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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第35話「陸奥よ立ち直れ」

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テレス司令、もはやローチャーたちを
これ以上放っておくわけには参りません。
彼らの指揮権はやはり貴方がお持ちになるべきです、
ご決断を。

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惑星Q
 ラガーガードの進路上にあり、ジャクソンが罠を仕掛けた惑星。ほとんどが岩石に覆われており、荒廃した惑星である。浸食ないし風化が進んでおり、艦体を隠せるほどの大きさの洞穴、渓谷が惑星上に無数に存在する。

あらすじ

 アシモフ艦隊と共に地球からの連絡船が到着し、クルーたちに手紙が配られる。ただ一人便りのなかった陸奥は故郷の母親のことを思って不安に囚われる。一方、ガルベストンではジャクソンが惑星Qで戦艦ラガーガードを待ち受け、罠を仕掛けていた。

見どころ

 クロイツ以来久しぶりのキャラクター回、今回の主役は陸奥ヤスオ、ダイラガー右腕のヘリコプターの操縦士で、どうやらチームでは最年少らしい。補給船が到着し、いつも来ている母親からの手紙が来なかったということで落ち込み、出撃できなくなってしまう。実はその前の晩、彼はドライブしていた母親が突然いなくなる夢を見ていたのだ。きっと何かあったに違いない、陸奥が落とした手紙から事情を知った加賀は安芸とキーツに相談する。加賀は陸奥の幼なじみで、少年学校から訓練もずっと一緒に受けていたのだ。「今それができるのは君しかいない」、安芸は加賀に陸奥の立ち直りを助けるように頼む。そして加賀は一人窓辺に佇む陸奥に声を掛ける。

 一方、心理的に欝になっている人はもう一人いた。ガルベストン探査基地のテレス司令。ローチャーの赴任以降、司令室に引きこもり悶々としているテレスにサークは不安げな視線を向ける。テレスが引きこもるのは勝手だが、司令官という職責上、それを奇貨としたローチャーが探査基地で我が物顔で振舞いはじめたのだ。テレスが積極的に動かないことを見たローチャーはテレスがまだ探査艦隊の司令官で攻撃艦隊の司令官の辞令を承諾していないことを理由にジャクソン艦隊に惑星Qの攻撃を命じる。地球艦隊に先行するラガーガード、特に搭載されているダイラガーを撃破すれば地球側の戦闘力は大幅に低下する。先の強行偵察で大破した偵察艇を使い、惑星Qに到着したジャクソンは偵察艇の遭難を偽装して罠を仕掛ける。

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 ダイラガーの登場人物は男性が圧倒的に多く、女性は敵味方合わせても数えるほどしかいないので、どうしてもヒロイズムとか勇気とかがテーマになりがちだが、今回の作劇のテーマは「母性」、そもそも一人っ子の陸奥がラガーマシンで勇敢に戦えるのは故郷の母親が無事でいるからである。テレスの場合は母性云々というには年を取り過ぎているが、ローチャーの到着で再び対地球戦争に巻き込まれ、自分の存在意義を自問して悶々としている彼を見守り、包み込んだのはやはり副官サークの母性的な感情だった。同じことは陸奥を慰める加賀にも言える。しっかり者の美女二人に比べ、地球とガルベストンの男二人組はブツブツと小言を言ったりしているなど、少し情けない。

「陸奥さん、あなたは何を迷っているの? あなたはお母様を愛しているんでしょ? あなたはお母様のいらっしゃる、故郷地球を守ろうとは思わないの?」

「テレス司令、もはやローチャーたちをこれ以上放っておくわけには参りません。
彼らの指揮権は、やはり貴方がお持ちになるべきです、ご決断を。」


 今週の言葉はテレスの副官サーク、加賀の陸奥に対する態度もそうだが、この二人は単に気立てがよく美しいだけの薄っぺらい女性ではない。うわべだけの優しさ、当たり障りのない言葉では傷ついた二人の心に届くことはできない。彼女たちはそんな義務もないのだが、彼らの心にある森に分け入り、時には優しく、時には厳しく声を掛けながら、彼らに自分たちが存在する意味と使命を自覚させていく。

 「私は行くわ」、そして加賀はバトルアタッカーの攻撃でチームがピンチに陥ったことで、サークはローチャーらの専横が肝心の探査活動を停滞させていることについて、二人に決断を促す。どちらもポイント高いが、やはり上官のテレスに向かって「貴方」と対等な目線で呼び掛けたサークが僅差で今週の言葉をゲットした。勇気の要ることである。

 ラガーチームについては、不調の陸奥を見守る他のメンバーの視線もポイントである。敵であるガルベストン帝国と違って、彼らは国家のためとか軍人としての誇りとか皇帝への忠誠といった抽象的なスローガンのために戦っているのではない。スクランブルに遅れた陸奥を叱責しても体罰はしない、加賀による回復を待つという艦長伊勢とチームの態度から、彼らは戦う動機はスローガンではなく、メンバー個々人の自律と覚悟、自覚にあることを知っているのである。

キャラクター紹介

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ジャクソン

 探査基地に赴任したローチャーが引き連れてきた5人組の一人ジャクソン(タカ)はジャクソン艦隊を預かる隊長である。ガルベストンも窮乏している折、5人組は全員が全員艦隊を預っているわけではなく、艦隊を持っていたのはこのジャクソンとエンマ、そしてベルトランだけである。ジャクソンは3人の中でも最大の艦隊を擁しており、先任隊長のローチャーの片腕である巧将である。ローチャーの入れ知恵でテレスの命令を無視して侵攻した第3惑星の戦いでアシモフ艦隊の反撃を受けて戦死する。声は麦人に似ている。

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陸奥ヤスオ(CV間嶋里美)

 クウラガーチーム、陸奥マシン(右上腕)の操縦士、ラガーチーム中最年少でカイラガーチームの加賀とは訓練学校の同期、35話では脆い一面も見せるが、前線基地攻略ではルチアーノの罠を見破り、要塞崩壊に活躍した。また、チームの中ではメカニックに強いらしくエルドラ人の宇宙船を修理するなどしている。同じチームの甲斐やリックラガーチームのコメディアン、長門・伊豆のコンビに絡むことが多い。声はサークと同じ間嶋里美。

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陸奥の母親

 地球にいる陸奥の母親、23世紀にもなって島田髷に和服で外出するなど古式ゆかしい日本女性のようである。たぶん静岡県静岡市在住。

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陸奥の車

 陸奥の夢に登場したクラッシックな乗用車、左ハンドルでコラムシフト、バックレストがないなどの特徴がある。グリルの形状から、おそらく古いオースチン(モーリス・マイナー)かミニの対米輸出仕様と思われる。23世紀においてはこういう車は安全基準の問題から新規製造は許されていなかったが、化石燃料を消費するクラッシックカーの保有は許されていた。あるいは重力制御技術の発展で交通事故では人は死ななくなったので衝突安全は自動車の開発技術から外れ、バックヤードビルダーで新造された車かも知れない。いずれにしろかなりの年代物で、ダイラガーの世界では地球もガルベストンも浮上車両が主流である。

今週のバトルアタッカー(1分40秒)

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武器:ブラストビーム、ソード

ジャクソン隊第1号のバトルアタッカーはソード戦を得意とするオーソドックスな格闘戦タイプである。性能的にはベルトラン1号とほぼ互角と思われるが、操縦者の技量でやや劣っており、また、立ち直った陸奥の士気の高さもあって合体後のダイラガーには一方的に叩きのめされた。戦いの際には珍しいこととして、主題歌「銀河の青春」が一通り流れた後に袈裟斬りにされ、ラガーソードの露と消えた。

地球・ガルベストンの新鋭艦船

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新鋭戦艦

 個艦戦闘力でガルベストンに劣っていた三惑星連合が満を持して戦線に投入した新型の宇宙戦艦、従来の戦艦より倍以上大きく、ほぼガルベストン戦艦に匹敵する大きさと攻撃力、そして高い防御能力を持つ。30話の地球攻撃時には姿を見なかったことから、おそらくサラ星とミラ星で建造されたと思われ、艦のフォルムは各々の惑星の特徴を取り入れている。この戦艦の就役により、従来の戦艦や駆逐艦、レーザー砲艦など小型で攻撃力も防御力も不十分な(ほぼビーム1発で沈む)乗員虐殺用のような艦は後方に下げられた。第二連合艦隊はほぼこの新型艦で固められた艦隊である。

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アシモフ艦

 第二連合艦隊の旗艦として建造された超大型の宇宙戦艦で、ほとんどラガーガードに匹敵する大きさを持つ三惑星連合の旗艦。新型ガルベストン戦艦と比べても三倍以上大きく、あまりに巨体なため艦中央に小型艦橋を備えている。その主砲は一撃でガルベストン戦艦を撃破する威力を持つ。この戦艦の就役以降、ガルベストン艦隊の攻撃第一目標は最大だったラガーガードではなく、この艦に移ることになる。巨体の割に意外と敏捷で、また防空火力も優れている。防御能力については戦艦であるため、ほぼ同じ大きさのラガーガードよりはるかに優れていると思われる。

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新型ガルベストン戦艦

 テレスの旗艦として24話ですでに登場していた新型の宇宙戦艦。ガルベストン戦艦の攻撃力が地球艦隊相手に十分だったため、より構造を簡素化したマイナーチェンジ型で、艦首のバトルマシン格納庫なども踏襲している。構造を簡素化し、艦体をよりスリムにして鋼材使用量を減らした結果、一艦隊あたりの配備数はガルベストン戦艦より多くなり、艦体の攻撃力向上に寄与している。ただ、この艦を就役させる頃にはガルベストンの国力も低下しており、旗艦でありながら司令部設備を備えない艦(テレス艦、エンマ艦)も多く存在し、どうも作りは前型ほど良くはないようである。

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新型ガルベストン巡洋艦

 ガルベストン艦の戦闘力はどの艦を取っても地球艦や三惑星連合の戦艦、要塞には必要十分以上のものだった。地球戦艦相手には過剰な戦闘力は必要ないということで、従来の巡洋艦とミサイル艦の機能を統合し、艦体をやや大型化させて航行性能を良くしたのが新型巡洋艦である。その外見は新型ガルベストン戦艦に酷似しており、船体の大きさも近接したため、巡洋艦と言うよりは重巡とか小型戦艦と言うべき艦である。従来の地球艦隊相手なら、戦艦も含めこれで十分といえる新型巡洋艦だったが、地球の新鋭戦艦は攻撃力、防御力ともこの艦を上回っていたので、小型ガルベストン戦艦とも言えるこの艦の就役はあまり戦局に寄与することはなかった。

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