MUDDY WALKERS 

dairugger

 機甲艦隊ダイラガーXV(1982) 各話レビュー

「機甲艦隊ダイラガーXV」の第1話は登場するキャラクターやメカを紹介する話です。当レビューでは最初に「今週の言葉」としてその話を代表する台詞を抜き出し、続けて場所の紹介、あらすじ、レビュー本文といった体裁を取っています。「今週のバトルマシン」は毎回登場するガルベストン側のメカを解説しています。また、必要に応じて文章下にトピックを書き加えています。

 第1話「激突する銀河」

dairugger

我々にとって銀河系を知るということは、
我々自身、つまり、地球を知ることになるんだ。

dairugger

第8恒星系可住惑星(アキレウス)
 探査船ラガーガードが発見した第8恒星系の可住惑星。大きさは地球の0.5倍で豊かな水と生態系を持つ。ラガーガードはここでガルベストンと最初の接触をし、 以降の銀河大戦の端緒となる。後にラガーガード艦長アシモフにより「アキレウス」と命名される。

「なぜ今ダイラガーか」

 シナリオの創作技術というのはこの所劣化の一途を辿っていて、しかも最近の傾向ではなく、すでにゼータガンダムの時代から劣化は進んでいました。これは我々視聴者サイドに も責任があるのですが、作品を的確に評価しうるレビュアーが育っていなかったことも一因です。メジャーな人だからとか、マスコミで人気だからという理由だけで作品を評価すると、その結果は貧しいものになります。
 世の中が「めぐりあい宇宙」で狂奔していた1982年、テレビ東京系列でひっそりと流されていたダイラガーは実はシナリオの質ではガンダムを 凌ぐ佳作です。重厚な世界観の構築、無駄のない台詞回し、緻密に区切られた脚本など、作品には当時絶頂期の東映映画陣のノウハウがギッシリと詰まっています。また、作風が人間ドラマを中心としており、当時流行だった超能力やニュータイプといったオカルト概念を一切用いずに人間と人間との対決劇でドラマをまとめていく手法はこの作品を今視聴しても古 びないものにしています。また、当時制作に携わった制作者たちがその時代をどう捉え、どう解釈し、どうやって作品に挿入していくかという技法の点でも高度な作品で、現在でこそ紹介する価値のある作品です。

あらすじ

 西暦2200年、地球を出て半年、外宇宙を探査する「ラガーガード計画」の探査船ラガーガードは銀河の深淵を航行していた。宙図にある第8恒星系に到着したラガーガードとそのクルーはコンバットマシンで武装する謎の軍団と遭遇する。

見どころ

 西暦2200年、地球を出て半年、銀河宇宙を航行する探査船ラガーガード号はすでに3つの恒星系の探査を終え、予定表にある第8恒星系の探査に向かっていた。惑星に向かう探査船のレーダー手は右舷のレーダーに不信な影を捉える。「またカラス(宇宙塵)じゃないのか?」、これまでの調査では可住惑星の発見はなく、銀河宇宙の広大さと知的生命体の存在可能性の低さにクルーの間では倦怠感が広がっていた。ラガーガードの食堂では探査では主力となるラガーマシンの操縦士たちがトランプやコーヒー片手に出番の少なさを嘆いている。

dairugger  銀河の深淵に進出し、銀河宇宙図の作成を目指すラガーガード計画、ごく平和的なミッションには地球の他、地球と同盟を結んだサラ星、ミラ星両星のクルーも参加している。サラ星、ミラ星は22世紀になって発見された、ほぼ地球と同じ文明レベルを持つ地球の友好星だが、他に知的生命体の存在する星は見つからず、探査には新たな出会いを期待する目的もあった。クルーと談笑しつつ、ミラ星人のキーツは前方に何か不吉な予感のようなものを感じる。レーダーの影がそのまま行くと探査船と会合することから艦長アシモフは念のためラガーチームに出動命令を命じる。が、不信な影はチームが出動する前に消え、アシモフは命令を撤回する。そして探査船は第8恒星系に到着する。今度こそはとラガーチームが探査に出動する。それは予想以上に良好な環境の惑星だった。初めての可住惑星の発見に沸くクルーたち、しかし、そんな彼らを宇宙の一角からじっと見ている目があった。

dairugger  安芸マナブ率いるクウラガーチームは探査中に謎の戦闘機からの攻撃を受ける。自衛のためやむなく反撃するラガーチーム、その頃、探査船ラガーガードのレーダーは再び不審な電波を探知していた。カイラガーチームのキーツは惑星に接近する前に感じた予感が現実となったことを知る。そして彼らは謎の敵を退け、惑星に基地を建設する。



「我々にとって銀河系を知るということは、
  我々自身、つまり、地球を知ることになるんだ。」


 今週の言葉は出羽総司令、探査船から報告を受けた地球の銀河警備軍本部では平和的なミッションのはずが謎の異星人との交戦になったことで、計画の続行か撤退かで議論が交わされていた。撤退を主張する多くの幹部たちに対して長官若狭は計画の続行を決定する。若狭を補佐する出羽は計画続行の意義について一同に力説する。こうしてラガーガードの探査継続が決定される。

dairugger  一方、謎の電波の発信源であり、また、ラガーチームを攻撃した敵軍でもある謎の艦隊は地球以外に可住惑星を探し回るガルベストン帝国の艦隊だった。自分たち以外に銀河を動き回る知的生命体の存在を不快に感じた隊長のラッカルは増援を得て地球基地を再攻撃する。出現した敵のコンバットマシンに対し、ラガーチームは探査機15機が合体して最大の攻撃力を誇る巨大ロボ「ダイラガー」に合体して応戦する。

 ”To baldly go where no man has gone before.”
 (力強く進め、前人未到の彼方へ)

 巨大ロボット活劇というのはこの作品が放映された1982年でもすでに古いフォーマットでナンセンスというのが通り相場だったのですが、この作品はその辺を踏まえており、ロボット活劇というフォーマットは踏襲しつつも、その枠内でできるだけ本格的、重厚なドラマを作ろうとしている所に特徴があります。上のフレーズはこの作品から5年も後のスタートレック・ネクストジェネレーション(TNG)の標語ですが、82年のこの作品を見てみるといくつかの点で先取り、より先進的な部分のあることに気づくことになります。「ロボットアニメ=子供向け=幼稚」というフォーマットに凝り固まってしまった人には、こういう作品は受け付けないものがあると思いますが、それは固陋な見方で、台詞回しなど細かい所を見てみると、なかなかどうして下手な小説顔負けの格調の高い表現や無駄を省いた言葉が用いられており、そういう点でも30年後の現在に見てみる価値のある作品です。

キャラクター紹介

dairugger

安芸マナブ (CV古川登志夫)

 クウ・ラガーチームのチーフで物語の主役、ラガー1に搭乗し、合体時にはダイラガーの操縦士として活躍する。血気盛んな典型的なロボットアニメヒーローで戦いの最中に上官伊勢の命令に背くこともしばしばである。物語を通じた彼の成長も作品の見どころの一つである。

dairugger

ラッカル (CV銀河万丈)

 好戦的なガルベストンの隊長、後の描写から察するに司令テレスに次ぐ前線司令部のナンバー2(惑星探査隊長)、前線司令部は可住惑星の発見が主な任務だが、ラガーガードを発見するや否や戦闘を仕掛け、上官テレスの制止も無視して戦線を拡大していく。

dairugger アキレウスの魚
 良好な環境の第8恒星系可住惑星(アキレウス)の海に棲息する魚、大きな唇はハタ科の魚に似ている。

今週のバトルマシン(3分15秒)

dairugger

武器:ビーム砲、巨大ばさみ

 本邦初登場のガルベストン側バトルマシン。地中から出現し、4本の足に合体したダイラガーをも吹き飛ばす強大なパワーを誇る。上体が180度回転し、死角のなさをアピールするが、やはりルックスからしてダイラガーの敵ではなかった。後のタイプと比べると戦闘よりも本来の任務である惑星開発に適したマシンだと思われる。なお、ダイラガーとの交戦時間は3分15秒だが、合体の場面が30秒、艦隊戦の場面が1分以上あるので、実際の活躍時間は1分半ほどで撃破されている。これはドラマをメインとしたこの作品ではごく普通の光景である。型式名は一応バルカム3(機甲艦隊ダイラガー大百科事典)と呼ばれるらしいが、ほとんど一話でやられることの多いこの話ではどうだっていい名前である。

用語解説

dairugger

ダイラガー
オープニングカット

―――かつて、人間は海に青春を賭けた。7つの海にはロマンと野心が、冒険心と功名心が炎と燃えて激突していた。そして今、西暦2200年の若者は宇宙の海に挑む。そこには、我々の想像を超えた世界が、待ち受けているのだ(ナレーション)。

dairugger

銀河の青春(オープニングテーマ)

作詞:藤川桂介/作曲:横山菁児/編曲:横山菁児 歌:川津恒一

海へ行 こうぜ はてしない海へ
さかまく波も 子守唄
旅立て若者 淋しかったら
燃え立つ憧れ だいて行け
ダイラガー それが青春
ダイラガー それが それが愛
若い命が 戦いぬくと
宇宙(そら)とかわした約束だ


dairugger

探査船ラガーガード

 ダイラガーの母艦である全長400メートルほどの大型宇宙船、戦艦ではなく探査船のためあまり武器は装備していない(後にパワーアップされ戦艦並みの武装を持つようになる)。探査マシンとしてダイラガーを搭載している。内部はかなり広く、ラガーマシンの格納庫の他、クルーたちが集う食堂や病院、研究所や郵便局、工場、ランドリーなど小都市並みの施設を持っている。ラガーメンバーの他、数百名のクルーが乗船しており、各々が各セクションのエキスパートである。艦長はディック・アシモフ、副官兼ラガーチーム指揮官(キャプテン)として伊勢シンジが乗艦している。

dairugger

合体ロボ「ダイラガー」

 15機のラガーマシンが合体して完成する地球側の巨大ロボ(全長60メートル)。元々戦闘用に作られたメカではないがガルベストンのバトルマシンに対抗し得る唯一のマシンである。地球側には1機しかないが、作品後半までガルベストン側からは「地球のバトルマシン」と呼ばれている。

三惑星連合
 地球と太陽系近辺のサラ星、ミラ星の三惑星が同盟を結んで成立した恒星間国家、首都は地球に置かれ、自衛軍として銀河警備軍がある。ラガーガード計画を推し進め、ダイラガーとラガーガードを銀河系中心に送り込む。

ガルベストン帝国
 第8恒星系でラガーガードが遭遇した謎の宇宙艦隊、母星や基地の所在等詳しいことは一切不明である。青色の肌に赤い目の地球人とは異なる人種であり、指揮官はマントに鎧のような戦闘服を着用している。下級兵士は宇宙服を兼ねた防護ヘルメットを常に着用しており、軍事国家であることを伺わせる。強力な戦艦の他、小型戦闘機やバトルマシンで武装しており、特に各艦隊に一台配備されているバトルマシンは地球艦隊を大いに苦しめた。最初に遭遇した艦隊の指揮官はラッカル、後に上官のテレスや他の将星も登場し、地球側以上に個性的なキャラクターで視聴者を惹きつけた。

銀河警備軍
 ラガーガードのクルーやダイラガー操縦士が属している三惑星連合の軍事組織、ガルベストン側からは地球艦隊と呼ばれている。宇宙要塞を持ち、戦艦など数百隻規模のかなりの艦隊を擁している。銀河で唯一ガルベストン軍に対抗し得る宇宙戦力。本部は地球に置かれているが幹部は地球人、長官の若狭や総司令の出羽など日本人が多いようである。

機甲艦隊
 銀河警備軍の宇宙艦隊、ガルベストンに襲撃されたラガーガードを救援に駆けつける。指揮官は赤城司令、ガルベストン艦隊に対抗できる戦力を持つ。

ラガーガード計画
 銀河の宇宙図を作成し、未知の生命体との交流を目的に銀河警備軍を中心として探査船を派遣する三惑星連合の計画。中心となる母艦ラガーガードのクルーは各惑星から選抜されている。征服や侵略を目的としないという目的はそういう目的でない敵手であるガルベストン側からは羨望と嫉視の目で見られており、「平和の使者のような素振り」、「いいカッコ付け」、「偽善者」などと揶揄されている。

ラガーマシン
 ラガーガードに搭載されている15機の探査マシンの総称、最初はラガー1とか5とか呼ばれていたが、機数が多すぎて混乱するため、後は「アキマシン」、「パティマシン」など搭乗者の名前で呼ばれるようになる。搭乗者は陸海空の3つのチームのどれかに属しており、各々チーフと呼ばれる指揮官がいるがクウ・ラガーチームの安芸マナブが全チームの指揮官である。ほか、カイ・ラガーチームのチーフとしてミランダ・キーツ、リック・ラガーチームにウォルター・ジャックがおり、各々のチームを束ねている。

バトルマシン
 各艦隊に1機配備されているガルベストン側の決戦兵器、ダイラガー同様の規格外の戦闘力を持つ兵器であり、ダイラガー以外の宇宙艦隊や戦闘機ではほとんど対抗できない。地球側のバトルマシンであるダイラガーとの戦いは作品の見せ場の一つである。各前線基地に工場があり、一台一台手作りで組み立てられている。発進の際にはテーマ曲が鳴り、眩しい透過光と両腕を挙げてパワーを誇示する演出により強力な兵器であることが示唆されている。

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇