レビュー
ポーランドのSF作家、スタニスワフ・レムの原作を、映像美で知られる監督、アンドレイ・タルコフスキーが映画化した作品。上映時間は165分だが、とに かく、びっくりするほど時間がゆっくり感じられる。傑作だということで観てみたが、映画に芸術を求めるタイプでない人には退屈でおすすめできない、と言うほかない。
惑星ソラリスの軌道上の宇宙ステーションで異常事態が発生し、調査のために心理学者のクリスが地球から宇宙ステーションへ向かうのだが、ステーションは 荒れ果て、3人の科学者は精神的に混乱した状態にあった。クリス自身も、この宇宙ステーションでなぜか数年前に自殺した妻、ハリーと出会い、大きなショックを受ける。実はソラリスは、人の心にあるものを具象化する、という不思議な力を秘めた星だったのだ…、というストーリーだけ見れば面白そうなのだが、脚本や構成の仕方が独特で、台詞も動きもない風景の場面が延々と続くうえ、状況を説明するような会話などもほとんどないので、話の筋を読むことが非常に難しく、ただ、映し出された風景の中に自分もとけ込んで体験していくしかない、という感じになっている。そして、そうしようとしてたいていの人は、眠りについてしまうであろう。せめて、主人公のクリスが溌剌としたイケメンだったら良かったのだが、くたびれ果てたおじさんで、若くて美しい奥さんと釣り合っていない気がする。
美しい水辺の風景は、一見の価値があるものの、SF映画としては、なんか、出来るだけ特撮やセットは使わず、近未来っぽい風景を探してロケしました、みたいな感じで期待するものはない。未来都市の場面のロケ地が、東京の首都高なのにはびっくりした。他の国の人はともかく、日本人には日本の光景にしか見え なくて一気に萎える。しかし、こういう映画もある、という意味では観てよかった。何度も観ると、そこに描かれている哲学的なテーマに入っていくことが出来るのだろうが、それまでに眠りに入ってしまうので、私には理解することは無理。
評点 ★★ |