機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー
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■第5話「実験惑星の攻防」
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たとえ相手が誰でも、悪条件の星を改良しようと 努力している所へ踏み込んではいけないんだ。 誰だってそんなことをされたら怒るだろう? |
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第11恒星系第4惑星
探査船ラガーガードが到着した2つ目の惑星、直径は6400キロ、二酸化炭素の分厚いガスが惑星を覆い、昼は気温560度、夜はマイナス120度の金星に似た過酷な環境の惑星である。ガルベストンはここに藻類を撃ち込み、可住惑星に改良しようとしていた。 |
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■あらすじ
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放電トンネルを抜け、目的地の第11恒星系第4惑星に到着したラガーガードは惑星の過酷な環境に驚く、しかし探査の過程でリックラガーチームは惑星で生育できるはずのない謎の植物群を発見する。
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■見どころ
目標の惑星に接近し、例によってガルベストン軍の襲撃を受けた安芸たちは勇ましくラガーマシンで出撃していく。しかし、それを見送るラガーガードの科学者サーチは「むだなことを」と嘆息するのだった。ラガーチームとサーチの間に生じる亀裂。しかし、惑星の探査が進むにつれ、サーチは藻類の発見と撃ち込まれたロケットの残骸から、ガルベストン軍による惑星の改良実験の存在を突き止める。
作品では強面の軍国主義国家であるガルベストンだが、軍人ばかりで国家が成り立っているはずもなく、中には科学者や良心的な市民もいるはずだ。この種のドラマでは忘れ去られがちな、場合によっては故意に無視されていた視点に迫る回である。伊勢や「むだなこと」事件でサーチと対立していた安芸に丁寧に改良実験の過程を説明するサーチの言葉は異星人にも彼と同じく優秀な科学者がいるという確信に満ちている。そしてガルベストンの科学者たちの努力を認めたサーチはアシモフ艦長に惑星からの退却を進言する。
「彼らは星の環境を変える努力をしているんだ。それを横取りするようなことはしてはいけない。我々は星の略奪者ではないんだ。」
サーチの進言を受け、艦長アシモフはラガーガードを転進させる。そして退却した地球艦の様子を見たドレイクは「奴らは侮れんぞ」と言い残す。「奴らは戦いに敗れて去ったのではない、我々がこの惑星の改良実験をしていることを知って、あえて引き下がったんだ」、ドレイクの「侮れない」という言葉は相手を認めた言葉である。「進むか退くか、重大な決意をしなければならない時もあるんだ」、ラガーガードでは伊勢はダイラガーに撤退を命じ、艦は第11恒星系を離脱する。「彼らに銀河征服の拠点を与えてしまったのかも」、不本意な退却で窓辺に佇む安芸をサーチは「いや、これで良かったんだよ」と諭す。
「たとえ相手が誰でも悪条件の星を改良しようと努力している所へ踏み込んではいけないんだ。誰だってそんなことをされたら怒るだろう?」
たとえ不器用でも、他人の努力は認めなければいけない。サーチの言葉は当たり前のことである。しかし、その当たり前のことが当時も今も守られているかといえば、30年後の現在でも疑問がないとはいえない。繁栄に酔い、驕慢と享楽主義の価値観が蔓延しつつあった80年代。この作品の制作者たちはどんな気持ちでこの挿話を作ったのだろうか。
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■キャラクター紹介
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ドクター・サーチ |
探査船ラガーガードに乗船する中年の科学者、艦の艦医でもあるが、地質学などにも造詣が深く、ラガーチームの負傷の手当てから惑星の地質調査までありとあらゆる分野で活躍するスーパー科学者。医師については後にはガルベストン兵士の診療まで行うようになるが、万能の彼には異星人の診察は特に問題もなかったようである。ほぼ作品の全編に渡って登場し、艦長アシモフや伊勢、ラガーチームの知恵袋として活躍する。
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■今週のバトルマシン(2分10秒)
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武器:両肩キャノン砲、巨大ばさみ、くさび形ハンマー |
実験惑星でダイラガーを迎え撃つドレイク隊バトルマシン第2号、前回の擬似ロボット(アシモ)型から今回は普通のバトルマシンに戻ったようである。4本の足に巨大なカニバサミも復活し、上体に装着された適当な二門のビームキャノン砲がある。足が長いなどどことなくルックスが二年前の「伝説巨神イデオン」に登場するバッフ・クラン軍の敵メカに似ているが、火星人襲来の火星人に似ていなくもない。右腕のハンマーからはすでにお馴染みになった電気ショックを発する。ダイラガーの合体後、およそ1分40秒でラガーソードの露と消えた。しょせんハンマーだハサミだなんて武器でダイラガーに勝てるはずはないのである。
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■新合体フォーマット(30秒)
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ドラマ性重視でロボット戦があまりにもあっけなさすぎるという(スポンサーからの)批判に応え、今話から合体シーンが一部変更されている。赤字部分が変更点。
総合体時間は変わらないが、合体後のファイティングポーズに安芸マナブの掛け声が追加され、より威勢良くなっている。貴重な放映時間を割かずに演出効果を上げ、スポンサーの要望を満足させる東映スタッフの大人の対応である。あと、この回から透過光の使用も増え、番組の制作予算がアップしたことが察せられる。
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