MUDDY WALKERS 

yamato

 宇宙戦艦ヤマト2199(2013)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2022レビュー

 第26話「青い星の記憶」 脚本:出渕裕


あらすじ 

 森雪が死亡し、意気消沈する古代を励まそうと看護婦の原田が結婚パーティーを企画する。リバースシステムの核になっていた古代守は落ち込む弟の姿を見て、システムの稼働を決意する。

Aパート:森雪死亡、原田結婚パーティー
Bパート:リバースシステム稼働、ヤマト帰還

コメント

 一応前話で雪は死んでおらず、意識不明の重体という話だが、すでに死んだも同然なので話は進む、知らない間に看護婦の原田と航空隊の加藤ができちゃった婚をしており、真田の祭祀で式が執り行われる。沖田はすでに重体で、もうすぐ死ぬと見た古代守はシステムの核の役割を沖田に譲り渡す。

 コスモリバースシステムというのが何なのか、ついに作品では明確な説明はなされなかったが、死人を生き返らせる機能はあるらしいことが分かる話である。これも結局「ユキー」としか言わせてもらえなかった古代進は雪の死にもちろん落ち込むが、デスラー死亡以降、何を思ったか艦内巡検を始めた光の玉守が沖田の夢にばあと現れ、オレが雪を生き返らせるから後は頼むとシステムを稼働させたため、はるばるイスカンダルから運んできたコスモリバースシステムは森雪の復活と同時に機能停止してしまう。

 そもそも、これはヤマトでは戦艦ヤマト同等の最重要のアイテムなのだから、どういう機能の装置なのかもう少しちゃんと説明すべきだし、雪を蘇生させる機械がどうやって地球の環境を元に戻せるのかも、真田とか新見の言葉を使って語るべきである。が、2199ではいつものことであるが、誰でも分かる科学説明以上の内容になると、このスタッフは口をつぐんでしまうのだ。それにシステムにはもう一つの謎がある。古代守が死ななければ、システムの人柱は彼ではなく森雪だったはずである。で、あるなら、古代が稼働させればシステムは死んだ雪の魂を取り込んで再稼働するはずで、それがどうして死にかけの沖田なのか良く分からない。おかげで、「地球か、何もかも」の沖田渾身の名シーンがただのお笑いになってしまった。何しろこのシステムときたら、沖田が絶命した直後にウィンウィンと稼働を始めるのだから、これをギャグと言わずして何をギャグというのだろう。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 放射能設定がなくなったおかげで、感動のラストがハチャメチャになってしまった。敵将官をかばって死ぬ森雪、落ち込む弟のために地球を救う目的を放棄する古代守、どうせ死ぬと分かってることがミエミエの沖田によるリバースシステム再稼働。何もかもがチグハグで、最後は失笑しか残らなかった。 

 スタッフの思い込みと自分勝手が名作をダメにしてしまった。(小林)
 人類の共有財産ともいうべき作品がメチャクチャに。こんなことが許されるのだろうか。(飛田)


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2202第26話 地球よ、ヤマトは、、」


あらすじ

 ガトランティスは滅び、生き残ったクルーは英雄の丘に集う。戦いから半年後、時間断層にヤマトが出現し、成仏できない古代と雪があの世とこの世の間をさまよっていた。真田とギンガの藤堂は二人の救出を目論み提案を国民投票に掛ける。

Aパート:ヤマト浮上、あの世の古代と雪
Bパート:真田の演説、古代と雪の帰還

コメント

 爆破されたヤマトに乗り組んでいた古代が迷い込んだ「スーパーあの世の世界」では数珠のような玉に様々な世界が映し出され、古代はズォーダーと心中という選択が唯一のものでなかったことを知って落ち込み、次元の狭間に引きこもる。そのことを知ったギンガ艦長の藤堂と真田は提案を国民投票に掛け、感動的な演説で世論を味方につけることに成功する。それは時間断層と引き換えにヤマトを「スーパーあの世の世界」に救出に向かわせる案であった。

 「甘いなあ」と思えるのは、確かに古代を英雄ではなく地球市民の分身とした真田の演説はこの作品にしては例外的に感動的で英雄崇拝譚でないもう一つのヤマトを見た気分だが、それまで前作以上に「大人の事情」を優先させ、狡猾で偏狭な「オトナ」を描いてきた作風からすれば、そんな演説が通用するはずはなく、投票の結果は世論操作や組織票ですでに決まっているのだというのがこの作品の世界である。そうならなかったことは、この演説もまた「B級市民」を操作する世論操作のテクニックの一つと見え、人の心を弄ぶ脚本家に不愉快な気分になるのは筆者ならずともそうだろう。一言で言えば、これは分不相応な企画をゴリ押しで通した福井晴敏らスタッフの「事情」なのである。ここで念のため、10年ほど前の福井の一言を引いておきたい。

「、、ノーと言いきれる人はいまい。いたとしたら、友としては尊重するが、仕事仲間としてはおつきあいできないかもしれない。残念ながら、それが大人の世界だ。」

 なんとも傲慢な言葉である。ガンダムUC然り、このヤマト然り、この「大人の世界」とやらをひけらかして福井が小林誠と紡いだ作品はなんとも子供っぽく、とても大人の視聴に耐えるものではない。もう一度作り直すべきである。2199と2202に意味があるとすれば、その「可能性」を提示したことだけであり、それ以外にこれら二作に作品としての価値などない。そして、もっと作品と真摯に向かい合う創作家に新たな作品作りを委ねるべきである。
(レビュー:小林昭人)

カオルのひとこと

 なんと、最終回を前にヤマトが特攻してしまったのである。話は戦いから半年後。英雄の丘には、戦友の死を悼むヤマト乗組員たちの姿があった。ところが、地球にヤマトが戻ってくるのである。どうやら時間断層のさらに奥から帰ってきたらしいのだが、古代と雪は乗ってはいなかった。わかりやすくいうと「あの世」へ行ってしまったのである。これは「あの世」に行った二人を連れ戻そう、という話なのである。ただ、連れ戻すためには時間断層を壊さなければならない、といわけで時間断層をとるか、古代と雪を連れ戻すのをとるかで真田と芹沢がプレゼンする。
 引き金を引いてしまったことを悔やむ古代と、彼を連れ戻そうとする雪との会話だが、唐突にヤマトが現れて、地上では、時間断層を壊してでも古代と雪を助ける決断がなされたらしい。なぜこんな話を付け加えなければならなかったのだろうかと疑問に思うが、ご都合主義の権化である時間断層をそのままにして話を終わらせたくはなかったのだろう。古代の心の内側の葛藤に答えを与えたかったのだろうが、そんな深淵なテーマを語れるほど、古代という人間を描いてこなかったので、薄っぺらになるのも無理はない。

評点
 そもそもレビューを書いたのが間違いだった。(小林)
 まさか「あの世」から帰ってくる話がラストとは(飛田)


<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇