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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第21話「立て、銀河警備軍」

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地球よ、目を見開いて、
もっと広い、広い世界を見つめてくれ、、

あらすじ

 惑星K基地の壊滅を受け、銀河警備軍本部は動揺する。それまでの戦いを分析し、総司令出羽は全艦隊を宇宙要塞に集結させる。一方、長官若狭はガルベストンの危機を訴えるため、行政府のパーティーに出席していた。

見どころ

 戦艦ラガーガードが惑星Kに到着し、基地の壊滅が銀河警備軍本部に報告される。しかし、その地球では行政府が第一警戒態勢の解除を指示していた。行政府の決定に惑星Kの悲劇がいつ地球に降り掛かってくるか分らないと警備軍幹部は不満を露わにする。「結論を出すまでは慎重に、結論を出したら一気に、それが私の主義だ」、主戦派の幹部たちをなだめつつ、出羽は行政府のパーティーに出席する長官若狭にパーティーで警戒解除の再考を呼びかけてもらうことに一縷の望みを託す。

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行政府のパーティーに出席した警備軍の若狭長官は余りにも呑気な政府関係者の様子に苛立ちを隠せないでいた。「すでに兵站基地で悲劇が起きているというのに、こういうパーティーを開く事自体、何も分かっておらんのだ」、首尾を尋ねる出羽からの電話に、若狭は行政府の雰囲気がたるんでいると苦言する。その周辺でも、「攻撃は単なる偶発事件でしょう」、「攻撃は宇宙要塞止まり」などと悠長な会話が交わされ、若狭は身を震わせる。3万光年の彼方で探査隊はいつ攻撃を受けるかも分らないというのに、そして探査隊の運命は明日の地球の運命だ。

 本部での会議は続き、作戦室ではアシモフがダイラガーの活躍を幹部たちに訴えていた。警備軍本部でも量産型ダイラガーの計画は進められていたが、その性能は不満足なものだった。議題はガルベストンの目的に移り、アシモフは彼らの目的が可住惑星の発見にあることは明らかだと説明する。シムの例にもあるように、一般兵士同士の交流に問題はない。「とにかく行政府に考えを変えてもらわねくては、どうしようもありません!」、会議の席上、アシモフは地球行政府の態度を批判する。

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 「警備軍本部は神経質になりすぎているんだ」、パーティーでは警戒態勢を敷いた警備軍本部の対応が批判されている。「第一警戒態勢を敷いて、いちばん心配したのは国民の動揺です」、もう少し慎重になってくれなければ困ると列席者の一人は若狭を批判する。「探査隊が慣れない宇宙暮らしでピリピリした情報を送っているせいだ」、話がついに探査隊の批判に及び、やりきれなさを感じた若狭はパーティーを中座する。

「平和は素晴らしい、しかしその平和が誰かの手によって守られ、支えられているとしたら、その人たちを忘れることはできない。平和への道を切り開こうと努力している人たちを、援助しなければならない。」

 パーティーを中座した若狭は夕暮れの公園に車を止め、空いた時間で鳩に餌を撒き、池の水鳥や鳩、ベンチの老人、犬を追う少年に視線を送る。平和すぎるほど平和な地球、出羽らに依頼された行政府への説得は、できるムードではなかった。警備軍長官としての自分の非力を若狭は実感する。

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「地球よ、目を見開いて、もっと広い、広い世界を見つめてくれ、、」

 今週の言葉は若狭長官、惑星Kの悲劇があったにも関わらず、まるで危機意識のない行政府の反応に苛立つ彼だが、苛立ちの原因はそれだけではないだろう。豊かな三惑星が星間国家を構成し、空前の繁栄を謳歌する三惑星連合、しかし、外宇宙では強大な軍事力を誇るガルベストン帝国が現れ、銀河に住むあらゆる知的生命体の脅威となっている。「もっと広い世界を見つめてくれ」、呻くような若狭の言葉、平和を享受する権利は地球だけのものではないのだ。

 パーティーから戻り、作戦室に入室した若狭の眼前にあったものは壊滅した惑星K基地の残骸と、無数に立ち並ぶ萩らの墓標、そして血のように赤い月であった。それらが映るパネルを一瞥し、出羽に決断を求められ、意を決した若狭は警備軍全軍に訓示する。

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「諸君、これ以上もう犠牲を出してはならない。ガルベストンと戦って、平和への道を切り開こう。」

 この若狭の「平和」という言葉は、単に三惑星連合のそれだけを意味するものではないだろう。銀河警備軍は三惑星連合の平和のためだけでなく、銀河の平和のために戦う。惑星Kでの惨劇を受け、ついに決断した長官若狭の言葉で、まなじりを決した銀河警備軍は、その全軍、全艦隊を挙げてガルベストン帝国と対決することになる。

キャラクター紹介

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若狭(CV佐藤正治)

 それまで「長官」と呼ばれていた若狭長官(ハト)だが、21話で「銀河警備軍長官」と彼の肩書きが明らかになる。銀河警備軍がシビリアン・コントロールの軍隊だということは艦隊の出撃に行政府の許可が必要など、これまでの描写で明らかになっているので、おそらく彼は文官で政権与党の政治家と思われる。その割にはいつも軍服みたいな服(略綬まである)を着て登場しているので誤解を招くが、この文官(首相、大統領)の軍服ルックは80年代の作品では特に珍しくもないものである。ただ、軍人の宇宙軍大臣がおり、統帥権のある三惑星連合は嫌だという向きには彼の服装はスーツに置き換えて視聴することをお勧めする。それでも、この若狭長官の作中での描写は「コマンダー・イン・チーフ」というよりは文官の軍事大臣であるセクレタリーやダイレクターに近いものであり、少なくとも戦前ではないという制作者の見識は感じさせる。


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出羽(CV大竹宏)

 銀河警備軍総司令で、伊勢やアシモフの上官(ハト)、作中では「総司令」と呼ばれている。最初から総司令の上に長官がいるというダイラガーは二人の位置関係を理解するのに少し苦労する。続く作中での描写で「長官」の若狭が司令「長官」でないことは分かってきたので、銀河警備軍の制服組のトップはこの出羽で、自衛隊でいえば統幕議長、米軍なら作戦部長の地位にある軍人である。若狭と異なり自ら指揮を取ることもあり、27話では宇宙要塞でラフィットと対決してこのガルベストン右翼のチート男を葬り、52話ではアシモフの第二連合艦隊に続く、第三連合艦隊を率いてガルベストン本星に向かっている。


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国防省関係者


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 若狭が出席したパーティーの出席者たち。一応会場には銀河警備軍のシンボルが掲げられており、話題を見ても行政府の関連だが、国防委員会など国防関係の議員、有力者たちだと思われる。国籍、人種は多様だが、サラ星人、ミラ星人の姿は見られない。その危機感のなさで若狭を呆れさせる。

今週のバトルマシン(0分)

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リミットワープ

 今週もバトルマシン戦はなかったので、スーパーロボ・ダイラガーの驚異の機能をご紹介したい。今回ご紹介するのはリミットワープ機能である。ワープというのは知っての通り超光速飛行のことであるが、前回ガルベストン快速艦を紹介した通り、この意味でのワープならダイラガーも含め、銀河警備軍の諸艦艇もガルベストンも普通にやっている。数日、数時間での恒星間移動はこの作品の宇宙船では標準なのだ。

dairugger しかし、作品にはもっと高能率のワープがある。ワームホール型ワープはガルベストン快速艦以外には確認されていないが、惑星Kに他星系から超光速で飛来するミサイルを撃墜する際に用いられたラガーマシンの超機能「リミットワープ」は地球側唯一のワームホール型ワープである。ただし、このワープはラガーマシンが全機、しかも各ラガー形態でなければ行うことができないようであり、ワープ時の操縦は安芸、コントロールはウォルターと複雑な操縦方法のようである。おそらく、各ラガーマシンの中ではリックラガーが最も高出力で、空間に穴をあけるワームホール形成はこのマシンで行なっているのだろう。

 SF的には一挙に数万光年のジャンプを可能にするワームホール型ワープだが、ダイラガーのワープ能力は明らかでない。後の30話「地球非常事態」では、安芸がガルベストンに襲われた4万光年彼方の地球に駆けつける旨の発言をしていることから1万光年は軽いと思われるが、一度に3万光年をジャンプするガルベストン艦に比べるとそこまでの能力はないようであり、それが「リミット」の由来と思われる。


量産型ダイラガー

dairugger 21話では銀河警備軍の科学技術研究所で開発中のマシンとして量産型ダイラガーが登場する。とはいうものの、このメカは最終回まで一台も出ない。理由は21話で出羽が説明している通りで、銀河警備軍が開発したこの機体はとにかく性能が低く、ダイラガーはおろか、ガルベストンのバトルマシンにすら対抗できないような性能機能しかなかったためである。では、同じ地球のメカでありながら、なぜ警備軍開発のマシンはダイラガーより性能が低いのだろうか? その謎に筆者なりに迫ってみたい。

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 それは超合金だからだ、では、余りにも身も蓋もないので、21話まで進んだ折、作中におけるこのロボットの取扱いを考えると、いくつか浮かんでくるところがある。

dairugger  まず、第一話の銀河警備軍の会議で取り上げられた「ラガーガード計画」という名前、「探査艦ラガーガード」ではなく、「計画」と銘打っているあたり、これには何か意味があるのではというのが一つ、もう一つは初期の話でアシモフらが、「ラガーガードは補充が利くがダイラガーは補充が利かない」と言っていることである。探査艦ラガーガードが銀河警備軍所属の戦艦であることは明らかで、搭乗員の制服も警備軍だし、そもそも艦の艦色フォルムが他の警備軍の戦艦と同じで、ダイラガーを搭載しているので通常の戦艦よりかなり大きいが、それでも同様のテクノロジーで建造されているという推測は立つし、使う武器もほとんど同じものである。

dairugger  これに対し、主役ロボのダイラガーというのは見ての通り極彩色のロボットで、フォルムといい機能といい、他の警備軍の戦艦や戦闘機、量産型ダイラガーとの共通点は全くない。使う武器も剣やなぎなたなどで、ビームなどの種類も多彩である。これが「ラガーガードより大事」というのは実はダイラガーというのは銀河警備軍が開発した機体ではなく、「ラガーガード計画」で開発された機体ではないだろうか。

dairugger  この「ラガーガード計画」というものがどういうものだったかは搭乗員の出身を見ればおよそ理解できる。彼らは三惑星連合を構成する多様な人種の集団で、言ってみればインターナショナル・チームである。計画がそのようなものであれば、そもそもダイラガーは銀河警備軍の所属ですらないのだ。主として地球の軍隊である銀河警備軍(サラ星、ミラ星は同盟星である、ユニフォームも少し異なり、指揮系統も別であることが指摘されている)は単にダイラガーを預かって運用しているだけで、預かり物であるので母艦であるラガーガードより、三惑星の政府から委託されたこのロボを重要視しているということになる。

dairugger  搭乗員については、ダイラガー乗員は他の乗員とは異なるユニフォームを着用しており、また、初期の発言では戦闘目的で訓練されたのではないこと、また、ダイラガーの操縦士は科学者ではなくデータ収集が任務で、分析はドクター・サーチの研究所が行なっていることが明らかになっている。彼らは操縦のみで探査した惑星につき独自の分析を発言することは禁じられている描写もある。彼らは各々の星の軍人操縦士で計画の内容には関知しておらず、となると、登場するキャラクターで「ラガーガード計画」に関与していると思われる人物はドクター・サーチただ一人ということになる。

 作品に登場するサーチ博士はかなり多才な人物で、本業の医師のみならず生物学や地質学、惑星科学に通じていることが確認されている。というより、ダイラガーが集めたデータは全てこの人物の所に送られ、分析作業を指揮しているのだから、ラガーガードの本来の任務である惑星探査、そしてその探査マシンであるダイラガーの設計段階から関与していたのではないだろうか。彼があれを設計したかはともかく、探査装置の仕様とか要求されるスペックとかには関与していた可能性がある。いわば彼は「ダイラガーの父」である。

 銀河系の深淵部を探査する惑星探査にはかなり過酷な環境での任務も想定されており(これまでの所、ラガーマシンはマイナス120度から560度の範囲で問題なく作動できることが確認されている)、また緊急脱出用と思われる高性能なワープ機能を備えているところを見ると、その要求されるスペックはかなりのハイスペックで、これはきっと、「ラガーガード計画」の下、三惑星連合の科学技術の全てを結集して、かなり長年月を掛けて開発準備されたものに違いない。材料によっては製造に長時間が掛かるものもあり、警備軍の科学技術研究所が調達できないようなものもあるのだろう。

dairugger  「ラガーガード計画」はその後どうなったか、ラガーガードにはサーチの他かなり多数の科学者が乗船していることが確認されており、多くは惑星探査のエキスパートである(天文台まである)、となれば、計画はダイラガーの完成とラガーガードの就役と共に次の段階に移り、科学者たちは探査船に乗船したと考えるのが適当である。また、ダイラガーがいくら丈夫とはいっても、ブラックホールや超新星爆発の至近のような任務では損傷することもあるだろう。ラガーガードには工場設備もあることが確認されているので、科学者の他、ダイラガーを建造した技術者も乗船したと思われる。

 彼らはダイラガーだけでなく戦艦ラガーガードの改造にも関与していると思われ、初期ではロクな武器もなかった探査艦ラガーガードは中盤以降では一個艦隊を向こうに廻して戦えるほど武装も武器も強化されている。単なる一探査船の工作班にこれだけの技術があるとは思えず、これはやはりダイラガーを建造した技術者たちの仕事だろう。そういう重要な科学者、技術者が乗る船を何度も敵に突撃させていた艦長アシモフ(タカ)の采配には大いに疑問があるが、彼は17話で解任され、以降の同艦はより慎重な伊勢艦長(ハト)の指揮になっており、クルーたちも安堵しているようだ。

 つまり、量産型ダイラガーが本家ダイラガーより弱いことには理由があるのである。おそらく銀河警備軍にはバトルマシンの設計能力がなく、資材も入手困難で、設計した技術者はラガーガードに乗船していて地球におらず、加えて予算の問題があったのだ。

 そういうわけで、第1話以降最終話まで地球軍の最前線で戦い続けるダイラガーだが、それが良かったのか悪かったのか、そもそも存在自体が化外、規格外という話もあり、そのあたりの話は読者の判断に委ねたい。

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