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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第37話「消えたクウ・ラガー」

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科学と人間が握手できるのは
この程度なんだということが分かったからです。

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惑星J
 比較的小さな星だが緑豊かで自然環境は良好な惑星。惑星Kを逃れた人々が集落を作って暮らしている。探査隊が次々と行方不明になったことから、ガルベストンでは魔の星と呼ばれている。

あらすじ

 惑星Jを探査中のクウラガーチームは集落を発見後、突然謎の牽引ビームに引きこまれて沼に引きずり込まれる。地表の集落とは対照的な超近代的な湖底都市では謎の人々が捕獲した彼らを調べようとしていた。

見どころ

「見給え、ガルベストン本星から送られてきた緊急資料だ」、前回の先史惑星の戦いでローチャー封じに成功したテレス司令、先の敗北で従順になった彼らを呼び集めてスライド講義を始めます。講師ソクラット・テレス、テーマは「ガルベストンの危機と現状」。

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テレス  「バン・アレン帯の破壊による紫外線の影響がますます激しくなり、ついに地表に変化が現れてきた。もう一刻の猶予はなくなった。早く可住惑星を発見しなければならない。」

 いくら何でもこれを見せられれば改心するだろうとテレスは荒廃した本星のスライドを見せます。大人しげな彼らの様子を見て、彼は地球艦隊に話題を振ります。

テレス 「しかし、このまま地球艦隊を放置しておいたら、我々の活動に大きな支障を来すことになる。」
ローチャー 「テレス司令、地球艦隊は我々にお任せ下さい!」

「地球」の言葉を聞き、すかさず挙手したローチャーは5人組の紅一点、エンマに振り向きます。

ローチャー 「エンマ隊長、直ちに出撃しろ!」
エンマ 「はい!」

 顔を歪めるテレスを置いて、エンマはさっさと出撃していきます。第2ラウンドはローチャーの勝ち。「神よ、可住惑星の発見と地球艦隊の阻止という、この2つの戦いに勝たせてくれ、、」、心配顔のサークを横に、司令は頭を抱えてエンマ艦隊の出撃を見送ります。

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 所変わって惑星Jを偵察飛行中のクウラガーチーム、後方の戦艦ラガーガードでは鏡台の前に座るキリガッスが「お化粧の乗りが悪いの」と不吉な気配を感じています。「安芸チーフの身に何か、、」、ミラ星人の予感は的中率100%なのですが、精度が悪いのが玉にキズです。そうこうしているうちに集落を発見したクウラガーは湖底から出現した謎のビームに湖に引きずり込まれてしまいます。あの歴戦のラガーマシンをあっという間に捕らえてしまうのですから並大抵の科学力ではありません。

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「地球艦隊打倒のポイントはダイラガー、彼らに合体のチャンスを与えないこと」、惑星Jに向かっていたエンマ艦隊は行方不明になったクウラガーを捜索するラガーマシン2機を見つける。過去に何度も探査隊が行方不明になった惑星J、ガルベストンでは「魔の星」と呼ぶ惑星に住民がいたこと、そしてクウラガーが住民たちに捕らえられていることをエンマはサークに報告する。「くれぐれも慎重にやってもらいたい」、エンマと交信したサークは確実を期すように言い、エンマはバトルアタッカーを出撃させる。その頃、ラガーマシンごと捕らえられた安芸は惑星の住民に厳しい尋問を受けていた。

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 「申し訳ありませんでした、しかし、これがこの星のやり方なのです」、尋問後、安芸を解放した星の長老ダールは彼らに自分たちが惑星Kの生き残りであることを話す。「我々は科学を最小限度のものに限って使うことにしたんです」、ダールは地球・ガルベストン双方を凌ぐほどの科学力を持ちながら、それを捨てて原始生活に回帰した惑星Kの住民のことを彼らに話す。どうしてという安芸にダールは答える。

「科学と人間が握手できるのはこの程度なんだということが分かったからです。」

 今週の言葉は惑星Jの長老ダール、過去にもガルベストンの探査隊が星を訪れたが、その都度抹殺してきたとダールは言い、湖底に沈む大量のガルベストン艦や戦闘機の残骸を彼らに見せる。「これが我々の科学の使い方です」、ダールは惑星Kは過去の地下核実験で大陸が沈降を始めてしまい、住むことができなくなって脱出したことを話す。「星に住めなくなった経験があったからです」、良く切り替えができましたねという安芸に、ダールはそう言い、高度な科学力も使い方を誤れば自然を破壊し、破壊された自然は二度と元には戻らないと彼らを諭す。

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「我々はここに移ってから二度と同じ間違いをしないことを誓ったんです」、ダールはそう言い、もうこの星には武器もないのだと彼らに話す。自分の身を守るための最小限度でしか彼らは科学を使わないのだ。そこをエンマのバトルアタッカーが襲う。

「許さない! 自然を破壊することは許さない!」

 ダールの言葉を胸に安芸はアタッカーと戦い、惑星Jの自然を守ることに配慮しつつ、苦戦の末これを倒す。その戦いざまにダールは信頼できる視線を向けていた。「一刻も早く、科学が自然を破壊しない銀河にして欲しい」、伊勢から修復された惑星Kのオーナメントを受け取ったダールは今後の戦いで地球艦隊を支援することを約束する。

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「我々の仲間はこの星だけではありません。他の星にも分散して移住しています。ガルベストンの本星については知りませんが、これから先、君たちの旅に必要な物資の補給については協力しよう。仲間に連絡をしておきます。君たち、地球からの友人のことを。」

 原始採集生活を営みながら、同時に高度な科学技術も維持している惑星Kの元住人、武器など捨てたという彼らだが、自然との共存と科学力の並立は地球にもガルベストンにもない文明の一つのスタイルである。及ばないものを感じつつ、安芸たちは惑星Jを離れるが、実はもう一つ重要なことをダールは彼らに教えている。ダイラガーと地球艦隊の戦いの目的は銀河の民をガルベストンの脅威から解放することだが、その戦いで銀河の星々が破壊され、自然が失われてしまっては、その戦いには何の意味もないものだということを。

 何気にエンマと交信するサークが気になる回。彼女はテレスの副官ですが、これまではテレスが部下に指示をする場合は伝言などせず、直接やっていましたから、これは本当にテレスの指図かいなというのがまず疑問(現に次の回でも負傷したエンマにテレスは直接声を掛けている)、それにエンマ艦隊の出撃の経過からして、彼が打倒ダイラガーのアドバイスをするなど、らしくないしありえない。むしろローチャーの一派というだけで、ふてくされて司令室で知らんぷりをしている司令官を見たサークが気を利かせた感じに見えます。

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 サークも元職が宮殿警備隊とはいえ、男性社会で隊長まで出世した女性ですから、同じキャリア女性としてエンマには気が合うものを感じていたのかも知れません。エンマは次の回で戦死してしまうので、このサークの意図は空振りという感じがしますが、この番組が放送されていた時代はエンマやサークのような女性の社会進出が本格化した時代で、彼女らはそういった女性たちを映す鏡像のような役割も担っています。そういう点、彼女たちの人柄は作品でもおざなりでなく、実際こういう立場にいればこういう感じの女性だろうと、かなりきちんと書かれている感じがします。サークは最終回までテレスに尽くす女性ですが、盲目的な彼の崇拝者ではなく、このように独自の判断で行動することも少なくありません。

キャラクター紹介

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エンマ

 ローチャー5人組の一人で、ガルベストンには珍しい女性の隊長クラスの将校(タカ)、エンマ艦隊を率いており、5人組の中でもジャクソンに次ぐナンバー2である。率先垂範をモットーとしており、女性でありながら危険な探査任務でも先頭に立って行動するガルベストン軍人の鑑のような士官だが、それは男性社会ガルベストンで彼女が自分に課したルールだった。艦隊では先任のローチャーよりも兵士に信頼されており、エンマ艦隊は副官サムスを初めとする彼女の崇拝者の集団である。58番惑星で搭乗機の操縦を誤って負傷し、ラガーガードの捕虜になるが、脱走して伊勢やラガーガードと対決する。男性社会で活躍する有能なキャリア女性といった印象のエンマだが、彼女自身は自分を一ガルベストン兵士と規定しており、その主義に殉じる道を選んだ。ローチャーの部下にしては珍しく、テレスの副官サークとは女性同士でウマが合ったようである。


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ダール

 惑星Jの集落の長で、惑星Kからの移住者。安芸を捕らえて取り調べる。惑星K時代の記憶があることから、移住からの年数は不明だが、移住者の最初の一群の生き残りと思われる。長老的な外見に似合わず高度な科学装置を使いこなし、また、惑星J以外の他の惑星に移住したグループとネットワークを持つ。科学が銀河を破壊しない時代を作るため、地球艦隊の訪問を仲間に知らせ、支援を呼び掛ける。

今週のバトルアタッカー(2分50秒)

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武器:ビーム砲、エネルギー球、ソード

 エンマ隊のバトルアタッカー1号は武闘派のエンマの配下らしく高性能でしかも操縦者の技量も確かな優秀なアタッカーである。惑星Jの自然が足枷になったとはいえ、ビーム戦でも格闘戦でもソード戦でもダイラガーに対して優位を見せつけ、惑星Kの超文明の妨害が無ければ危うくダイラガーを撃破寸前まで追い込んだ。ソードでダイラガーを一刀両断する所をクウラガーを緊縛した牽引ビームに絡め取られ、身動きができなくなった所を斬りつけられてラガーソードの刀の錆となった。が、ほぼガチで2分50秒もの間ダイラガー相手に奮戦したのは歴代バトルマシン・バトルアタッカー最長である。

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バトルアタッカー語録

「ハハハハ! そんなビーム攻撃など、蚊に刺されたほどにも感じぬわ! これでも喰らえ! ええいっ!」
(カイラガーとリックラガーに応戦)

「しまった! クウラガーはどうして脱出できたんだ!」 (合体阻止失敗)

安芸 「この星の自然はダイラガーが守ってやる!」
(ダールの話でテンション高い安芸マナブ)

「小癪な奴め! 喰らえーっ!」
(実は結構強いアタッカー)

安芸 「許さない! 自然を破壊することは許さない!」
(自然を守るため、ビーム攻撃をまともに受けるダイラガー)

「なんて奴だ! ええい! 容赦をするな!」
(ズビビとビーム攻撃を続ける)

「隊長! このままでは我々の方にも飛び火します!」
(ダイラガーが近すぎて悲鳴を上げる兵士A)

「くそおっ、一時攻撃を止めろ!」
(仕方なくビーム攻撃中止)

安芸 「勝った、、反重力ジャンプだ!」
(アタッカーに組み付いてジャンプ)

「うおおっ! うおーっ! 何をする気だ!」
(池沼に放り出される)

安芸 「ここまで来たらもう遠慮はしない!」
(今までは本気じゃなかったと言いたげにアタッカーを殴る)

「うわっ!」
(やられて悲鳴)

安芸 「ダイラガーソード!」
(これで決着か)

「ビーム剣で対抗しろ!」
(どう見ても普通の剣に見えるが、、)

「フフフフ、、ダイラガーは先ほどの攻撃でパワーを失っている。一挙にカタをつけろ!」
(結構いい勝負のアタッカー)

安芸 「おわっ!」
(ソードを弾かれて池に落とされる)

「死ねえっ!」
(とどめを刺そうとするアタッカー隊長、しかし、ビームに絡め取られる)

安芸 「今だ!」
(ジャンプしてラガーソードを振りかざす)

「おっ! おわああああーっ!」
(コクピットに直撃、爆散)

 アタッカー操縦者も慣れてきたせいか、今回は割と会話が成り立っている。戦闘時間それ自体も長かったこともあり、結構いい勝負をしていた感じである。

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