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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第24話「暴動、ガルベストン」

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平和的に話し合いでなどといったら、我々はどうなる?
失業だよ。

あらすじ

 惑星Kを完全制圧した地球側は惑星に基地を建設し、ガルベストン前線基地の捜索と破壊を決める。ガルベストン本星に帰還したテレスは本星の崩壊が進んでいることと、内務長官を務めていた父テスの解任を知る。

見どころ


 激戦の末、惑星Kを奪還した地球艦隊は戦死者を弔った後、惑星にキャンプを設営する。艦隊司令の伊達の意図はガルベストン基地の跡地に再び兵站基地を建設し、さらに基地に前線基地の機能も持たせるというものだった。しかし、問題は工事中に襲ってくるガルベストンの存在だった。「叩かれる前に叩く!」、伊達は前線基地制圧を決定し、地球艦隊はガルベストン基地の捜索と破壊に出撃する。

 一方、そのガルベストン前線基地ではルチアーノが地球攻撃の艦隊を進発させていた。「もはや我々は惑星Kなど問題ではない」、バトルマシンの開発を横目で見つつ、ルチアーノは「地球を乗っ取ってしまえば、あんな探査隊など問題ではないのだ」とうそぶく。そこにラフィットが帰還し、ルチアーノは惑星Kでの失態を叱責する。すでに本星はカポネーロ派のタカ派で占められており、テレスの父テスの解任も時間の問題だ。「失敗は許されぬ」、テレスを更迭し、惑星探査を放棄した地球乗っ取り計画を上層部に提案したのはルチアーノだと分かる場面である。

dairugger ガルベストン星に帰還したテレスは宇宙港で謎の美女の出迎えを受ける。王宮警備隊のサークと名乗るその女性は彼を皇帝コルセールの待つ行政府に連れて行く。途中、彼らは惑星探査の遅延に怒り狂う民衆のデモに遭遇する。「もう我慢の限界なんだ!」、探査隊は必死で惑星を探しているというテレスに石が投げつけられ、デモ隊は彼らを置いて行政府に向かって行く。が、それはテス失脚を狙うカポネーロの陰謀だった。デモ隊は残虐に鎮圧され、治安悪化の責任を取らされた内務長官テスは皇帝に解任される。「何と酷いことを、、」、弾圧された市民を見て、テレスは呆然と立ちすくむ。

dairugger「皆さん、どうか戦いは避けてください。地球の存在を認めてください。そこから全てのことが出発するのです!」

 行政府に到着したテレスは皇帝コルセールと幹部会の面々に戦争の回避を主張する。「全ては貴様が早く可住惑星を発見できなかったことから始まったんだ!」、カポネーロの罵倒に責任を認めつつ、テレスは地球を認めないことは自然を認めないことだと皇帝と幹部を説得する。科学文明が進みすぎ、星を死に追いやったガルベストンの過去が背景にある。同じ過ちを繰り返してはならない。しかし、それは無駄であった。「地球との戦争はガルベストンの意思」、テスの解任をカポネーロから聞き、テレスは会議からつまみ出される。

「自然の秩序を乱した者は、自然に復讐されるのだ。宇宙の自然の営みも崩してはいけない。決して戦いからは平和は生まれない。ガルベストンは危機から脱出できない!」

dairugger カポネーロらの路線が星を滅亡に導くものだと確信するテレスはサークにテス邸に送られる。彼の実家であるテス邸では解任されたテスが母親と一緒に彼の帰還を待っていた。「ガルベストンの指導者の中で、私とお前は腰抜けの異端者として烙印を押されてしまったよ、、」、消沈するテスは息子に地球との戦いの様子を尋ねる。歩み寄りつつも、総司令カポネーロの息の掛かった跳ね上がり者に邪魔され、いつも交戦になると言う息子にテスはため息をつく。その頃、行政府ではカポネーロらがテス解任の祝杯を上げていた。

「平和的に話し合いでなどといったら、我々はどうなる? 失業だよ。」

 今週の言葉はカポネーロ総司令、科学長官ゴメスやシンパの幹部たちとグラスを傾ける彼は全ては思惑通りとほくそ笑む。ゴメスの提案で危険分子であるテス親子を除くために、カポネーロは一計を案じる。テレスを惑星探査隊長に任命し、本星から隔離するのだ。前線基地司令官まで務めた息子が格下の探査隊長であることにテスは怒る。しかし、この命令は幸いとテレスは辞令を受けることを父親に言う。ルチアーノを中心に地球攻略ムード一色に塗り固められた前線司令部とは別に、惑星探査はガルベストンには必要なのだ。

dairugger「テレスの言う通りだ、我々はガルベストン星のために、最後まで全力を挙げるのだ」、サークを副官に任命し、テスらの見送りを受けてテレスは再び旅立つ。邪魔者が消えたことで、カポネーロはこれでルチアーノが地球を攻略すれば全ては我々の天下とほくそ笑む。

(ガルベストン、我が故郷よ、元気でいてくれ。一刻も早く可住惑星を発見すれば、地球の人々との戦いもなくなる。地球の人々よ、しばらくの不幸な時を耐え抜いてくれ!)

母星を離れる旗艦の艦上で、サークを従えたテレスは全面戦争となった地球、ガルベストン双方の人々のために祈る。ドレイクがいみじくも看破した通り、以降のテレスは以前の怜悧な作戦家ではなく、より大きな、ガルベストンの未来への架け橋となる存在として、ガルベストン、地球双方のために戦いのない世界を模索するようになる。

 「宇宙時間23時30分、異常なし!」、惑星Kを離れた地球艦隊は前線基地目指して進撃していた。その先頭に立つのはダイラガー、平和を願う人々の思いとは裏腹に、戦いはますます激しさを増していく。

dairugger 初のガルベストン本星登場話、バトルマシン同士の戦いではない都市ドラマで、登場人物も多く、これまで伏せられていた多くの事情が明らかになる話である。ルチアーノを中心に困難な惑星探しではなく地球乗っ取りに転向したカポネーロらの策は失敗に終わるが、このように国家や国民の運命を賭場のギャンブルのように扱う態度は戦前の日本では官僚や軍人を中心に見られたものである。そして、その犠牲になったのはいつも国民である。

 跳ね上がりの軍官僚が地球攻撃計画を売り込み、それに同調した軍の重鎮が皇帝に取り入って穏健派の司令官と内務長官を排除する。一見、地球の人々を除けば、ガルベストンの問題は何もかも解決するように見えるこの計画だが、問題だったのは失敗した時のことを誰も考えていなかったことである。カポネーロらの計画と、穏健さを装いつつ、急進派に暗黙の支持を与えたように見える皇帝コルセールの態度は、戦前に内政で失政を犯した上に中国大陸で行き詰まり、打開策として自国に十倍するアメリカに戦端を仕掛けて惨敗した、どこかの国の重臣や天皇と、実はほとんど同じものである。

キャラクター紹介

 24話はガルベストン本星の話で登場人物が多く、また、カポネーロやコルセールなど重要なキャラもいる。この二人については後に解説するとして、他の人物を解説したい。

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サーク(CV間嶋里美)

 王宮警備隊の女性としてテレスを迎えたサークは黒髪長髪のガルベストン美人である。戦死したドレイクに代わるテレスの理解者であり、王宮からテレスの副官に抜擢されて可住惑星探査に随行する。その成果は実り豊かなものであったが、地球との戦いも進み、民族の存亡と戦いの狭間で苦悩するテレスをサークは最も身近に観察していた。テレスの軟禁後は彼を救出するため反コルセール帝のクーデター組織と接触し、軍人の階級を捨てて組織のリーダーとなるなど果断なところもある女性である。テレスに尽くした彼女の存在は加賀ハルカをヒロインの座から追いやった。ハルカを凌ぐダイラガーの真のヒロイン。

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扇動隊長

 テレスとサークが遭遇した暴動で顔を見せた扇動隊長はガルベストンの隊長で、総司令カポネーロの部下である。内務長官テスを失脚させるため、市民を装って暴動を扇動し、テス失脚後は鎮圧側に廻って残忍に市民を鎮圧した。全てはテス追い落としを狙うカポネーロの策略であった。

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ゴメス

 ガルベストンの科学長官ゴメスは同国の内閣である最高幹部会議の一員で、カポネーロの同志である。バトルアタッカーの建造など軍需産業の代表と見られ、可住惑星発見を放棄したルチアーノの地球攻略計画に同意する。

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テレス母

 内務長官ソクラット・テスの妻でテレスの母、ガルベストンの支配階級出身の女性と見られる。皇帝や総司令に睨まれることの多いテスや息子の身を案じている。

今週のバトルマシン(0分)

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ダイラガーチョップ

 今週もバトルマシン戦はなかったため、スーパーロボ・ダイラガーの驚異の機能を紹介したい。第1話から最終話まで後継機もなく戦い続けるダイラガーだが(量産型ダイラガーの計画は結局失敗している)、良く良く見ると細かいバージョンアップがなされている。ダイラガーチョップは49話で用いられたダイラガーの格闘技の一つで、それまではダイラガーパンチであった。この左手チョップのパーツに乗り組んでいるのはマック・チャッカー(リックラガーチーム)で、それまでは剣を掴むくらいの動きしかできなかったチャッカーマシンは後半では地味に大幅に強化されている。チャッカー自身がマニピュレーターを操作して機体を救った回もあり、パンチもチョップも自在に繰り出せるようになったダイラガーだが、このような地道な強化を続けていたことが毎週パワーアップするガルベストンのバトルマシン、バトルアタッカーに対してダイラガーが勝利を続けてきた理由である。

三惑星連合の風景

 激戦となった惑星Kの戦いが終わり、戦死者を弔った安芸たちは基地の跡地にキャンプを設営する。地球から連絡船が到着し、久しぶりの故郷からの便りに喜ぶラガーチーム。三惑星連合といっても各々の惑星やラガーメンバーの故郷の映像は極めて少ないので、ここでご紹介しておきたい。

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サラ星人キャンプ

クロイツと二大背景キャラの一人カッツの故郷である。カッツ(クウラガーチーム)はほとんど喋らないキャラなので、彼の台詞のあるこの回は貴重である。カラテヤ(カイラガーチーム)は今回も喋らなかった。

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 同盟星の割にはほとんど描写されないサラ星のこれは貴重な映像であるが、12話のレビューで推測した通り、やはり森が多く、自然豊かな星のようである。大きな衛星らしい星も見られるが、これはミラ星かもしれない。サラ星とミラ星は二連星の可能性があるというのは当サイトの仮説である。

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地球人キャンプ

dairugger ヒロインの一人、加賀ハルカとクウラガーチームの陸奥ヤスオの故郷の写真が紹介されている。山中湖らしい湖が映っており、彼女が山梨出身だと分かるカットである。陸奥は35話で車で富士山に行ける場所に住んでいることは分かっていたが、写真を見ると松と港湾状の地形が映っていることから、加賀の近く、静岡県沼津市の出身だろう。

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ミラ星人キャンプ

dairugger 銀河警備軍にかなりの数のミラ星人がいることが分かる映像である。ミラ星人たちの服装がケールやネグレとは意匠が違い、他の地球人と同じ服装なので、地球の軍隊である銀河警備軍は宇宙人でも入隊資格があるらしい。キーツがミラ星の王子だと分かるカットである。

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