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 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

 第17話「アシモフ帰還命令」

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いいか、彼らと会えばすぐ戦闘になると思う。
その気持ちを変えるんだ。

あらすじ

 第15恒星系に向かうラガーガードと支援艦隊に銀河警備軍本部から連絡が入り、艦長アシモフが解任されて警備軍本部に転任することが決まる。一方、ガルベストン側は憲兵隊長ジゴローネが司令部を訪問し、ラフィットらの釈放とテレスにガルベストン本星の危機の深刻化を伝える。新艦長伊勢の下で恒星系に到着したラガーガードはガルベストンのマリウス探査隊と接触する。

見どころ

dairugger アシモフの転任というのは、当時のアニメでは良くあった話で、制作本数が多かったため声優の都合で降板というのはありそうな話である。ただ、ダイラガーの場合は艦長は元々影が薄く、キャプテン伊勢の方がはるかに目立っていたこと。また、アシモフ自身地球に転任後も出羽の参謀として出番がそれなりにあるところを見ると、そういう事情ではないかもしれない。いずれにしてもこのあたりの事情はストーリー上の都合で最初からそうだったのかそれ以外なのか、30年後の現在ではほとんど分からない。

 ラガーチームが全員でダイラガーの主題歌を歌うなど、アシモフ送別会のような17話であるが、ガルベストン側では結構大きな動きがある。憲兵隊長のジゴローネが前線基地を訪れ、テレスに惑星探査の進展を尋ねる。最もそれは表向きで、実は前話の反乱事件を受けて本星の総司令カポネーロの意向をテレスに伝えに来たのだ。ジゴローネは作品では司令官級の人事にしか登場しないキャラクターで、司令官の任命というのはガルベストンでは前話でテレス自身が言っていた通り皇帝が行うので、彼は皇帝の使者である。

dairugger そういう人物なので、高官とはいえ一臣下の総司令カポネーロ(超タカ)が司令部の用向きでこの憲兵隊長を使うことはできず、それをわざわざ通すため、こういう回りくどい来訪になっている。この辺一見複雑だが、戦前の天皇体制を知っている藤川桂介なら良く知っている話であるし、話にも生かされている。ジゴローネはバラタリアに同調して捕らえられたラフィット以下反乱分子の釈放をテレスに指示し、テレスはラフィットを釈放する。さらにテレスはドレイクを降格させてラフィットを後任の惑星探査隊長に任じ、本星からの追及をかわそうと試みる。そして用向きを終えたジゴローネは一冊のファイルをテレスに手渡す。

「これはガルベストン星の状況をまとめたものだ、あとでじっくり検討したまえ。」

 「君のような甘っちょろいことを言っている状況でないことが分かる」、再び可住惑星の発見を命じ、テレスの肩を叩いて視察を終えたジゴローネだが、この一連のやり取りでガルベストン本星は崩壊が進み滅亡の危機にあること、テレスら前線基地とその軍団は地球やダイラガーとの戦闘ではなく、本星に代わる可住惑星を発見することが任務であることが明らかにされる。が、その任務にラフィットなどが適格者かといえば、そうでないことがすぐに明らかになる。「邪魔な者は葬れ、これがガルベストンの意思だ」、虜囚の身から新探査隊長に抜擢され、隊長らと共に過去の戦いを検討したラフィットは友好ムードを一蹴し、これまで数多くのバトルマシンを葬ってきたダイラガーと地球への敵愾心を露わにする。

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「いいか、彼らと会えばすぐ戦闘になると思う。その気持ちを変えるんだ。」

 新艦長伊勢の下、第15恒星系に接近したラガーガードは同じく接近するマリウス探査隊と接触する。伊勢が艦長・探査隊司令に昇格したことにより、チーフたちが交替で副長を務めることになり、ガルベストン出現でラガーチームの出動を命じる安芸を伊勢はたしなめる。この態度はラフィットとは対照的である。話し合いで衝突を回避してきたという自負のある伊勢は敵方にも通じ合える人物がいることを知っていたのだ。申し出を受けたマリウスは共同探査の申し出を受諾する。しかし、友好的なムードもつかの間、彼らのいる惑星に、地球への復仇を目論むラフィットの艦隊が迫っていた。

キャラクター紹介

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ジゴローネ

ガルベストン本星直属の憲兵隊長、本星でもかなりの高官で、ガルベストン皇帝の意向(主として人事)を前線司令部に伝える際に登場するメッセンジャー。その後も何度か登場する。テレスの父テスと面識があるらしく、ガルベストン本星の近況をテレスに伝える。メッセンジャーという性格上、テレスに対する態度は中立だが、おそらく本星では主流派のタカ派の人物と思われる。

今週のバトルマシン(0分)

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ガルベストン快速艦

 今回もバトルマシン戦はなかったため、本来ならダイラガーの機能紹介コーナーという予定だったが、ダイラガーなんかよりもっとすごいメカが出てきたので紹介する。ダイラガーの場合、艦船の航行は日本のSFでは珍しいスタートレック型の空間歪曲型(ないしフィールド型)ワープである。

dairugger このタイプのワープは超光速での移動とは、船の周囲の空間と他の空間の相対的な見かけ上のものなので、船自身は光速移動しておらず、乗員は特に自身が超光速航行をしていることを意識していないが、宇宙戦艦ヤマトなど日本の大部分のSFで用いられているのはこれとは異なるワームホール型のワープである。


dairugger ヤマト型のワープは目標の空間までの間に一種のワームホールを作り、そこを飛び越えて時間と空間を一挙に跳躍するものだが、概して空間歪曲型より長距離、高速の移動に適しているとされる。また、テクノロジー的にも歪曲型より高度だというのがSF界の理解である。銀河英雄伝説も初期の映像(アニメ)は歪曲型っぽかったが、後にワームホール型と判明している(小説の描写もそうである)。


dairugger ダイラガーの場合は双方が用いられており、今回初登場のこのガルベストン快速艦は番組初のワームホール型ワープの登場艦である。同様のテクノロジーは地球側では用いられておらず、また、ガルベストンでも通常艦には用いていないので(一部それらしい絵はあるが、作画ミスの疑いが濃厚である)、これは作品世界でも特殊テクノロジーと思われる。ただ、作品世界では何でも持っている探査ロボ、ダイラガーにはこの機能はあるらしく、後の回で「リミットワープ」という跳躍航法を披露する回がある。ダイラガーは普段は普通に超光速航行をやっているので、これは(おそらく限定された「リミット」タイプの)ワームホール型ワープの機能と思われる。

dairugger 歪曲型ワープとワームホール型ワープを併用する作品は日本では皆無で、アメリカでも11年後、「スタートレック・ディープ・スペース9(DS9)」の放映まで待たなければいけなかった。この快速艦の描写は、いかにダイラガーが当時としても先進的な作品だったかが分かる一コマである。

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