MUDDY WALKERS 

dairugger

 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第20話「惑星Kの死闘」

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やめろ! 
こんなことで彼らをいちいち呼び戻していたら、
探査活動は停滞してしまうだろ!

あらすじ

 惑星Kに兵站基地を建設したラガーガードと萩支援艦隊、萩艦隊を置き、新たな探査惑星を目指して出港した探査艦ラガーガード。艦が去った後、地球の前線基地建設に怒ったラフィットは艦隊を惑星Kに差し向ける。

見どころ

ダイラガー全52話のターニングポイント、赤い月が昇る惑星Kの戦いはやはり11話と並ぶ特別な話である。川島和子の歌が印象的な20話であるが、始まりはむしろいつもにも増して平和な光景で、兵站基地と出航前のラガーガードの様子が描かれる。基地では萩が出航する伊勢に声を掛ける。「また会う日を楽しみにしている」、飄々とした様子で伊勢と握手する萩の様子からはその後に起こる悲劇を予感させるものは何もない。

 洗濯物をランドリーに担いでいく伊豆と長門がいつものコメディを演じ、戦闘機で帰還した伊勢が艦橋で副長職に慣れてきた安芸に微笑む。伊勢が安芸を自分の後継者に育てようとしていることが分かる光景である。そして、新しい惑星に向けて意気揚々と探査艦ラガーガードは出航する。

dairugger その頃、テレスの前線基地ではラフィットの専横が目に余るものになっていた。「ラフィット、君はなぜ全てを悪意でしか見られないのだ」、ラフィットの疑心暗鬼に苛立ったテレスは腕輪フラッシュ(減点考課ビーム)を部下に浴びせるが、もちろん、そんなことで怯むラフィットではなかった。彼の背後には本星が付いていたのだ。

 可住惑星の発見を優先するテレスと地球艦隊撃滅を主張するラフィットの討議は並行線のまま終わり、ラフィットは会議を中座する。「自分たちの星が滅びるかどうかという危機に直面している時に、まだ銀河制覇などというたわ言を言っている。地球の手を借りても一刻も早く可住惑星を発見すべきなのだ」、本星の惨状を思い、残る幕僚にカポネーロらへの呪詛の言葉を吐くテレスにラフィット艦隊の出撃が伝えられる。本星から睨まれた司令官の彼はすでに無力な存在になっていたのだ。

 「地球が増援部隊を送ってくる前に、あの探査隊の基地は潰しておく、良いな」、旗艦の艦上で地球の兵站基地が増援を要請した通信を傍受したラフィットは予想通りの地球側の動きに得心した笑みを浮かべる。「奴らの活動を停滞させることになるんだ」、一応、彼はテレスの部下であり、地球勢力の牽制はテレスの持論である。ラフィットは地球増援部隊の情報をテレスに送り、惑星Kの地球基地撃滅作戦を開始する。

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目を閉じていると
時の流れをこえて

 惑星Kに血のように赤い月が昇り、基地建設が一段落した兵站基地ではくつろいだ様子で萩と支援隊員が夕食を摂っていた。「何だか、この星を想定して作られたような歌だな」、スパゲッティを絡めつつ、辛気臭い川島和子の歌(わたしは宇宙)にぼやく萩に隊員の一人は、「地球で流行っている歌です」と答える。が、ガルベストンは彼らのすぐ近くまで迫っていたのだ。突然攻撃が開始され、基地は大混乱に陥る。混乱の中、救援を求め、通信機に向かって叫ぶ通信士を萩は制止する。

 わたしは宇宙のパノラマになります

「ラガーガード! ラガーガード! ラガーガード!」

 赤い月が昇る
 ペガサスが飛ぶ


「やめろ! こんなことで彼らをいちいち呼び戻していたら、探査活動は停滞してしまうだろ!」

 今週の言葉は萩司令、そうなのだ、ことここに至るまで、彼らはガルベストンと戦争をやっているつもりはなかったのだ。そのことを思い知らされる言葉である。

dairugger

「司令、、ラガーガードに!」
「連絡してはならん!」

 ラガーガードは探査艦で、彼の艦隊はその支援部隊である。活動は平和的なもので、宇宙を敵と味方に分け、断固として地球側の活動を阻む敵と戦いつつ続けるようなものではなかった。攻撃が熾烈さを増してきたことを見て、萩は全施設の電源カットを命令する。それは同時に通信機の作動をも停止させる措置でもあった。

「明かりだ、明かりが攻撃目標になっている、全施設の電源を切れ!」

dairugger

「司令! ラガーガードに連絡を!」
「いかん! ここは我々だけで死守するんだ!」

dairugger

「しかし、このままではどこにも連絡することができなくなります!」
「いかん! 彼らには銀河探査を続けさせるんだ!」

 ラガーガードの銀河探査という任務にあくまで忠実に、探査艦への連絡を拒む萩、ラガーガードでは超能力者のキーツとキリガッスが出発したばかりの兵站基地に異変を感じる。キーツの連絡を受けた安芸は伊勢に報告し、伊勢は兵站基地に通信を送る。

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「兵站基地、、兵站基地、、こちらラガーガード、、艦長、通信回線を閉じているようです。」
「閉じている?」

 通信途絶に不審を感じた伊勢はラガーチームに出動を命令する。「みんな! 何をしているんだ!」、出動命令を受け、惑星Kのテナントを眺めていたメンバーをウォルターが怒鳴る。ここに来て、キーツの不吉な予感は全クルーの共有するものになっていた。

 あなたの夢にめぐりあえます
 あなたの世界になります


dairugger その頃、兵站基地の戦いは絶望的な様相を呈していた。発進した艦隊と戦闘機は全て撃墜され、基地も破壊されていく。ラガーチームの接近を見たラフィットは管制塔の破壊を命じる。そして、その管制塔では味方の壊滅に呆然とした萩と管制官がおり、隙を見た通信士が再びマイクを取る。

dairugger

「司令! ラガーガードへの通信回路、開きます!」
「やめろ!」
「こんなに犠牲者を出して、まだそんなことをおっしゃるんですか!」

 青い雪が流れ
 蛍火が舞う

dairugger

「人命よりも天体図作りが優先するんですか!」
「貴様ァッ!」

 あなたの夢にめぐりあえます
 あなたの世界になります


 通信士に掴みかかる萩に管制官が組み付く、「司令、止めてください!」、「ええい、放せ!」、萩に突き飛ばされた管制官の手がブレーカーに触れてスイッチが入り、接近するラフィット艦のちょうど目前で、消灯していた基地と管制タワーが煌煌と照らし出される。

dairugger

燃える虹のはてに
オーロラがゆれ

dairugger 「こちらラガーガード、なぜ通信回路を閉じていた?」、通信士がようやく通信機を作動させ、呼び掛ける伊勢の声がスピーカーに流れる。「ガルベストンの攻撃を受けて、全滅に等しい、、」、マイクを取った萩は基地の壊滅を報告する。「何とか、自分たちの手で守るつもりだったが、、」、そこでラフィットが管制塔を爆撃し、彼らは業火に包まれる。

dairugger

あなたの夢にめぐりあえます
あなたの世界になります

 戦いの合間に流れる川島和子の独唱と壊滅する基地の場面は何度見ても戦慄する光景である。戦いの場面の数カットは台詞さえなく、物悲しい歌と共に炎に包まれる基地や撃墜される艦隊など惨劇の様子が延々と映される、いわゆるスクリーンセーバー映像なのだが、断片的な映像でおそらくは数時間に渡っただろう、ガルベストンによる徹底した破壊と殺戮の光景を余すところ無く描き出しているこれは、まさにスクリーンセーバーとはこういうもの、「ザ・スクリーンセーバー」と呼ぶべき映像である(筆者はガンダムとかエヴァンゲリオンとか特定の作品との比較は必要ない限りレビューではしないようにしている)。

 この話はバトルマシン戦など細かい演出も光る話で、20分余りの時間にありとあらゆる工夫が施されている。ダイラガーのターニングポイント、地球とガルベストンの戦いが艦隊同士の小競り合い、鍔迫り合いから星間国家同士の文字通り血みどろの戦い、総力戦に向かう話としてふさわしい話である。

 「ええい、もう銀河探査なんかクソ食らえだ、、」、基地に生命反応がないことを知った安芸は憤激し、「くたばれ! 悪魔!」とガルベストン戦闘機を銃撃する。地球とガルベストン、これまで彼らの間には戸惑いはあっても憎悪はなかった。発進したガルベストンのバトルマシンや戦闘機に安芸とラガーチームは復讐の炎を叩きつける。

 「奴らを叩く、奴らを放っておいては、銀河に平和もないし、天体図を作る意味もない。」

 激戦の末、バトルマシン・ブラーを倒した安芸は打倒ガルベストンを決意する。西暦2200年、宇宙の海に乗り出し、未知の知的生命体との対話と冒険、そしてロマンを夢見た探査艦ラガーガードの旅は終わった。萩の戦死と惑星K基地の壊滅に続いたのは、さらなる破壊と殺戮、地球とガルベストンが死力を尽くし、互いの星の存亡を賭けて戦う銀河大戦である。

 なお、これまで筆者はラガーガードを「探査艦」と呼んできたが、惑星Kの戦いを最後に銀河探査船としてのラガーガードの任務には一応のピリオドが打たれる。以後の同艦は前線基地の攻略艦隊の旗艦であったり、嚮導艦として危険な敵陣を偵察したり突破したりという、いわゆる戦艦としての任務が多くなる。そういうわけで、以降はラガーガードは「探査艦」ではなく、ダイラガーの母艦として「戦艦」と呼ぶことにしたい。そういう点でも、この20話の惑星Kの戦いは探査艦としてのラガーガードの最後の戦いになった物語である。

キャラクター紹介

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パティ・エリントン(CV潘恵子)

 パティ・エリントンはクウラガーチーム、パティマシン(胸の戦闘機)の操縦士である。合体時には最もバトルマシンの攻撃を受ける、ある意味一番危険なポジションにいるパティだが、陽気な性格でチームの雰囲気を和ませており、戦闘機であるパティマシンの操縦技術も確かである。リックラガーチームのウォルターとは仲が良く、ペアを組むことも多い。ウォルターの両親が手紙で気に掛けているところを見ると、両者の関係はかなり進展しているものと思われる。48話で機体に吸着した機雷が爆発して負傷するが、超合金でできているラガーマシンは丈夫で、機雷の爆発くらいではマシンは無傷でパティも短期間の入院くらいで済んだようである。全員入院のリックラガーチームと異なり、クウラガーチーム唯一のサーチ病院の入院者である。

今週のバトルマシン(2分0秒)

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武器:武器:肩ビーム、鉄拳ハンマー、巨大ばさみ、ビーム剣

 ラフィット隊のバトルマシン第6号「ブラー」はこれまでのバトルマシンとは系譜の違うバトルマシンである。従来バトルマシンはテレスの前線基地で開発され、各艦隊に配備されてきたが、テレスのレームダック化とラフィットの権勢の伸長は彼にガルベストン本星建造のマシンを与えたようである。すなわち、ブラーはその性能仕様が限りなく後のバトルアタッカーに近く、バトルマシン初のビーム剣装備など、次世代機の装備が用いられている機体である。

dairugger 装備水準もこれまでダイラガーと交戦してきたバトルマシンのまさに集大成と言った趣きで、巨大ばさみのような原初的な装備から2足歩行、肩のビーム砲までの装備を網羅し、ビーム砲の砲撃はあのダイラガーを遥か彼方まで吹き飛ばすほどのものである。これは当たり所によっては14話に登場したマシンDのビームのようにダイラガーは分解し、再合体を余儀なくされた可能性が高い。が、ダイラガーにとって胸のパティマシンはどんなにビームやミサイルを受けても壊れない、同機でいちばん丈夫なパーツである。

dairugger なお、この話では主操縦士の安芸がブラーの攻撃で合体前に撃ち落されて気絶したため、途中までキーツが主操縦士としてダイラガーを操縦している(合体までキーツである)。やはり全マシンが揃わないとダイラガーは戦闘力を発揮できないのか、強力マシンの前に苦戦の展開が続いたが、ブラーは回復した安芸の合流後も強く、味方の戦闘機に誤射されて怯んだところを斬りつけられ、ラガーソードの刀の錆となった。やはり新装備が多すぎ、操縦者が慣熟していなかったことが敗因と思われる。なお、ブラーの破壊後、ラフィットは戦闘記録を本星に送っている。やはりこの機体は次世代機のバトルアタッカーの試作機で、通常の機体とは異なっていたと思われる。なお、この機体は調達経路が異なるため、スピーチ機能は装備されていない。

筆者コメント

 やはり何度見ても壮絶な話である。物悲しく流れる川島和子の歌といい、これは作っているスタッフはお子様向けの極彩色の巨大ロボットのドタバタ活劇なんかではなく、本格的な戦争映画、「大日本帝国」とか「二百三高地」のノリでこれを作っていたのではないか、そう思わせる鬼気とした出来栄えである。だいたいヤマトのスキャットを歌った川島和子なんかをバックコーラスに持ってくるあたりからして違っているし、これはどう見ても「お子様向け」の話ではない。そんなレベルは完全に超えている。

 本当の話、筆者はアニメSFなんかを見て目頭を押さえるとか感動するといったことはあまりないのだが(筆者は他に機動戦士Zガンダム、ZZガンダム、ガンダムAGEのレビューを挙げているが、ハンカチが必要だと思ったことは一度もなかった)、この作品の場合は何度かそういう場面があり、20話などはその代表といえる話である。

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