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 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第6話「氷原に眠る宇宙駆逐艦ゆきかぜ!」


あらすじ (人類滅亡まで、あと359日)

 初の波動砲発射後、再び波動エンジンが不調を来たし、エネルギー伝導管が焼き付いてしまう。修理に必要な鉱物資源「コスモナイト」を採掘するため、沖田艦長は土星の衛星タイタンにヤマトを着陸させる。そして古代、森、アナライザーの3名にコスモナイトの探査と採掘を、そして真田にはチームを編成して必要な物資を積み込むよう命じた。
 そこへ、ガミラスの偵察機が飛来する。沖田艦長は真田班と古代班に撤収を命じるが、古代はコスモナイト鉱石を何とか見つけ出そうと、命令を無視して探査を続ける。

コメント

 第5話までで、ヤマトの持つ脅威のメカニズムがたっぷりと紹介された。ストーリーは次に、私たちには未だ未知の領域である太陽系の惑星、衛星の旅に誘いつつ、主として第一艦橋に配属された主要メンバーの人間関係や心情へとフォーカスをあててゆく。
 ここまでの航海の様子から、直情的な熱血漢だが、どこか暗い影を背負っている主人公の古代進、一方、根はまじめで責任感が強く、冷静沈着なタイプの親友島大介、という違いが少しずつ伺えるようになってきた。また沖田艦長については、この若い二人の戦士には窺い知ることのできない、深い苦悩と地球再生への想いを秘めていることを感じ取ることがでる。しかし「黙して語らず」という日本男児の美徳を継承しているためか、実際に沖田が何を考えているのか、若い隊員たちには分からないことも多いようである。特に古代は、第1話で「俺は沖田艦長の冷たさが気に入らないんだ」と吐露しているように、兄・古代守の死をどう受け止めているのか分からず、兄を死地に追いやったという怒りを持って沖田を見ていることがわかる。そんなことから、沖田と古代の関係には、どこか一触即発の緊張感が感じられるのだ。

 だから、古代が沖田の帰還命令を無視してコスモナイト鉱石の探査を続行し、通信を切ってしまったとき、えもいわれぬ緊張感にとわられる。この古代の姿勢に対して、沖田はいつものように「黙して語らず」の態度を貫く。しかし制帽のつばに隠れて見えない彼の表情は、いったいどんなものだっただろうか。それでも、ヤマトを動かすために突っ走る古代進の姿に、兄・守とよく似たものを感じていたのではないだろうか。

 冥王星基地のシュルツ司令は、タイタンの部隊に命じて古代と雪、アナライザーを捕虜として捕獲するよう命じる。ガミラスの戦車に追い詰められた古代と雪は、そこで初めてガミラス星人と対面するが、この異星人との遭遇劇はそれほど大きく扱われてはいない。むしろ、追い詰められた古代が氷の下に発見したコスモガンで窮地を脱し、その銃が兄・守のものであったことを知ることから、メインテーマが語られてゆく。

 命令違反を犯した古代を、沖田艦長は館長室へ呼びつける。隊員たちは「命令違反について罰せられるのでは」と一様に古代のことを心配していたが、沖田はただ、古代に彼が発見した守の船、ゆきかぜについて報告せよ、とだけ言う。そして、生存者はありませんでした、という古代の言葉に、今まで誰にも見せたことのない涙をそっと光らせるのであった。
 古代は恐らく、その涙には気付かなかったであろう。二人の凍り付いた感情が、氷解してゆくのはもっと先になると思われる。古代には古代の涙があった。兄・守の「死」を彼は受け入れざるを得なかった。ガミラスに対する復讐を誓う彼の心もまた、氷に閉ざされている。この直情的な主人公が時折見せる暗い影。そこに押込められた感情について語られるのもまた、もう少し先になりそうである。


ピックアップ 「アナライザー」

 滅亡の危機に瀕した地球、という重苦しい冒頭から、森雪のスカートをめくるなど、愛嬌のあるイタズラでコミカルな役どころを担っているロボット「アナライザー」。この万能ロボットの来歴は、明らかにされていない。古代や島についてヤマトに乗り込み、勝手に沖田に自分も乗せてくれるよう乗り込んだ、ということになっている。しかし、もし「彼」の存在がなければ、ヤマトの航海はより困難なものになっただろう。
 第6話では古代と森雪、アナライザーの三者の間でも、面白い人間関係が展開されている。3名はコスモナイト鉱石の探査に行くのだが、古代が猪突猛進で相方には目もくれず突き進んでいるのに対して、アナライザーは森雪のお尻を触るなど、余裕たっぷりである。そんな二人に「遠足じゃないんだぞ」と冷たく言い放つ古代は、まだ雪に特別な感情を抱いている様子はなさそうである。彼には恐らく、まだそんな心の余裕もなければ空白もないのだ。彼が他者を必要とするためには、まず兄を失った哀しみと向き合わねばならなかった。
 一方のアナライザーは、ガミラス兵士急襲の危地にあって獅子奮迅の活躍を見せる。そして驚く古代に言うのだ。「雪サンノタメナラ」と。一番最初に森雪に告白した男子、それはアナライザーだったのだ!
 彼は、感情を表に出さず、多くを語らないことをよしとする日本男児の中にあって、ロボットという特異な立場から、彼らがストレートに表すことの出来ない感情を彼らに成り代わって表現しているかのようである。感情を持ちながら押し殺している人間にかわって、本来は感情を持たないロボットが感情を表現しているのである。その意味で、本作におけるトリックスターの役割を担った興味深いキャラクターである。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第6話 激戦!空間騎兵隊」



ヤマトは恐ろしい敵だった、、───── コスモダート・ナスカ


あらすじ

 着々と地球侵略の準備を進める彗星帝国はナスカの艦隊が第11盤惑星を襲撃する。圧倒的な実力で守備隊を粉砕するナスカだが、11番惑星にはヤマトが近づいていた。


ヤマトに収容された空間騎兵隊

Aパート:ナスカ艦隊の攻撃、ヤマト対大戦艦
Bパート:空間騎兵隊壊滅、ナスカ逃走

コメント

 パート1ではガミラスとの戦いはすでに始まっていたので、続編であるこの話では本話が最初のガトランティスとの戦争になる。1話は威力偵察であった。宇宙での戦いの場合、外交ルートや宣戦布告はどうするのだろうと思うが、そもそも国際社会というのは1648年のウェストファリア条約から始まった国際間の取り決めである。彗星帝国に適用されるはずもなく、そもそも19世紀まで国際社会とはこの条約の当事国を指す言葉であった(日本は入っていない)。案の定、彗星帝国は何の警告なしに地球基地に攻撃を開始する。応戦するヤマトも何の誰何もせずに彗星帝国の攻撃機に対空砲を撃って撃墜しているのだから、この作品では外交とはそういうものなのだろう。パート1の「我々のすべきことは戦うことじゃない」が少し虚しく聞こえる。ヤマトのエンターティメント化の始まりである。
 それでも爽快感のある話で、彗星帝国の戦艦群を相手に一歩も退かずに戦い、強化された主砲で戦艦三隻を屠るヤマトに先の話で熟練した操艦でアンドロメダを振り切った島の技量も思い出し、1話では攻撃機の前に為す術もなかった「人間の動かす船」ヤマトの強さに「戦いはやはり人間のするもの」という制作者のメッセージを感じる。
 最終的に戦艦六隻を撃沈され、上陸隊も壊滅したナスカはデスラーにズォーダーへのとりなしを頼む。ガミラス同様、ガトランティスも「失敗には死」という厳しい組織らしい。11番惑星を救援したことで、長官によりヤマトの反乱認定は解除され、古代は正式にメッセージ解明の任を言い渡される。結果オーライ、やや安直という感じだが、元々古代はヤマト強奪を企図しながら、土方に進路を譲らなかったり、密航した森雪に退艦を命じるほどの仕事人間、規律人間、マジメ人間である。この古代が燃え尽き症候群のサラリーマンのようになるのは復活編だが、それは30年後のお話である。そもそもこんな人間が「反乱」を企むこと自体おかしいのだ。結果として地球連邦軍は最も有能な戦艦と軍人を深宇宙探査に送ることとなり、宣戦布告もない宇宙ではこれは適切な危機管理で、ここで地球にヤマトとその乗員がいたことは、対ガトランティス戦に計り知れないメリットがあったことになる。
 これがあの「市役所戦艦」のようなヤマト2199や、機動戦艦ナデシコの乗員だったらどうだろう? 典型的なホモ・ルーデンスでオフは水着大会のこんな連中では白色彗星はいきなりやってきて地球は蹂躙され全滅して終わりだろう。なので、この硬直した組織上の弱点を補うため、2202では地球とガトランティス軍は最初から交戦していることになっている。情勢が自国の都合に合わせて変わることは普通はないが、この種組織の無能さと危機管理能力のなさは、日本型NSCで我々も散々見聞きしていることである。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★ いろいろ疑問があるので本来なら★3つだが、戦闘の爽快感に免じて★4つ。

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