レビュー
見終わって、思わず「ひで〜」と叫びたくなる作品だった。江戸の風景や大奥の情景はよく出来ている。だけど、全体としては漫画を実写にしただけの出来で、映画として構築されていないのだ。
男性のみがかかる疫病の大流行で、人口の男女比が1:4だかなんだかになってしまった、江戸時代が舞台。江戸の城下町では、大工や籠かき、飛脚など本来 男性のものとされてきた職業を女性が担っている様子が描かれる。貧乏武士の家の長男、水野祐之進(二宮和也)は貧しい家計を助けるために、大奥入りを決意 する。町娘おのぶ(堀北真希)の会話を通して描かれる、その逆転の情景。その展開の遅さに気持ちがダレてきた頃、ようやく主舞台である大奥へ導き入れられ る、のだが。ヒロインの将軍吉宗(柴咲コウ)が登場するのは、映画も半ばを過ぎてから。それまで、ノンケの水野が男ばかりの大奥が男同士の秘密の花園であ ることを知り、うろたえ、そこで大奥で一番偉い人、藤波(佐々木蔵之介)に目をかけられたり、その藤波と松島(玉木宏)が実はデキていたり、という出来事 がある。大奥の美男子たちは、将軍のお手つきになることを望んでいるわけだが、図らずも、水野が指名され…、と、ここでようやく、全体の筋が見えてくるわ けだが、結局のところ、水野の大奥体験記、という感じでなんの山もオチも意味もなく終わってしまった。
原作はよしながふみによる漫画。そのせいか、実に展開といい画面構成といい、漫画のコマ割を見ているような単調さ。話も単調で、ストーリーの中に大きな 事件が起こることもなく終わる。それだけならまだいいが、男女逆転させた意味というのが、ちっとも分からなかった。単に、数多の美少年をはべらせて、お気 に入りを選べる立場になったらさぞ楽しいだろうな、という女性の下心だろうか。男女逆転した江戸のまちで、花魁や女郎(の男たち)を品定めする女たちの姿 が描かれていたが、なんだか見てはいけないものを見てしまったような気持ちになった。そうであっても「男尊女卑」が逆になっているわけではないという不思 議さ。大仰な設定をほどこしながら、結局出来上がったのは単なる腐女子向けアイドル映画なのであった。
評点 ★★ |