レビュー
ヨーロッパ最大の伝説「アーサー王伝説」を題材にした歴史スペクタクル。伝説化されたアーサー王の歴史的な実像に迫るというふれこみだったらしいが、そういう前宣伝は全然知らず、単にヒマだから、アーサー王の話しだったら面白そうじゃない?ぐらいの軽いノリで出かけた。それが間違いだった。映画は、私たちが軽いノリで出かけた以上に、軽薄だった。
私はアーサー王伝説というのがどんなものか良くしらないので、「話が全然違うじゃないか」というふうには思わなかったが、それ以前に、映画としてちっとも面白くなかった。問題はたくさんある。まず序盤から。アーサーを含め7人の騎士が登場するのだが、誰が誰なのか、さっぱりわからない。「誰がアーサーなの?」「さー?」なんて、途中で母と言っていたくらいである。そのためにやたらと難解な話に感じてしまう。そこから、アーサーと騎士たちに最後の任務が言い渡され、サクソンに侵略されそうになっている土地からローマ人たちを救出するところまでは、まだいい。そこで、蛮族ウォードの女グィネヴィアを助けだしたところから、物語は急速に軽薄化していく。地下牢に閉じこめられて拷問されていたというのに、このお姫様は元気いっぱい、やる気マンマンである。なんだー、要するに、キーラ・ナイトレイのアクション物?みたいな。そしてアーサーの騎士たちも、騎士というよりは酒好き、女好きのやさぐれ者。まるっきりマンガである。百戦錬磨、今まで負けたことがない強者というが、アーサーとは対立してばかりで、一体どうやって信頼関係を築いたのか、そこのところがわからないから、終盤、彼らが自由を捨ててアーサーとともに戦うことを選んだところでも、ちっとも感動できなかった。
映画冒頭では少年のランスロットがローマ兵に迎えられ、15年の兵役のために旅立つシーンがある。女の子から、何かお守りのようなものを貰うので「これは何か、あとで重要な役目をはたすな」と心構えて見ているが、結局何の伏線もなく終わってしまう。また、トリスタンはいつも鷹を連れているから、この鷹が何か終盤で重要な働きをするのだろうか、と思うが、要するに、ただ連れているだけである。また、ランスロットがグィネビアの水浴をのぞき見したりと、三角関係のにおいがただようのだが、結局これも対して盛り上がるわけでもなく終わる。そういう、伏線かと思わせて別に何にもない、ということが多すぎる。振り返ってみれば、アホみたいに単純な話だったなあ・・・で終わってしまった。これがヨーロッパ最大の伝説とは、あまりにも情けない。 アーサーの敵のサクソン人も、終始バカみたいで、彼らなりの文化、流儀、生き方というものが感じられなかった。これじゃ、イギリス人は怒るゾ。 アーサー王というのが実はローマ人だったということを知れたことが、この映画の唯一の収穫であった。
評点 ★★ |