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 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第12話「絶体絶命!! オリオンの願い星、地獄星」


あらすじ (人類滅亡まで、あと308日)

 展望室で星を眺めて、オリオン座の星の一つに願いごとをする森雪。その姿を見かけた古代は、何をしているのかと問いかける。そんな中、突然ヤマトは航行に支障を来す。超磁力バリアによって、行く手が阻まれてしまったのだ。
 バリアはデズラーの仕掛けた罠で、ヤマトはバリアを避けて前進すれば赤色巨星のコロナに焼かれ、下がればガス生命体の餌食となる、という八方ふさがりの状況に追い込まれる。進退窮まる中、沖田艦長は前進を命じ、ヤマトは立ち上る赤色巨星のコロナを回避しながら進んでゆくが・・・

コメント

 ヤマトは地球を出て約2か月。宇宙の旅にも慣れ、自動航行で第一艦橋の乗組員は休息のひと時を味わっている。そんな中、今後にかかわる情景が描かれる。その一つは古代に対する森雪の秘めたる思いである。展望室から見えるオリオン座の三ツ星の一つ、アルファ星に雪は願いをかけていることを明かす。これから、二人の関係がこの旅の中で進展していくのではないか、という楽しい予感である。ところが、その楽しい会話はガミラスの仕掛けた罠によって中断されてしまう。
 一方のガミラス帝国ではヒスが用意した「夕食の座興」、デスラー機雷によるヤマト撃沈の目論みがはずれ、今度はデスラー自らが「暇つぶし」で物質のエネルギーを食べて成長する、というガス生命体を使った罠を仕掛けたことを明かす。超磁力バリアの網にかけ、その網をかいくぐって進めば、前方の赤色巨星、アルファ星のコロナに焼尽されてしまう。後ろからは、ヤマトの波動エンジンが生み出すエネルギーを狙って、ガス生命体が迫ってくる。

 バリアで動けなくなったところにミサイル攻撃を受け、島はエンジン出力が上がらないことで徳川機関長に「バカヤロウ」と罵詈雑言を浴びせてしまう。超磁力バリアで動けなくなったところを狙ったミサイルを、古代は自分の判断で迎撃する。この出来事が、今後に関わる二つ目の、一つ目よりもずっと重大な事態を引き出してゆく。そして、始まったばかりの外宇宙の旅が順風満帆ではなく、艦内においても苦渋のドラマが繰り広げられることを予感させる。

 バリアは一部に穴があり、その方向に進んでいくと巨大な赤色巨星アルファ星が待ち構えている。進むことも退くこともできなくなったヤマトだが、沖田艦長はバリアの開いた方向へ進むよう命じる。エネルギーを餌に成長するガス生命体は、ヤマトよりも巨大なエネルギーを持つアルファ星に吸い寄せられ、ヤマトはアルファ星から吹き上げられる灼熱のコロナを避けながら、見事このピンチを切り抜けてゆく。デスラーの罠は完璧だったが、沖田には、このコロナの海に飛び込んでゆく「勇気」がヤマトにはある、と示すことによってピンチを切り抜けたのだ。

 雪が願いをかけたアルファ星はおそるべき灼熱地獄だったが、それでも雪は星に願いをかけることをやめはしなかったようだ。鈍感な古代がその思いに気づくのはまだまだ先になりそうだ。

 一方のガミラス帝国では、ヒスからヤマトが危機を脱して前進していることを告げられたデスラー総統の表情から笑いが消える。どうやら、本気で迎え撃たなければならない相手だったようだ。そう気づいたデスラーが、次に打つ手は一体何だろうか?

ピックアップ 「病魔」

 この回で描かれる、今後に関わる情景の一つ。それが胸を押さえて崩れるように倒れる起きた艦長の姿だ。「古傷が痛んだ」というのが表向きの沖田の説明だが、それが真実ではないことを、軍医の佐渡は見抜いていた。
 その前兆があった。最初にバリアで行く手を阻まれたとき、なぞの振動が起こって乗組員は艦橋に集まってくるが、沖田艦長はなかなか降りてこなかった。実は艦長室で倒れかけていたのだ。何とか立ち直った沖田は、何事もなかったかのように昇降式の艦長席に座って艦橋へ降りてくるが、超磁力バリアで身動きがとれなくなったヤマトに向かってミサイルが飛んできたとき、迎撃ミサイルの発射を命じるべきところでも反応することができなかった。古代進は自分勝手な行動を諌められてきただけに、沖田の命令を待って気配を伺うが、間に合わないと見て自分の判断で迎撃ミサイルを発射、事なきを得た。
 一瞬の躊躇が、自分勝手な行動を戒められてきた彼の成長を感じさせるが、むしろ、なぜ沖田が黙っているのか、いぶかしげに思う人も多かっただろう。案の定、沖田は艦長室で古代を叱責する。古代は腑に落ちない表情のまま去っていくが、軍医の佐渡は持病のために沖田が迎撃命令を出せなかったことを見抜いていた。まだ300日もの行程を残しながら、沖田の体は宇宙放射線病という病魔に侵されていたのである。
 沖田の病魔は刻一刻と深刻になっており、危機を切り抜けて明るさを取り戻す古代や森雪ほどに、私たちは明るくはなれない。沖田の示した判断力と、そして勇気を彼らは引き継ぎ、持ち続けることができるだろうか。 


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第12話 ヤマト、空洞惑星に死す!?」



誇りを持って王者らしく死にたまえ。───── デスラー


あらすじ

 バンデベルの戦艦空母を追い払ったヤマトは補修のため空洞惑星に立ち寄る。が、それはデスラーの作戦であった。磁力バリアで動きを封じられ、デスラー砲を向けられ絶体絶命のヤマト、が、彗星帝国ではサーベラーがデスラー排除の陰謀を巡らせていた。デスラー編2話構成の後半。

磁力線に捕らわれたヤマト

Aパート:バンデベル処刑、サーベラーの陰謀
Bパート:空洞惑星、デスラー帰還命令

コメント

 まず、ヤマト攻撃に向かわせたバンデベルの戦艦空母、デスラーはこれを送ってどうするつもりだったのか良く分からない。この軍艦が打たれ弱いことは七色星団で実証済みであり、また、デスラーの性格からしてとどめは自ら刺しそうなものだがそうはしていない。後の言動からすると、どうもデスラーはこの将軍が失敗することは見通していたように見える。ガミラス大帝星はヤマトに一度大敗しており、有能な将軍も失われたことから、バンデベルのように多少難はあっても使える人材は使うという流民兵団のリーダーシップである。が、バンデベルは少しひどすぎた。
 そもそもこの将軍は僭越で、ヤマトにとどめを刺す権利はガミラスでは一人デスラーのみにある。それを理解しなかった上に艦載機で痛めつけたヤマトに自ら挑むなど功を焦り、自ら撒いた宇宙ボタルに戦闘不能にされて撤退するという醜態を演じたのだから、これではデスラーも堪忍袋の尾が切れるというものだろう。
 ヤマトでデスラーに処刑された将軍はこのバンデベルのほか、宴席でデスラーを愚弄して穴に落とされたストン(落とされただけで生存の説もある)、デスラーを諫止して射殺されたヒス、シャルバート教信者のハイゲル将軍がいるが、デスラーの冷酷非情という評判と異なり、多くの場合、デスラーは失敗した部下にチャンスを与えている。バラン基地を失陥したドメルや幾度も艦隊を亡失したダゴンにもデスラーは敗戦を咎めず新鋭艦隊を与えるなどしており、単に作戦の失敗が処分の理由になるわけではない。処刑は故意に近い過失で彼の意を汲まなかったか、バンデベル(功名心)やハイゲル(宗教)のように異心のある場合に限られる。
 特にバンデベルの勘違いは数ある処刑将軍の中でも群を抜いており、旗艦で弁明を聞き、なおチャンスを与えようと考えていたデスラーも処刑はやむなしと判断したようである。人材不足のガミラス軍でバンデベルのような将軍クラスの将校を切ることは彼にとっても苦しい判断のはずである。ここに我々は彼が彗星帝国の一将軍に甘んじてヤマトを撃つことだけではなく、ヤマト撃滅は通過儀式にすぎず、ガミラス再興を本気で考えている様子を伺うことができる。そんな構想はこの時点ではデスラー以外誰も本気では考えていなかった。ゼネラルプロデューサーの深謀遠慮を理解しないスタッフがいたということだ。パート1では富野喜幸が処刑の憂き目に遭っている。
 背後で進むサーベラーの陰謀もあり、こういう挿話の場合、制作サイドで事情があったと推測することができる。思うにスポンサーの介入とスタッフ内部の不協和音が制作の過程で表面化したのではないか。そういえばこの話の放映日は12月23日、制作はその一月前で、そろそろ決算が話題になる頃である。
 バンデベルを処刑し、デスラーは作戦通り自らヤマトを葬りに戦場に赴く、が、サーベラーの横槍と新米の機転によりヤマトは窮地を脱出する。サーベラーによりデスラーは召喚され、最大の敵を排除したヤマトはテレザートに向かう。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★★ 色々制作現場の事情も垣間見えるが、重力アンカーなど総じて面白い話。

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