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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第23話「惑星K奪還作戦」

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時間は一瞬のようで長く、長いようで短い。、
難しい、、これからが難しい、、
この戦いが悲劇の夜明けにならぬように。

あらすじ

 宇宙要塞から三惑星連合艦隊が出撃し、ドレイク艦隊がそれを迎え撃つ。一方、惑星Kでは連合艦隊と呼応した戦艦ラガーガードが態勢を立て直し、奪回作戦を行おうとしていた。連合艦隊に圧倒されたドレイクはガルベストンの過去、現在、未来を見る。

見どころ

 最初から三惑星連合艦隊とドレイク艦隊の激突である。優勢な敵軍に対し、前線司令部のルチアーノに忌避されたドレイクに基地からの増援はなく、戦うのは彼の艦隊のみである。自軍に数倍する敵と対峙したドレイクは麾下の全艦に訓示する。

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「全艦に告ぐ、戦いの時は来た、勇敢に戦い抜け! 我々はテレス司令に従って戦うことを必死で避けてきた! しかし、戦えないのではない! 良くルチアーノ司令にも教えてやるんだ。それがテレス司令の無念を晴らすことになる。全力で戦え!」

 ダイラガーや地球艦隊との対戦数は7回に及び、前線基地一の武勲を誇るドレイク、テレスのナンバー2として伊勢やラガーガードと交渉し、相手を認めて戦わずして退いたこともあった智将の心境は複雑である。一方で連合艦隊を率いる伊達もドレイクには三度の敗北を喫しており、両者の間には因縁がある。

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「砲撃開始!」、両軍の戦艦の主砲が火を噴き、艦隊戦が展開される。

 艦隊戦でドレイクはバトルマシンを発進させて艦隊を撹乱し、数に劣る戦いを有利に運ぶ事を目論む。しかし、それは伊達も考慮済みのことだった。連合艦隊はバトルマシンを物ともせずに砲火をドレイク艦隊に浴びせ、敗北の予感がドレイクの脳裏をよぎる。戦いは終始地球艦隊優位で進んでいく。

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「そして多勢に無勢、ついに旗艦のみになったドレイクは敵旗艦への突撃を敢行する。「静かにしろ」、退却を勧める副官に沈黙するように言い、破壊されていく旗艦でドレイクは独語する。

「静かにしてくれ、今この一瞬を俺だけのものにして欲しい。俺は今、初めて本当に考えることを知った気がする。考えなければ、、そう、、考えなければ、、テレス司令の思っている意味、俺に課せられた意味、、時間が欲しい、、時間が、、」

 ドレイクの目前に母星ガルベストンの光景が広がる。荒廃した地表、錆びて崩れ落ちる超近代都市、地下に逃れた星の住人の住まう地下都市、、

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 「私は敵司令の挑戦を受けて立つ」、伊達は突撃してくるドレイク艦に艦を向け、地球旗艦はドレイク艦を迎え撃つ。バトルマシンも撃破され、炎上する旗艦でドレイクは副官ロシェの肩に手を置く。「ロシェ、これでいい、我々は精一杯やったのだ」、地獄絵図のような旗艦で、黙考を終えたドレイクの表情はむしろ爽やかだった。

「時間は一瞬のようで長く、長いようで短い。
難しい、、これからが難しい、、
この戦いが悲劇の夜明けにならぬように。」


 今週の言葉はドレイク隊長、副官ロシェの肩に手を置き、彼の脳裏に去来したものは何だったのか。ドレイクの「これでいい」という言葉には、彼の艦隊の乗員ばかりではなく、彼らをこの戦場に送ったガルベストンという国と、その国民への万感の思いが込められている。「一瞬のようで長く、長いようで短い」、彼らの役割とは何か、全てを悟ったドレイクは副官ロシェの肩からその手を放す。言葉にしなくても、ロシェに彼の真意は伝わっていた。

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「テレス司令万歳!」、直後に旗艦が爆発し、ドレイクは壮絶な戦死を遂げる。

 「ガルベストン帝国万歳!」ではなく、テレスの名を叫んだドレイクの真意は何か。彼が複雑な表情で皇帝コルセールの肖像画を見上げていた22話が思い出される。テレスに心服する彼にとって、地球との対話を拒み、本星の軍官僚が私利や名誉欲のために惑星探査を妨害し、国民を飢えさせて皇帝と重臣が銀河制覇を目論むガルベストン帝国というものは、それがいかに強大でも、戦死するにも忠誠を払うにも値しない存在だったのだ。

「なぜ死んだドレイク、君の死は新たな悲劇の始まりになってしまったのだ。いよいよ地球と全面戦争になる。こんなことをしていては、ますます可住惑星の発見は遅れてしまうだろう。その間にガルベストンは、滅んでしまうかもしれないのだ!」

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dairugger ドレイクの認識では、滅び行く星を救えるのはテレスの惑星探査しかなく、皇帝を頂点とする現在のガルベストンの政府は自分にも国民にもふさわしくないものである。そんなもののためには自分は死ねない。彼に取って、テレスは上官以上の存在、新生ガルベストンを体現する存在だった。国旗だから、国歌だからという理由で、それを崇め、唱和することで愛国心を測るような幼稚な精神性は、この話のドレイクのちょうど対極にある。

「戦いによって得るものは犠牲だけだ。戦いは戦いを生み、犠牲は犠牲を生む、決して戦いから平和は生まれない。ガルベストンにとっても、地球にとっても、さらに不幸な時が来てしまった。さらばドレイク、おまえの死は無駄にはしない。」

 「フフフ、、奴の時代はこれで完全に終わったんだ」、テレスが基地を去ったことを見たルチアーノは地球攻撃作戦を立案する。「うぬぬ、腰抜けドレイク!」、惑星Kではドレイク艦隊の敗北をラフィットが嘲笑する。「やはりテレス司令の部下では戦えぬ」、ドレイクの戦死がルチアーノらによる前線基地テレス派の粛清劇だったことが分かる場面である。

dairugger「万が一の際にチャーチ艦隊をそちらに差し向ける」、ドレイクとは対照的にラフィットを重用しているルチアーノはわざわざ通信を送り、増援艦隊を惑星Kに差し向けることを伝える。前言もあり、増援に向かうのが元テレス派のチャーチであることにラフィットは顔を曇らせる。そして、赤い月の昇る頃、兵站基地の跡地に作られた要塞にラガーチームが攻撃を開始する。「返り討ちにしてやる」、しかし、慢心していたラフィットの艦隊は脆く、陸海空からの変幻自在のラガーチームの攻撃に基地は破壊され、艦隊は劣勢に立たされる。

 「くそおっ、こんな連中に負ける我々ではないが、ここはひとまず、引き揚げろ!」、たった3機のラガーチームに惨敗したことで冷や汗を流すラフィット、そこに連合艦隊が惑星Kに到着する。ラフィットの言う「こんな連中」はダイラガーに合体してバトルマシンを倒し、ただでさえ弱っていたラフィットの艦隊は伊達の連合艦隊に包囲されてボロボロに叩かれる。「ええい、遅いぞチャーチ! 何をしておった!」、増援など要らないという先の言葉はどこへやら、呆れ顔のチャーチと彼の艦隊の援護を受け、ほとんど全滅のラフィット艦隊は方々の体で惑星Kから脱出する。

dairugger 先にテレス麾下の将校は役に立たないとほざいていたラフィットだったが、一連の戦いで善戦したのは、実はチャーチやドレイクなどテレス派の将校であった。このチャーチを増援に送っていれば、ドレイクは戦死せずに済んだかも知れない。狼狽するラフィットとは対照的に、チャーチは整然とした砲火を伊達に浴びせ、ラフィット艦隊を包囲網から脱出させることに成功する。損害の多さを見た伊達は追撃を中止し、地球艦隊は惑星Kを制圧する。

 「やったぞ! 俺たちは勝った!」、惑星Kの地上に降り立ち、初の勝利に安芸は快哉を叫ぶ。「でも、この戦いは寄せては返す波のような気がする」、ハルカの言葉にラガーチームは赤い月を望む、この月の下で兵站基地が全滅し、この月の下で今度は戦いに勝利した。「寄せては返す波」、一進一退を繰り返し、彼らの戦いは今後も続く。

dairugger テレス派の将校として孤立無援のまま、粛々と地球艦隊と戦って戦死するドレイクと、タカ派の潤沢な支援と支持を受けていながら余りにもあっけなく無様に敗走し、テレス派の将校に助けられるラフィットの対比が印象的な話である。しかし、終戦を国民学校で迎えた藤川桂介の真骨頂は、前半のドレイクの死とテレスの離任までの話に全て入っている。

キャラクター紹介

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伊達

 三惑星連合艦隊の指揮官である伊達(タカ)にとって、23話の戦いは彼の部下であったケール、ネグレ、萩の復仇戦でもある(萩以外は全てドレイクに戦死させられた)。宿敵を屠った彼は惑星Kに向かい、ラガーガードと共同してラフィット艦隊を撃退する。が、それは前線基地までの彼の長い戦いのほんの始まりにすぎなかった。連合艦隊の司令官として新たに前線基地司令官となったルチアーノの送る艦隊を次々と破り、基地に迫る伊達だが、戦いの最中、彼の艦隊も徐々に失われていく。32話でラガーチームを救うため、宿敵ルチアーノと刺し違える形で戦死するが、「ガルベストンの悪名は宇宙に轟いているようだな(エルドラ星)」、「これは命令である(滅茶苦茶な内容が多い)!」、「沈んだ戦艦は精神力で補う!」など、アシモフと並ぶ銀河警備軍タカ派の二大巨頭の一人として(彼の無謀な戦法で殺された銀河警備軍将兵は数知れない)、その敢闘精神と、数々の迷言、名言を残した彼の戦いざまはラガーチームに強い影響を与えた。

今週のバトルマシン(マシンG:対戦せず、マシンH:2分10秒)

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武器:大型ビーム砲、対艦ミサイル

 ドレイク艦隊の8番目のマシンであるマシンGは同艦隊最後のマシンである。ガルベストンは艦隊戦には火力重視のマシンを投入するという戦術ドクトリンがあるが、このマシンもその文法に倣っており、艦隊陣形を自在に飛び回る機動性と火力で地球艦隊に対抗した。マシンGは2本の腕と2本の足を持ち、従来機よりも高機動力が与えられている。しかし、戦力差はいかんともしがたく、被弾して能力が落ちたところを地球艦隊の集中砲火を浴びて撃墜される。無人スナイパーに撃破されたマシンCと並び、艦隊に撃破された2機目のバトルマシン。

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武器:ビーム砲、巨大吹き矢、マジックハンド

 ラフィット艦隊のバトルマシン第8号であるマシンHはやはり従来機と異なるユニークな機能を持つバトルマシンである。搭乗員もバトルマシンの乗員は通常3名だが、マシンHは6名の乗員で操縦されている。主脚を含む5本の足と上下体を分離する構造は同隊7号機に酷似しているが、下胴体に籠状に配置された足でジャンプする運動はラッカル隊2号機の特徴である。おそらくルチアーノが持参した本星開発の機体の1機。メインの武器は上胴体に仰々しく設置された発射装置による大型の吹き矢で、これは頑丈なラガーマシンのボディを切り裂く貫通力がある。しかし、炸薬などは仕込まれておらず、接触しても爆発することはない。加えて肩のマジックハンドは機体の全長の数倍まで伸び、ラガーソードの間合いに踏み込ませない。あと、標準的な武装として胸にビーム砲が搭載されているが、威力は大きくないようである。特異な武器とピョンピョン跳ねるジャンプ運動でダイラガーを苦しめたが、最後は自分で放った吹き矢にコクピットを貫かれて撃破された。ラガーソード以外で止めを刺された最初のマシンであり、スピーチ機能が搭載されている。


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バトルマシン語録(マシンH)

「来い、地球!」 (明らかに外部放送を意識した発言である)

「くそおお、こうバラバラになられては狙う的が絞れん。ダイラガーに合体させて一つの的に絞れたほうが戦いやすいかもしれん。」
(搭乗者も本星出身らしく、ダイラガーの何が問題なのか分かっていないようである)

「いずれにしてもエネルギーの流出でパワーは半減しているはずだ!」
(問題は吹き矢とマジックハンド以外にまともな武器が無いことであった)

「くわっ!」(ダイラガーと接触して転倒)
「死ねえっ!」(必殺の連続吹き矢)
「おのれええーっ!」(矢尻をダイラガーに防がれる)
「でわあああぁぁーっ!」(逆に投げつけられてコクピット命中、爆散)

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