MUDDY WALKERS 

キサラギ 

キサラギ 2007年 日本 108分

監督佐藤祐市
原作・脚本古沢良太

出演
小栗旬/ユースケ・サンタマリア
小出恵介/塚地武雅/香川照之

スト−リ−

 自殺したアイドル、如月ミキの一回忌。如月ミキファンが集う掲示板に書き込みをしている“家元”(小栗旬)の主催で、追悼パーティが開かれる。会場は、とあるビルの屋上にあるロフトのような部屋。集まってきたのは“家元”のほか“安男”(ドランクドラゴン・塚地武雅)“スネーク”(小出恵介)“オダ・ユージ”(ユースケ・サンタマリア)、そして“いちご娘”(香川照之)の5人。会場準備をする“家元”と、最初に到着した“安男”はカジュアルな服装をしているが、喪服着用でやって来た「オダ・ユージ」はそんな彼らに「追悼に相応しい服装があるだろう」と諭す。彼らは全員初対面で、自己紹介からスタートするが、やがて話題は、如月ミキの死に移ってゆく。彼女は本当に自殺したのか、という“オダ・ユージ”の問いかけから、話は思わぬ方向へと展開してゆき、追悼パーティは一転して乱闘騒ぎの修羅場に…!

レビュー

 これは、大変面白かったです。映画の舞台は追悼会の会場となった一室のみ。そこで自殺したアイドルのファンが、その真相に迫るという、ほとんどそれだけの内容しかない話です。“オダ・ユージ”が「本当に自殺だったのか?」と言い出したときに、この中に犯人がいて、それを探し出す話なのか…と先読みしていたものの、それが見事に裏切られていく感じが心地よかったです。実は互いがハンドルネームしかしらない初対面の間柄であるとか、死んだアイドル如月ミキに対して「どのような」思いを持って見ていたかということが徐々に明らかになってくると、乱闘騒ぎになったり、大興奮になったり、大号泣になったりするわけです。一つの部屋にいる5人の会話だけで話が進んでいくのですが、それだけで、これだけのサスペンス、スリル、そして感動にまで持っていくことができたのは、やはりよく練られた脚本と5人の役者の熱演によるところが大きいでしょう。

 また、アイドルの自殺の真相をつきとめようとするファンが到達した結論には、なにか「アイドル」の本質のようなものが語られていて、そこがまた面白かったです。アイドルとは言うまでもなく偶像であり、歌も下手、踊りもダメなB級アイドルに熱い思いを注ぎ、そこに心の慰めを得ようとする男たちの姿は滑稽なのですが、最後に如月ミキの姿が映し出されたとき、その滑稽さはある種の悲哀を感じさせるまでになります。彼らにとっては女神でも、客観的に見れば「これは売れんやろ」なワケですから。しかし私たちもまた、形は違えど何かしらの偶像によって、他人から見れば滑稽な方法で励ましや慰めを受けているのではと思うと、彼らのことを笑ってばかりはいられないなあと思ったり…などと、最後は身も蓋もないまとめになってしまいましたが、映画の内容を細かく語ると面白さが半減してしまうので、こんな感じで曖昧なままレビューをしめくくっておきます。

評点 ★★★★★

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