◇MUDDY WALKERS
機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー | ||||||||||||||||||
■第20話「惑星Kの死闘」 | ||||||||||||||||||
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■あらすじ | ||||||||||||||||||
惑星Kに兵站基地を建設したラガーガードと萩支援艦隊、萩艦隊を置き、新たな探査惑星を目指して出港した探査艦ラガーガード。艦が去った後、地球の前線基地建設に怒ったラフィットは艦隊を惑星Kに差し向ける。 | ||||||||||||||||||
■見どころ | ||||||||||||||||||
ダイラガー全52話のターニングポイント、赤い月が昇る惑星Kの戦いはやはり11話と並ぶ特別な話である。川島和子の歌が印象的な20話であるが、始まりはむしろいつもにも増して平和な光景で、兵站基地と出航前のラガーガードの様子が描かれる。基地では萩が出航する伊勢に声を掛ける。「また会う日を楽しみにしている」、飄々とした様子で伊勢と握手する萩の様子からはその後に起こる悲劇を予感させるものは何もない。
惑星Kに血のように赤い月が昇り、基地建設が一段落した兵站基地ではくつろいだ様子で萩と支援隊員が夕食を摂っていた。「何だか、この星を想定して作られたような歌だな」、スパゲッティを絡めつつ、辛気臭い川島和子の歌(わたしは宇宙)にぼやく萩に隊員の一人は、「地球で流行っている歌です」と答える。が、ガルベストンは彼らのすぐ近くまで迫っていたのだ。突然攻撃が開始され、基地は大混乱に陥る。混乱の中、救援を求め、通信機に向かって叫ぶ通信士を萩は制止する。
ラガーガードは探査艦で、彼の艦隊はその支援部隊である。活動は平和的なもので、宇宙を敵と味方に分け、断固として地球側の活動を阻む敵と戦いつつ続けるようなものではなかった。攻撃が熾烈さを増してきたことを見て、萩は全施設の電源カットを命令する。それは同時に通信機の作動をも停止させる措置でもあった。
ラガーガードの銀河探査という任務にあくまで忠実に、探査艦への連絡を拒む萩、ラガーガードでは超能力者のキーツとキリガッスが出発したばかりの兵站基地に異変を感じる。キーツの連絡を受けた安芸は伊勢に報告し、伊勢は兵站基地に通信を送る。
通信途絶に不審を感じた伊勢はラガーチームに出動を命令する。「みんな! 何をしているんだ!」、出動命令を受け、惑星Kのテナントを眺めていたメンバーをウォルターが怒鳴る。ここに来て、キーツの不吉な予感は全クルーの共有するものになっていた。
青い雪が流れ
あなたの夢にめぐりあえます
「こちらラガーガード、なぜ通信回路を閉じていた?」、通信士がようやく通信機を作動させ、呼び掛ける伊勢の声がスピーカーに流れる。「ガルベストンの攻撃を受けて、全滅に等しい、、」、マイクを取った萩は基地の壊滅を報告する。「何とか、自分たちの手で守るつもりだったが、、」、そこでラフィットが管制塔を爆撃し、彼らは業火に包まれる。
戦いの合間に流れる川島和子の独唱と壊滅する基地の場面は何度見ても戦慄する光景である。戦いの場面の数カットは台詞さえなく、物悲しい歌と共に炎に包まれる基地や撃墜される艦隊など惨劇の様子が延々と映される、いわゆるスクリーンセーバー映像なのだが、断片的な映像でおそらくは数時間に渡っただろう、ガルベストンによる徹底した破壊と殺戮の光景を余すところ無く描き出しているこれは、まさにスクリーンセーバーとはこういうもの、「ザ・スクリーンセーバー」と呼ぶべき映像である(筆者はガンダムとかエヴァンゲリオンとか特定の作品との比較は必要ない限りレビューではしないようにしている)。
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■キャラクター紹介 | ||||||||||||||||||
パティ・エリントンはクウラガーチーム、パティマシン(胸の戦闘機)の操縦士である。合体時には最もバトルマシンの攻撃を受ける、ある意味一番危険なポジションにいるパティだが、陽気な性格でチームの雰囲気を和ませており、戦闘機であるパティマシンの操縦技術も確かである。リックラガーチームのウォルターとは仲が良く、ペアを組むことも多い。ウォルターの両親が手紙で気に掛けているところを見ると、両者の関係はかなり進展しているものと思われる。48話で機体に吸着した機雷が爆発して負傷するが、超合金でできているラガーマシンは丈夫で、機雷の爆発くらいではマシンは無傷でパティも短期間の入院くらいで済んだようである。全員入院のリックラガーチームと異なり、クウラガーチーム唯一のサーチ病院の入院者である。 | ||||||||||||||||||
■今週のバトルマシン(2分0秒) | ||||||||||||||||||
ラフィット隊のバトルマシン第6号「ブラー」はこれまでのバトルマシンとは系譜の違うバトルマシンである。従来バトルマシンはテレスの前線基地で開発され、各艦隊に配備されてきたが、テレスのレームダック化とラフィットの権勢の伸長は彼にガルベストン本星建造のマシンを与えたようである。すなわち、ブラーはその性能仕様が限りなく後のバトルアタッカーに近く、バトルマシン初のビーム剣装備など、次世代機の装備が用いられている機体である。
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■筆者コメント | ||||||||||||||||||
やはり何度見ても壮絶な話である。物悲しく流れる川島和子の歌といい、これは作っているスタッフはお子様向けの極彩色の巨大ロボットのドタバタ活劇なんかではなく、本格的な戦争映画、「大日本帝国」とか「二百三高地」のノリでこれを作っていたのではないか、そう思わせる鬼気とした出来栄えである。だいたいヤマトのスキャットを歌った川島和子なんかをバックコーラスに持ってくるあたりからして違っているし、これはどう見ても「お子様向け」の話ではない。そんなレベルは完全に超えている。
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