参考掲示板 フラガ評論集作品第5話 (発言20以下未掲載分)
※斜線発言は上記掲示板の該当部分
[20]追記投稿者:フラガ投稿日:2009年12月18日(金)
どうも私フラガというと外語でツッコミというイメージが皆さんあると私は勝手に思っていますが(文学部です)。第5話は少ないなと、ま、あんまり突っ込める言葉がなかったと言うこともありますし、私も忘年会で酔っていたりしていましたから、それもあるでしょうね。
では、簡単にザッザッと宿題を片づけましょう!
とりあえず、引っ掛かったのをいくつか挙げておきます。ゼーマンとゼーファーレルは前に書いたから良いでしょう。
「ジオン漁連(Zion Fischereialliierte)」
これもツッコミとしてはあんまり面白くないんですよね。直訳ですから。読んで字のごとしですよ。
「有給休暇(sabbatical)」
「サバティカル」、普通は有給休暇は「ペイ・バケーション」なんですよね。これはちょっと特殊な有給休暇です。大学の先生なんかが1年間丸々取るようなのを指しますね。でも、私はこれが書かれていた13ページの文脈を見ればこっちで良いと思いました。彼ら(マシュマロとサド)は非常に優雅な生まれですよね。マシュマロが同級生に言う言葉なら、こっちの方が断然良いです。別の場所では「有給休暇(paid vacations)」と書いています、やっぱ作者使い分けていますね。オックスフォード出のサドは割と古っぽい言葉を使うことが多いように見えます。言葉聞くだけで学のありそうな、そんな人物像が浮かんできます。
「援助交際(prostitution)」
これは一言言いたい。”child abuse(幼児虐待)”だろうと、「プロスティテューション」というのは「売春」という意味なんですよね。実は「援助交際」という概念が向こうには無いんです。「幼児売春」という概念も無いです。全部虐待です。マシュマーの元上官スミス氏は14歳の少女を相手に「いかがわしい行為」をしたカドで捕まったのですが、もし、この小説を翻訳して出すなら”prostitution”じゃまずいです。これは”child abuse”でなきゃいけません。
2ちゃんねるみたいな掲示板は向こうではあまり流行らないという話ですが、モラル(道義)の水準は違うところあるんですよね。こと児童虐待については、向こうの方が日本より厳しいです。
「なお、スミスは退役後、成人したこの少女と結婚し、オルドリン市郊外でカジノを営んでいる(5-14)。」
この文章を加えたところから見て、どうもそれほどいかがわしい関係じゃ実は無かった(実は純愛)んじゃないかというニュアンスも感じますが、「売春」ですし、14歳はやっぱまずいでしょう。
「艦長の鑑(der Heldenkapitan)」
「〜の鑑」なんて言葉ありませんから、作者も言葉作ってます。”Held”というのは英雄という意味です。「ヘルデンザーゲン・フォム・コスモスインゼル」、宇宙島の英雄伝説=銀河英雄伝説という意味です。上のは「英雄キャプテン」という意味なんですよね。船ブッ壊して胸張っているボスバッハ艦長の勇姿が浮かんできます。こういうのが面白いんですがね。
「私を裏切るな(Don't let me down.)。」
「ドント・レット・ミー・ダウン」読んで字のごとしですが、ハマーンがこんな台詞言ったらカッコ良いと思います。
「もう、疲れたよ(Ich bin todmude.)。」
「死ぬほど疲れた」という意味ですね。”mude”だけでも十分疲れているんですが、”todmude”はさらにその上を行きます。
ま、こんな感じでしょうか。
フラガでした!
[3]ぐうたら艦長投稿者:ひらめ投稿日:2009年12月15日(火)
こんばんわ、夜の帳が降りる頃、
ジェットストリーィィィム 解説は私ひらめです。
何でこんな時間に書いてるんだろ。
この作品にはたまに息抜きのような話があるのですが、第5話はその最初ですね。レダの戦いがテンション高い大戦争でしたから、読者を休ませようという作者の配慮です。実は私も初版のこの話は何度か読んだんですよね。
誰も書かないと思いますが、私がこの話で好きなのはマーロウ艦長です。あの徹底した役立たずっぷりがいい。
そこでふと思ったのですが、この話、考えてみれば彼は使えたんじゃないかと。例えば「ガンダムアストレイ風(アリス風)」で考えれば彼は使える位置にいます。何せ犯罪事件の現場にいましたし、被害者の友だちと知り合いのようですし、実はモビルスーツにも乗れるんでしょう、彼は、履歴書に書いてありましたよ。頭も切れますよね。体力も行動力もあると思います。
これだけ「使える」キャラを誘拐事件の現場に配しておきながら、彼は「ホントに何もしない」んですよね。書き直すなら少しは活躍の場を作ればと思いましたが、読み終わった後で実はそう思ったのですが、例えば誘拐犯人をあと一歩まで追い詰めながら「助けてくれマシュマー」とか、考えてませんが何か策略を巡らすとか、普通(アリス)ならやりそうな事を彼はやらないんですよねえ。それはオフだから。
これがホントの「役立たず」なら私もそれで納得できるんですが、実はこの人、記述を読むと分かりますが主役並みにテレビを見ながら「何が起こっているか分かっている」それで最後に復帰する理由が「滞在中の宇宙海賊の跳梁による物価の上昇と、人身売買事件に対するエウロパ市民の反応が彼に考えを改めさせた。」でしょう? この真面目ったらしい理由! 実はぐうたら艦長のくせに何もかも分かっていたんですよ。
もうこの話は初版も含めて何度も読みましたが、やっぱいちばん読んでいてホッとするのが、作中でこれだけ有能な人物が作品にでてくるトラックのあんちゃんと大して変わらない、「傍観者の一人の男」でしかなかった点です。これが刑事ドラマみたいに誘拐犯人を追い詰めて銃だけ撃ち落とすとか、誘拐されそうな少女を助けて「どうしたんだ」とかやられた日にはかえって醒めてしまいます。それをやれる人物にやらせないところに第5話の独特のムードと、私の感じる安心感があります。この話はスーパーマンやニュータイプの話じゃないんですね。
たぶん艦長は目の前に少女を誘拐したクルマが通り過ぎても、この感じでは気づかないと思います。でも、この話はそれで良いんです。
バイクのシーンは良いですね、私もオートバイが欲しくなりました。女性も娼婦ばかりでホントに情交目的という割り切った態度も良いです。でも、それじゃ彼は満たされないんですね。読者には分かり切った結論です。でも、男にはそういう時もあっても良いじゃないですか。オートバイのシーン(下)は、私は好きですね。
[14]まともな考え、まともな解決投稿者:利通投稿日:2009年12月17日(木)
「連合の基地であったヤーウェ(Yahweh)は巨大な基地である。この基地は木星の磁気圏の影響を考慮して、第3衛星ガニメデに設営された。大型のガレオン船(Galleons)を含む300隻の艦隊を駐留させるため、基地のスケールは初から巨大なものとなった(5-36)。」
あと、上の記述なんか小林さんの作品がオリジナルよりも長い「前史」を持つ証左にありますね。以前のゲストブック討論なんですが、この作品では「核融合エンジン」というのはかなり昔に作られたもので(400年前)、ミノフスキー博士も既に故人なんですが、スペースコロニーの建造時代というのはそれよりもさらに前(作品で触れています、200〜600年前)、どう見ても「核融合ロケット無しで」作っていた時代が相当期間ある。これどう説明するかということで討論になったのですが、実は作者既に結論出していて、改訂版でそれを反映させたものなんですよね。「ガレオン船」という古式ゆかしい戦艦の名前は。宇宙帆船の戦列艦でしょう、多分。
ある意味、元の作品ではちょっといい加減、あるいは矛盾を感じる部分に答えを与えているのがこの作品です。例えば作品の基盤になっている「オニール博士のスペースコロニー」ですが、彼はあれに「1,000万人」居住できると主張していますが、土地取引の専門家でなくても「ちょっと問題ある」というのは常識あれば分かるんですよね。
その証拠に、オニール式コロニーの「外形」を描いた絵は沢山あるけれども、その「内部」をちゃんと描いた科学者の絵は構想40年経った今でも全く描かれていない。
私が常識的に考えても、オニール博士の構想ではコロニーの内部は「ガンダム」で描かれたようなものにはならないと思います。あれは都心郊外の町田あたりの光景に酷似していますが、あんな感じになるはずない。もっと高層建築を多用した、軍艦島みたいなものになると思います。
それに、建造についても言えますね。ガンダムくらいの「ちゃちい」ロボット、マゼランくらいの「ちゃちい」戦艦しか作れない文明、最大武器はせいぜいが核爆弾、その数もせいぜいが百隻くらいの単位で「一年戦争」とか言ってドンパチやっていたのですが、あんな程度の「文明」がコロニーなんか作れるわけない。菱垣回船や樽回船しか持ってないような江戸時代に関西新空港を作っているような「ギャップ」ってあるんですよね、私なんかには。
「なんでこんなすごいもの(コロニー)」を作れる地球連邦がいくらテレビとはいえ創造物からかけ離れた「原始的兵器」で戦争やっているのか、矛盾を感じないのかと私は作品を読んでいて気付かされましたが、行間を読んでいると「文明とは連続するものだ」という作者の考えがひしひしと伝わってきますし、少なくともテレビで説明された内容については、しごくオーソドックスな、マジメな解決を考えてるなと思いますね。たぶん、オフィシャル・非オフィシャルを含めて、彼の解決はいちばん「まとも」でしょう。そういう解決法の提示が、単に二次作品にとどまらない、この作品の「価値」だと思っています。
[15]「メガラニカ」でコケた福井投稿者:越川紀彦投稿日:2009年12月17日(木)
>利通さん
お書きの内容については、一読してみて私はUCを思い出したのですが、あの「メガラニカ」が出てきた時には「勝った」と思いましたね。あれは単にユニコの最初で説明された「コロニービルダー」だったのですが、実は武装した戦艦で、ピスト財団最後の砦というのは福井は執筆当初から考えていたでしょう。カトキの設定も細かかったし、でもね、あれをラストで実際に浮かべるとどうなるか、、
何でこれみんな気付かなかったんだろうと思いますが、「実際に浮かべてみると」これはそれまでの話に出てきた兵器全部合わせても対抗できないような「超巨大要塞」で、あんなもん、一財団が持つものじゃないでしょう。単に設定の物理的大きさを小説にトランスファーしただけなんですが、どう見ても「浮いている」んですよね、あの大要塞。
しかもご丁寧なことに福井は小説で「メガラニカ」の要塞部分は「コロニービルダー」の先端の一部分と書いている。でも、それでもこれは連邦艦隊全艦よりも質量がでかい。「ネェル・アーガマ」なんかほとんどゴミ。なまじ福井が細かく書いただけ、これは「どうしようもない」ものに見えましたね。
作者の小林さんや利通さんの指摘する「ギャップ」って確かにあるんですよね。その説明として福井メガラニカはあまりにも荒唐無稽だった。「メガラニカ」がUC宇宙に浮かんだ時、やっぱ考えていた人間とそうでない人間の差がそこにあったと思います。福井は浅はかだった、それを彼は作品で示してしまったんですよ。これは小林さんが「ヲタガンダム」に勝った瞬間だと思っています。
だから作品は残せと私は彼に強硬に主張したのですがね。それだけじゃないですが、いずれにせよ、我々の意見も反映してもらえ、改訂版を残してもらって良かったです。