■ビバリーヒルズ・チワワ　BEVERLY HILLS CHIHUAHUA　

2008年　アメリカ　92分 監督■ラージャ・ゴスネル 脚本■ アナリサ・ラビアンコ ジェフ・ブシェル 出演■ ドリュー・バリモア ジョージ・ロペス アンディ・ガルシア エドワード・ジェームズ・オルモス ブラシド・ドミンゴ チーチ・マリン（以上：声の出演） パイパー・ペラーボ マノロ・カルドナ ジェイミー・リー・カーティス

スト−リ−

　ビバリーヒルズの豪邸で暮らすチワワのクロエ（ドリュー・バリモア）。シャネル風のドレスを身につけ、首にはハリー・ウィンストンのダイヤの首輪。苦労知らずのプリンセスである。造園家のサム（マノロ・カルドナ）とともにその豪邸の庭で働くパピは同じチワワで、そんなクロエに思いを寄せていたが、クロエからはちょと敬遠されていた。そんなある日、クロエは飼い主のヴィヴ（ジェイミー・リー・カーティス）がパリへ出張するため、姪のレイチェル（パイパー・ペラーボ）がその間ヴィヴ邸に来て面倒を見てもらうことに。しかしレイチェルは叔母の留守をいいことに、クロエを連れて友人たちとメキシコへリゾートに出かける。ホテルで目を離した隙にクロエは外出。そこで犬の窃盗団に連れ去られ、獰猛な野犬たちが集められた闘犬場でリングの上に立たされる。そんなクロエを助けたのは、同じ闘犬場にいたジャーマン・シェパードのデルガド（アンディ・ガルシア）だった。窃盗団の猛犬ディアブロ（エドワード・ジェームズ・オルモス）が追跡してくる中、お嬢様チワワと無頼漢シェパードの逃避行が始まった…！

レビュー

　ディズニー製作、ワンちゃんいっぱいのアドベンチャー大作。主演がチワワ、しかもビバリーヒルズ住まいである。何かのパロディっぽいタイトルといい、豪邸暮らしのちびっこい犬というギャップといい、どこか心をくすぐるような楽しさがあふれる。作品全体もそんな感じで、小さなチワワのでっかい冒険に心の踊る時間となった。

　セレブで贅沢三昧のチワワが、旅先で誘拐され、身につけていたシャネル風のドレスも、高級宝飾ブランドハリー・ウィンストンのダイヤの首輪も、そして靴（笑）も失って、薄汚れて馴染みの高級ホテルで邪険に追い払われる、というのはある意味定番、そんな彼女が道連れを得て一回り成長して無事帰る、というのもお約束。それでも飽きさせず面白いのは、そこに「本物」がある、と感じさせるからだ。なにしろ、本物の犬たちが、これを演じているのである。しかも、彼らは言葉さえ話すのだ。

　犬が映画で主役級を演じるのは、これまでにもあっただろう。この映画では、ただ犬として演じているだけでなく、セリフも話す。ちゃんとセリフに合わせて口パクまでするのだ。もちろん、それはＣＧで、最初はかなり違和感を感じたことも確かだ。だが、その作り込みに製作者の強い思いを見出した気がした。実写で登場しながら、アニメのように話す犬。彼らが話すのは犬同士の間だけで人間と話すことはないが、そこには、犬には犬の「犬格」があり、犬の喜びや悲しみ、いろんな考えや気持ちがあるのだ、というメッセージがあるのではないか。そして、映画を見終わったあとに、もし犬を飼っているなら、その犬の「言葉」に耳を傾けてあげてほしい、そんな思いが作品にこめられているのだ、と思った。

　クロエの飼い主ヴィヴや、その姪のレイチェル、ヴィヴの庭園づくりをする造園家のサムなど、主人公のクロエの周りには多くの人間も登場する。その人間同士にも様々な会話があり、様々な関係があることが伺えるものの、主役はあくまで犬。であるからして、人間側のドラマは、あくまでクロエら犬のドラマを引き立てる程度の扱いになっている。そして、犬同士の世界の中で、クロエはセレブであるがゆえに、ちょっと鼻につくような言動もあったりするが、それを嫌味に描いたり、他の犬が貶めたり、というようなことはない。犬を誘拐して闘犬させる窃盗団は「悪者」だが、人間全体を犬の視点で悪い者としてしまうようなことはせず、むしろ、犬たちがそうであっても人間に対する信頼を失わない、そういう存在であることを思い出させてくれる作風になっていることも、この作品の魅力かもしれない。

もう一つの見どころは、クロエのダイヤの首輪を狙って詐欺を仕掛けるネズミのマヌエルとイグアナのチコのコンビだ。犬はちゃんと演技をしているが、ネズミとイグアナは完全なＣＧ。しかし、それをまったく感じさせない自然さで、お嬢様チワワの冒険の中盤を盛り上げてくれる。

　主役のクロエとデルガドは別にして、脇を固めるパピやメキシコで出会う野良犬たちは、いわゆるタレント犬ではなく「保護された」犬なのだそうだ。そんな背景を知ればなおさら、彼らに訪れるハッピーエンドが嬉しくなる。

評点　★★★★★

<<BACK　◆　NEXT>>