Mobilesuit Gundam Magnificent Theaters 2005.

An another tale of Zeta・・・INTERVIEW


(インタビュー 2016/06/21)




機動戦士Zガンダム ハヤト・コバヤシさん
※本作の記述とは関係ありません。


はじめに

ハヤト: こんにちは、カラバのハヤト・コバヤシです。ATZのインタビュアーを務めています。

小林: 作者の小林昭人です。


1.三菱騒動の顛末


問題のeKワゴン

ハヤト: あれから2月経ちましたが、どうも型式認定の取り消しまではしないようですね、7月に生産再開です。

小林: とはいっても、元々スズキやダイハツに負けていた上に、さらに悪い燃費表示のクルマなんか誰も買わないだろう。

ハヤト: 恐るべきことに5月の販売台数はゼロ(0)台だそうです。

小林: だからクルマ商売は恐ろしいんだ。

ハヤト: これは早いとこeKに代わる新型eKないし新型の軽自動車を投入しないとどうにもならないでしょう。

小林: 時間もあまり無いよね。大急ぎでやっても型式認定の標準処理期間が2ヶ月だから、新車がいちばん売れる来年2月までに投入するなら量産準備も含めて10月頃までには新車開発を済ませてなきゃいけない。あと3カ月だな。

ハヤト: 無理ですよ

小林: 私も難しいと思うけど、余ったeKのコンポーネンツを使って100日くらいでできそうな、何か売れそうなクルマは作れないものだろうか? とにかく、なりふり構わず、何か投入しないとますます悪くなるよ。


2.三菱再浮上の可能性?


三菱eKスペース

小林: 問題のeKワゴンは3代目だけど、実は前二代とはかなり異質なクルマでさ。何とかできないかと思うが、やっぱりエンジンを替えないとダメだな。つい最近まで、三菱はこのeKとアイという構造の全く違う2種類の軽自動車を作っていたから。

ハヤト: 4WDは8種類あるそうです。現行eKのエンジンは確かリアエンジン車アイの発展型でしたね? 先年の車種整理の際にアイは生産終了したのですが、エンジンの方はeKのエンジンが製造中止になってアイの方が生き延びていた。しかしあれ、リアエンジン車でしょう?


典型的なリアエンジン車(スバル・サンバー)

小林: そう、後ろバンパーを外してプラグを替えたりオイル交換していたスバル・サンバーの同類だ。つまり、リアエンジン車のエンジンは平べったく前後に長い。それを無理やり立てて(45度)、前に収めたからタチが悪い。なので今度は上下に長くなったため重心が上がってしまい、そのバランスを取るため車体を上に伸ばしたので、三代目eKはあんな背高ノッポのバランスの悪いデザインになったんだ。

ハヤト: それだったらむしろ、先代と同じエンジンの方が良かったような気がしますね。何で生産中止にしたクルマのエンジンをそれまで好評だったシリーズの新型に積むなんて無理したんでしょう?

小林: それもそんなに軽くもないんだ。スズキはこのクラスのエンジンは50kg級(エンジン重量)のエンジンを量産しているけど、三菱の方はアルミエンジンでも70kg弱で、補機も入れると30kgくらい違うんじゃないか? 実は先代eKの鋳鉄エンジンとそんなに変わらない。こんな変なことをやっているのは、会社内部のセクト争いが原因としか考えられないね。アイ派とeK派のバランスを取ったんだ。前の社長の相川さんはeK派だから、アイの生産を止める代わりにエンジンは残してアイ派の顔を立てるという。あと、アイは電気自動車になったしね。


三菱アイ・ミーブ 余裕のない会社で社内ポリティクスは命取り、ほか、ハイブリッド車アウトランダーがある。なぜ一車種に絞れないのか。

ハヤト: 技術的判断ではなく、会社内部の政治的判断が垣間見えると。

小林: 市場シェア3%でこういうことをやっているのも悠長というか何というか、いずれにしろ、NMKVを通じて日産にも供給されていた三代目eKワゴンだが、クルマとしての技術的純粋性には疑問のあるクルマであった。おかげで先代までは入った立体駐車場に入れなくなったし、乗り心地だってMOVEより悪いし、重いので走りも良くない。同じ背高でも先代eKをベースにしたトッポよりも操安性が悪いからね。

ハヤト: だったら、そういう技術的に不純な部分を取り除けば良いと。

小林: 50kg級のエンジンなら、実は20年前にダイムラーが開発したMCCスマート用のM160があってさ、ターボ付きでこれはスズキよりも軽い。知っての通り、初代スマートが販売されていた時代、三菱とダイムラーは提携関係だったからね。ディーラーがスマートの修理を引き受けていたこともある。これを譲ってもらうとか。


ダイムラーM160

ハヤト: 確か三菱はスマートにエンジンを供給していましたね。

小林: 現行スマート用のM132ね、ミラージュのエンジンだけど、eK用よりも構造は簡素だが頑丈で、元々ダイムラーの設計でオランダのMDCパワー社で製造していたものだけど、今は三菱自動車の京都製作所で製造されている。eKワゴンのエンジンはダイムラーの型番ではM134だからね。そもそもアイというクルマ自体、提携時代に三菱のエンジニアが見かけた次期型スマートそのものだから。

ハヤト: ですが、これらはそんなに軽くないと。

小林: M132とM134は両方乗り比べたから知っているけど、フィーリング、パワー、レスポンス、どれを取ってもM134(eK用)の方がM132(ミラージュ用)を上回る。メカニズムはこちらの方が凝っているので(MIVECシステム)。ミラージュにeKのエンジンを積んでくれたらとは何度も思ったよ、が、これは重くて格好が悪く、可変吸気システムの部分が出張っていてミラージュにすら収まらない。それにM132だってそんなに軽くない。どちらも軽に最適化されたスズキのエンジンにはとても敵わない。

ハヤト: つまり、小林さんのご意見では、三菱自動車は早急に新型軽自動車を投入する必要があるけれども、エンジンについてはダイムラーかスズキから買えということですね。

 
フィアットのツインエアエンジン(左)と、50kg代の軽量設計スズキR型エンジン(右)

小林: フィアットのツインエアでもいい。エンジンさえまともなら、ちゃんと立体駐車場に入れて実用的で良く走る、まともな自動車は作れると思うんだ。だいたいeKというのはそういう自動車で、岡目八目しか買わない不細工なハコ物はトッポの独擅場だった。つまり三菱燃費偽装事件というのは、実は以前の車種整理が遠因で、社内の技術者集団が各々譲らなかったために妥協の産物のような製品(三代目eKワゴン)を作ってしまい、そこで燃費をごまかした、そういう事件だな。

ハヤト: 今となっては社内ポリティクスも何もないと思いますから、技術的にちゃんとした判断をしてもらいたいということですね。

小林: いよいよ年貢の納め時というか、今回ばかりは自社だけじゃあ解決できないんじゃないか? そもそもデフォルトで重心高すぎで立駐に入れない軽自動車(三代目eKワゴン)なんか作っちゃダメだよ。ダイハツだってスズキだって基本仕様のクルマ(ミラ、アルト)はちゃんと立駐に停められる。eKも以前はそうだった。

ハヤト: ま、しばらく様子を見ましょう。



閑話休題


M160エンジンを積む初代スマート

ハヤト: 技術資料を調べましたが、先に小林さんが挙げたスマート用のM160エンジン、ターボ付きで59キロなんて軽すぎませんか?

小林: 実物見ても小さいエンジンだねえ、エンジンというより模型のような。

ハヤト: 耐久性が心配なのですよ。

小林: そういうのはそんなに心配する必要は無くてさ、20年もあれば冶金技術も進歩するから、限界設計と言っても素材や加工技術の進歩と改良で、余裕が出てくる場合がある。もっともこのエンジンの場合、他と比べて寿命が特に短いという話も聞かないが。

ハヤト: 以前の「クルマの話」コラムでは、小林さんはレクサス用のUZエンジンの例を挙げていましたね。元々3.5リットルで開発されたものが最終的には4.3リットルになったとか。


サイアミーズド(シャム双生児型)シリンダブロックのセルシオ用のUZエンジン

小林: このエンジンは上の写真の通りサイアミーズド(シャム双生児型)のエンジンで、シリンダライナ同士が写真のようにくっついているが、これは3.5リットルで開発された時からそうであった。それをさ、レクサスとしてデビューさせた時は4リットルに、三代目セルシオでは4.3リットルまでボアアップして販売していたからそれはもう、、

ハヤト: どんどんシリンダの壁が薄くなっていくのですね、聞くだに恐ろしげな話ですね。

小林: 大丈夫だ、ベンツはもっと薄い。が、当初限界設計であったものが改良によって高出力や大排気量になる例は他にもあるんだ。例えばVWのEA827なんか当初(1973年)なんか軽量設計の1.3リットルだったのが後にディーゼルエンジンのベースになり、VWゴルフ用のエンジンとして排気量を2リットルまで拡大して2005年まで生産され続けたとか。同じ構造のエンジンでも素材や加工が進歩することで熟成が進み、当初設計していた以上のものに進化することはこの世界ではザラにあることで。ポルシェ911のエンジンなんか良い例だ。

ハヤト: こうしてみれば三菱はeKワゴンの元になったミニカ用の鋳鉄エンジンをもっと進化させるべきだったかもしれませんね。

小林: せっかくダイムラーと提携したならベースはM160の方が良いよ。そもそも開発時点で世界最軽量の自動車用ガソリン(アルミ)エンジンでしかもターボ付き、20年前でこれなら今の技術ならどれほどのものになるか。

ハヤト: 舛添都知事の話とかあったのですが、今日はクルマの話で終わってしまいましたね、では、また。