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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第18話「一触即発」

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これでいいのか! ラフィット隊長さえ来なければ!

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第15恒星系第3惑星(惑星J)
 ラガーガードの探査予定にあった地球の洪積世に相当する発展段階の惑星(惑星J)、大型のシダ植物が繁殖し、恐竜に似た生物が棲息している。時折大きな竜巻がある。伊勢の申し出を受け、地球とガルベストンが共同探査を行った。

あらすじ

 マリウス艦隊と共同して第15恒星系の探査を開始した探査艦ラガーガードと支援艦隊、共同探査は友好的なムードで進められたが、ラフィットの艦隊が到着したことにより、地球とガルベストンの関係は再び険悪化する。

見どころ

 16話のバラタリアの反乱はやはり大きな話で、この事件を受けてジゴローネが基地にやってきたことでガルベストン側は大きく変化する。このコラムでも何度か説明しているが、少なくとも18話までの流れでは地球とガルベストンの戦いは「戦争」ではなく探査艦隊同士の小競り合いで、その流れが変化するのがこのあたりからの話である。本星の介入でテレスの司令部はレームダックと化し、以降は強硬派のラフィットが現場を仕切っていく。

ラフィットの背後には本星の意向があり、これには彼に反発を感じている諸将も従わざるを得ない。そして、それまで惑星探査隊長としてナンバー2の地位にあったドレイクは降格され、地球艦隊の監視人という、およそ惑星探査とはかけ離れた任務に追いやられる。しかし、ジゴローネも言っていた、滅亡寸前の本星のために可住惑星を探すという重大な任務はどうなったのか。いくらラガーガードやダイラガーに勝っても、その間に彼らの本星が滅びてしまっては元も子もあるまいに。

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dairugger第18話は前話で到着した第15恒星系でラガーガードとマリウス艦隊が共同で探査を開始するところから始まる。両軍のムードは友好的である。「あれは恐竜の一種だ」、惑星探査に一日の長のあるガルベストンは士官がラガーチームに惑星の自然を説明している。これまでの戦闘が壮絶だっただけに、微笑ましささえ感じる光景である。しかし、ラフィット艦隊の到着で状況は一変する。「貴様もテレス病に掛かっておるな!」、共同探査の成功を報告するマリウスにラフィットは直ちに探査の中止を命じる。「これでは何もかもぶち壊しだ」、ラフィットに翻意を促すべく、マリウスはラフィット艦を訪れる。

dairugger「安芸、これで共同探査は打ち切りだ」、憤懣やる方ないといった口調で探査の中止を安芸に伝えるガルベストン士官、続く命令は基地建設のための自然破壊だった。破壊行為の中止を求める安芸に、共同で惑星探査を行なっていた士官はこう答えるのだった。「それは分かる。しかし、我々は探査隊長の指示を受けている。勝手に君たちの指示に従うことはできないのだ」、安芸に恐竜について教えた士官が自然破壊の意味を知らないわけはない。しかし、彼らは鉄の規律を誇るガルベストンの軍人なのだ。

 「涙を飲んで、ラフィット隊長に従うしかない」、自然破壊の中止を訴えていたのは安芸たちばかりではなかった。探査隊長のマリウスもラフィットに破壊の中止を懇願していたのだ。しかし、ラフィットは耳を貸さず、ラガーチームとマリウス探査隊はなし崩しに戦闘状態に入る。マリウスがバトルマシンを出動させたことで、戦いはさらに拡大する。

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「これでいいのか! ラフィット隊長さえ来なければ!」

 今週の言葉はマリウス隊長、バトルマシン同士の戦いによる自然破壊を恐れた地球側は第15恒星系の放棄を決め、ガルベストンの勝利を許す。逃げ去る地球艦隊に高笑いするラフィット。「これでまた、平和的に探査を進めることが不可能になってしまった」、マリウスが嘆息したように、バトルマシンを2機も投入した彼らはダイラガーとの戦いには勝った。しかし、それは勝利と呼ぶにはあまりにも虚しいものであり、滅び行くガルベストン本星に取っては何の益もないものであった。

dairugger「いったい、何をしているのかしら、私たち」、帰還した安芸にカウンターで水割りを渡した加賀は呟く。ラガーガードは銀河探査のための船ではなかったのか。やっと本来の任務に専念できると思えた矢先の15恒星系の戦闘、平和への道は閉ざされ、消沈した彼らは物語のターニングポイントである悲劇の星、惑星Kへの進路を取る。

キャラクター紹介

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加賀ハルカ (CV飯塚はる美)

 カイラガーチーム、加賀マシン(右足)の操縦士で黒髪長髪の美女。中盤から後半にかけては出番も多くなり、特にチームリーダーの安芸との絡みが描かれる。育ちの良さを感じさせる優雅な物腰から、後に登場するガルベストンのサークと並ぶダイラガーの二大ヒロインという説もある。14話ではエンディング歌「愛を伝える旅」を独唱するシーンが描かれ、休憩中のラガーチームに美声を披露している。クウラガーチームの陸奥とは訓練学校の同期だが、背丈は加賀の方が高いため、どう見ても加賀の方が姉にしか見えない。

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マリウス

 テレス麾下の探査隊長の一人(ハト)。第15恒星系でラガーガードと接触し、テレスの許可で共同探査の申し出を受諾する。探査は友好的なムードで進められたが、途中介入したラフィットのせいで共同探査は中止、マリウスもバトルマシンでダイラガーと戦うことを強要される。バトルマシンが撃破された後はラフィットに愛想を尽かし、本来の探査活動のために他星系に移動する。そのせいか、ガーロ、ローランと並び、画面に登場しつつ戦死しなかった数少ないガルベストンの隊長。

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惑星Jの恐竜

 自然豊かな惑星Jには恐竜も棲息している。確認されているのは首長竜と翼竜の2種類だが、首長竜はエラの付いている個体が雄、付いてない個体は子竜ないし雌と思われる。

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今週のバトルマシン(マシンE:1分10秒、マシンF:2分3秒)

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武器:胸ビーム

マシンEはマリウス隊のバトルマシンで、ボール状の躯体に鉄球状の手甲を持つ2本の腕とバトルマシンには珍しい2本の足を持つ。中央にガルベストン巡洋艦から転用した(色違い)ビーム砲を持ち、歩行状態でも飛行中のクウラガーに追いすがるなどかなり俊敏な運動性能や軽快な空中性能を誇る。が、この機種は初期のグラモン艦隊のマシンと同じ惑星探査用の準バトルマシンと思われ、両腕の鉄球は戦闘では全く用いられなかったため、これは武器ではなく空中飛行用のバランサーと思われる。ただ、運動性重視の機体ではあるが、上昇力も空中戦能力もダイラガーより劣っている。ダイラガーの基準では軽便な武器であるショットアローを受けて戦闘不能に陥り、墜落して擱座したところをラガーソードで短冊斬りにされて爆散する。

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武器:爪パンチ、クラッシャークロー、足キック

 ラフィット隊のバトルマシン第4号のマシンFは一見普通のバトルマシンだが、ガルベストン前線基地ではかなり力を入れて開発した格闘戦闘用のバトルマシンである。まず、そのスタイルは均整が取れており、初期のバトルマシンでは考えられなかったこととしてクローを用いたダイラガーと互角の格闘戦が可能である。続く19話の惑星Kでは同型機が登場し、やはりダイラガーに撃破されるが、基本的に用途別の一品物であるバトルマシンにおいて、このような同型機の存在は同時期に地球側で進行していた計画と同じ、前線基地におけるバトルマシン量産計画の存在を推認させるものである。なお、18話ではマシンFはその性能を発揮できずに操縦ミスで失われてしまうので、同マシンについての解説は第19話で行いたい。18話では良いところがなく、竜巻に巻き込まれて操縦不能に陥り、その際にエンジンでも壊れたのか、ダイラガーキックに蹴られた衝撃で爆散する。

バトルマシンの系譜

dairugger マシンFはそのフォルムからドレイク隊に配備されていたマシンCの系譜に属すると思われる。マシンCは3本足だったが、Fタイプはより進歩した2本足のフォルムになっている。同様の2本足フォルムはマシンEも同じであることから、この時期にガルベストン設計局は格闘戦技に不可欠な、ダイラガー同様の2足歩行の技術を確立したものと思われる。マシンCは火力重視型、Fタイプは対バトルマシン戦用と、先駆的マシン「ゲド」の技術を基に前線基地では2タイプの開発が進められていたとも考えられる。

dairugger 以前のレビューではマシンCは地球要塞に攻撃を加えたマシンAの改修機ではないかと記述したが、マシンAは後にバトルマシンの性能試験用に基地に残されていることが確認されており、これは別の機体である。おそらく当レビューで指摘した構造の脆弱性から、マシンAは必要とされる性能機能を満たしていなかったものと思われる。



dairugger 毎週毎週形を変えつつもガルベストンのバトルマシンは進化を続け、それはやがて対ダイラガー用の戦闘ロボット、バトルアタッカーの完成として結実することになる。

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