容と見るべきである。サークの年齢は不明だが、作中での落ち着きぶりや、以前は参謀チャーチが担当していた参謀任務も臆せずこなす余裕からしておそらくテレスと同年か、やや年上の女性と思われる。テレス到着を見たノーランは伊勢に会談場所と時間を指定する。

ノーラン 「テレス司令が到着した。会談の場所をお伝えする。現在地から北東50キロにある岬だ。時間は1時間。」
伊勢 「了解した。ところで、お互いの安全と誤解を招かないために、会談に際しての条件を取り決めたい。」

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ノーラン 「よろしい、条件を言ってくれ。」
伊勢 「一つ、会談に立ち会う者は両司令官の他2名。つまり、貴方と私だ。両艦隊は会談の場所から等距離に20キロ交代して待機。あなた方に会談の時間と場所の決定を任せた代わりに、事前に我々に場所の探査をすることを認めてもらいたい。」
ノーラン 「、、了解した。では今から艦隊を移動させる。」

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 こうして両軍は現在地から移動を始めるが、その様子はジャクソンにより探査基地のローチャーにも報告されていた。ローチャーはテレスの動向を本星のカポネーロに報告する。地球側は会談予定地の調査を始め、異常がないことを確認した安芸は発進する伊勢とアシモフの連絡艇を見送る。そしてテレスとアシモフの両将は岬で会談する。先に到着していたテレスは後から連絡艇でやってきたアシモフに挨拶する。

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テレス 「ガルベストン探査司令、テレスです。」
アシモフ 「三惑星連合艦隊司令、アシモフです。」
アシモフ 「早速だがテレス司令、率直に申し上げる。我々もすでにあなた方ガルベストン本星の事情については良く理解しているつもりです。お望みとあらば、この星をあなた方の新天地として認めてもいい。」
テレス 「んんっ(驚く)!」
アシモフ 「ただし、条件がある。」
テレス 「条件?」

 場面変わって周辺を偵察中のカイラガーとリックラガーは渓谷で立ち上る煙を目撃する。第3惑星はどうも地球とは違った進化をした星のようで、恐竜の生き残りもいるが、彼らが発見したのは原始人の集落だった(地球では恐竜絶滅が哺乳類の進化を促し、人類の誕生に繋がったことになっている。つまり、人類と恐竜は併存しえない)。

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キーツ 「ウォルター、今のを見たか!」
ウォルター 「あれは間違いなく、人間だ!」

 今週の言葉はウォルター・ジャック。驚愕する彼らをよそに、アシモフの条件を受けたテレスは会談を一時中断して本星のカポネーロにお伺いを立てる。

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カポ 「なにいっ? 我々の銀河制覇の夢を捨てろだと?」
テレス 「はい、、」
カポ 「テレス! お前それでもガルベストンの軍人か! お前は地球の連中の腹の中が読めんのか。いいか! 奴らが何のためにわざわざここまで艦隊を送り込んできたのか、良く考えてみろ!」
テレス 「しかし、元はといえば彼らに戦いを、、」
カポ 「目を覚ませテレス! 奴らとて、銀河制覇を目指していることは連中の行動を見れば一目瞭然ではないか。だが、、まあ、良い、、それほど言うならその条件呑んでも良いと答えとけ。」

 背に腹は代えられないと地球側の条件を呑んだカポネーロだが、その様子はいかにも不審げである。交渉を継続すべきか決裂させるべきかテレスも迷う所である。本星政府の信頼性が余りにも弱い。軍司令官同士の話し合いという形式からして、これは休戦交渉である。が、アシモフの提案は軍司令官の裁量を超えた内容である。この場合、テレスの裁量でできる判断としては交渉を決裂させて戦闘するか、惑星を守るため第3惑星を地球側に明け渡すしか方法はない。そしてテレスの交渉中、連絡艇では伊勢がウォルターの報告を受けていた。

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伊勢 「なにっ! 内陸部に人間が?」
ウォルター 「まるで石器時代の人間のような生活をしていますが、おそらくこの星の原住民に間違いありません!」
伊勢 「そうか、、やはりな、、」

 アシモフによる地球側の提示した条件が手加減なし、非常に厳しいことには筆者も驚いたが(現代としても厳しい内容である。本当にこれは5〜10歳向けの子供番組だろうか)、冒頭に伊勢がアシモフ艦を訪れていたことがヒントになる。アシモフが順当と思われる第3惑星を非武装地帯にするという提案ではなく、ガルベストンの国体変更(事実上の無条件降伏の勧告と見て良い)を条件とした背景には、おそらく地球政府の意図がある。主戦派の軽挙、30話の地球爆撃と一連の戦闘が今になってガルベストンに祟っている。そして人間発見の報告を受け、アシモフはさらに条件を上乗せする。

テレス 「お待たせしました。」
アシモフ 「いかがでしたかな、テレス司令?」
テレス 「本星政府は、今のところあなた方の申し入れに対して、いささかの懸念を抱いておりますが、、今しばらくのご猶予を頂きたい、、」
アシモフ 「だが、テレス司令、あなたの努力に水を差すようで申し訳ないが、先ほど申し入れた条件より、さらに確かな保証がない限り、認めることができなくなった。」
テレス 「ううっ、、」
アシモフ 「たった今、我々の探査隊から報告があったのだが、この星にはすでに原住民がいることはご存知ですか?」

 かなり詳細に調べていたガーロ探査隊がこの情報を掴んでいなかったことは驚きだが、いわゆる原始人というのは地球でも少数で、しかもこの星は恐竜が生き延びているので、時には食べられなどしており、発見できるほどの密度では存在していなかった可能性もある。国家などは作っておらず、どうも火を使う程度の水準のようである。

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テレス 「この星に人間が!」
アシモフ 「従って、もはや我々だけでこの星を云々することはできないのです。」
テレス 「しかしこの星の住人と我々がうまくやって行くことができるなら、認めていただけますか?」
アシモフ 「もちろんです。ただし、そのためには、我々は新たな条件を要求する。すべてのガルベストン軍に対して武装解除を要求する! しかも、我々の監視下でそれを行なってもらいたい!」
テレス 「ううっ!」

 「分かりました、今しばらくお待ちを」、事実上の無条件降伏の要求に加え、連合軍の駐留による武装解除をも含むこととなり、もはや交渉成立は絶望的だが、この状況ではアシモフの条件追加は当然と言える。テクノロジーに勝るガルベストン人がそのまま惑星に乗り込んでは、元々この星に住んでいた原住民たちがどういう運命を辿るかは火を見るより明らかだからだ。第3惑星人はおそらく虐殺され、種の存続も絶たれて滅亡してしまうだろう。そしてテレスに追加条件を伝えられた本星の反応は彼の予想通りだった。

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カポ 「なにいっ! 奴らの監視下で武装解除をしろだと? バカを言うな! テレス! お前は原住民のために、我々の誇りを捨てろというのか!」
テレス 「しかし総司令! これは我々ガルベストン国民の未来が掛かっている重要な問題です! どうか、全国民のためにもう一度お考えを!」
カポ 「ならんっ! お前はコルセール帝があえてそのような屈辱的な条件を、喜んでお呑みになると思っておるのか!」
テレス 「しかし、今一度!」
カポ 「ならんといったらならん! 直ちに連中にその星から立ち退くように伝えよ! 従わなければ、お前の命に代えても追い払え! それがお前の任務だ! お前のガルベストン本星への忠誠だ! テレス! 返事をせんか! これは命令だ! 何を考えておるのだ! 返事をしろ! テレス! 貴様、、」

 「軍人としての誇り」、「皇帝の威厳」、取り乱したカポネーロが語った内容はどれもガルベストン国民の将来以上に価値あるものとは思えないものだった。通信を途中で切ったテレスは憔悴しきった様子で再びアシモフらの前に姿を表す。

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アシモフ 「いかがでした?」
テレス 「残念です。本星政府はあなた方と戦いを交えても、この星を手に入れろと申しております。」
伊勢 「、、、、」
テレス 「しかしご安心くださいアシモフ司令、私はガルベストン本星の意思には逆らうことにはなりますが、この星から手を引きます。」
アシモフ 「テレス司令、、」
テレス 「やはりこの豊かな可住惑星は、この星の住民のものです。誰のものでもありません。失礼いたします。」

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 先に述べた通り、今回はトランスクリプトをかなり長く引用したが、交渉開始の段取りから会見の内容、決裂までを丁寧に扱った作風は5〜10歳の視聴者に対して、やるべきことをした仕事として評価したい。筆者はこの話を見て終戦間際の日本で当時の東郷茂徳外相が試みた対ソ和平交渉を思い出した。東郷の意を受けた元首相の広田弘毅とソ連大使マリクの間で行われた秘密交渉は天皇を囲む軍国主義者らに阻まれ、やはり厳しいものであった。この話ではテレスがさしずめ広田、アシモフがマリクと言った感じだろうか。

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「いったい、本星政府は本気でガルベストン国民の将来を考えているのか!」

 テレスらが引き揚げた後、本星のカポネーロに使嗾されたジャクソン艦隊が第3惑星を襲撃したという報告を受けたテレスは地球艦隊の反撃で艦隊は全滅し、ジャクソンは戦死したものの、惑星が無事であったことに安堵する。惑星さえ無事なら、滅亡に瀕したガルベストン国民の行き先はまだあるからだ。だが、その最大の障害は他でもない本星の政府であり、これを倒さない限り、ガルベストンには滅亡の未来しかない。サークは本星との関係で危うい立場になったテレスを守ることを心中に期し、テレスは前々から皇帝と本星政府に感じていた疑惑が、ついに確信に変わる。

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「テレス司令は立派な男だった。だが、ここまで来た以上、我々は一刻も早くガルベストン政府を倒さなければならん。ガルベストンの国民のためにもな。」

 ジャクソン艦隊を殲滅し、惑星に再び降り立ったアシモフは伊勢に戦いの最終目標を告げる。テレスとの交渉は、前々からアシモフらが不審を抱いていたガルベストンの本星政府への疑惑を決定的にするものだった。彼らが解放すべき銀河の民に新たにガルベストンの国民が加わったことで、地球側の戦略目標はガルベストン本星政府の打倒とその後のガルベストン国民の救出へと大きく変更されることになる。

キャラクター紹介

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コルセール

 ガルベストンの皇帝で元首、統治権の総攬者、登場自体はかなり早く、すでに第1話に旗艦の艦橋に飾られている御真影として登場していた。本人の初登場は24話である。御真影との違いは肖像画に比べかなり老けていることで、御真影のコルセールは40〜50歳前後の壮年期の肖像(髪が黒髪)だが、王宮にいる本人は灰髪で60〜70歳のようである。カポネーロらに比べるとテレスらへの態度は寛容だが、実はタカ派で地球の銀河進出阻止と地球軍の撃滅を最も声高に叫んでいた者の一人である。皇帝として数多いミスを犯したが、テレスやテスとはどうも近い関係らしく、カポネーロに処刑されそうになったテレスを軟禁と称して王宮に匿ったり(47話)、幹部会では庇う(24話)などもしており、地球との共存を目指すテレスにとっては愛憎相半ばする人物である。ある時期まではテレスも皇帝は自分の話に耳を傾けると思っていた節もある。本土決戦ではカポネーロの申し出による王宮からの退去を拒み、乗り込んできたテレスと対峙するが、護衛官のドランに射殺されて死亡する。彼の死によりテレスはガルベストンの主権を引き継ぎ、地球との講和交渉に臨んだ。


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アル・カポネーロ

 ガルベストン軍総司令、テレスらの上官、地球軍で言えば出羽と同じ肩書きの軍の高官だが、ガルベストンには銀河警備軍長官に相当する階位がなく、テスなどと一緒に閣議に出席していることから軍事大臣であるものと思われる。明確な場面はないが、ガルベストンの場合は皇帝臨席の御前会議で重要事項が決定されるケースが多いため、統帥権のような軍の独立が担保されている可能性がある。テスやゴメスなど文官も出席する御前会議は最高幹部会議だが、軍人ばかりが出席している御前会議(大本営)の場面も少なくない。カポネーロは軍人であり、皇帝コルセールの大本営を主宰し、そのリーダーの地位に収まっている。ある意味、対地球作戦の中心人物だが、ガルベストン本星での決戦の際には皇帝を擁して本星脱出を図り、皇帝に拒否されるとゴメスらと共にバトルアタッカーに乗り脱出を目論んだ。しかし、ダイラガーに捕捉され、ゴメス、ベンチュラと共にラガーソードの露と消えた。その飽くなき野望については、彼を倒した安芸マナブに批判されている。


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甲斐シノブ(CV山本竜馬)

 クウラガーチーム、甲斐マシン(胸)の操縦士で同チームでは最も大柄なクルー、やや肥満体であり、航空小隊であるクウラガーチームのイメージからかけ離れた容貌だが、いなくても困らないが、いると便利なメンバーとしてカラテヤ、カッツよりは存在感はある。同チーム最年少の陸奥と組んで行動することが多く、身長の低い彼の肩車で登場することもしばしばである。食事中のシーンで登場することが多いことも特徴である。本レビューでは甲斐の紹介でラガーメンバーは全員の紹介を済ませたことになる。

今週のバトルアタッカー(2分25秒、交戦せず)

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武器:鎖付き斧(右)、ソード(左)、ビーム砲

 ジャクソン隊のバトルアタッカー第3号「デュームa」は会談に出席したテレスが護衛機をそのままジャクソンに与えた機体だが、36話に登場したローチャー1号に酷似しており、同型機ないし兄弟機と思われる。性能的にもほぼ同じだが、エネルギー球、腰のビーム砲が廃止され、その分、動力炉の出力を上げて格闘戦能力を強化する改造がなされている。ジャクソン2号で有用性が実証された鎖鎌も装備されたが、基本的なポテンシャルの低さはいかんともしがたく、運動性に勝るダイラガーに崖から海底に突き落とされ、身動きできなくなっているところを斬り下げられ、ラガーソードの露と消えた。


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武器:不明

 ノーラン隊のバトルアタッカー2号はやはりテレスが護衛機をそのまま引き渡した機体だが、地球のダイラガー量産計画と同じバトルアタッカー量産計画の一部と思われる。というのは、全くの同型機が探査基地とは別部隊のハーム艦隊に配備されているためで、同様の兄弟機又は量産機の例はラフィット隊に配備されたラフィット4号、5号の例があり、ノーラン2号とハーム1号も同様の関係にあると思われる。同型機のハーム1号が戦没したことにより、ノーラン艦隊の解散と同時にスクラップにされたものと思われる。

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