MUDDY WALKERS 

銀河鉄道物語

 銀河鉄道物語(2003)各話レビュー

 第26話「遙かなる想い」(ディスティニー防衛作戦・後編)


あらすじ

 アルフォート軍の先鋒を打ち破ったビッグワン、が、フォレシスの巨大戦艦が出現し、絶望的な戦況にバルジは特攻を決意する。その時、死んだはずのルイが通信を送る。

 Aパート: 巨大戦艦出現、バルジ転進
 Bパート: フォレシスとの対決、ディスティニーでの再会

コメント

 冒頭から床に伏し涙ぐむレイラの場面、この期に及んで、この異能者は宇宙の平和のために何をしたのだろうと思うが、決め手になりそうで最後まで役に立たないのがメンヘラ社長のメンヘラたる由縁である。アルフォート軍の巨大戦艦と艦隊が現れたことで、レイラの裏人格シュラまで引きこもってしまう。
 マトリクス砲が限界に達し、より強大な本隊が現れたことで、バルジは乗員を下車させての特攻を決意する。が、敵巨大戦艦ではルイが巨艦の弱点を探っていた。負傷を押して司令室に出頭したジュリアが加勢し、学の進言を受けたバルジは計画を変更し、敵戦艦に乗り込んでの和平交渉を画策する。
 最後の最後に超巨大戦艦が出現して主人公らをどん底に突き落とすのは「さらば宇宙戦艦ヤマト」だが、銀河鉄道物語の場面に「さらば」ほどの絶望感がまるで感じられないのは、ささきいさおの威勢の良い歌もあるが、根本的な思想が両作品ではまるで異なるためである。学がフォレシスと運命について問答している間、体育座りのメンヘラ社長は司令室でいじけていた。
 フォレシスは側近トゥリルの裏切りで倒され、指揮官を失ったアルフォート軍は学の和平提案を受け入れて別宇宙に帰っていく。戦いが終り、再びブルースの墓を訪れた彼を父の渉や逝って行った多くの銀河鉄道の職員たちが出迎える。大きくなったらSDFになりたいという少年に、彼は父と兄から受け継いだボールを手渡す。
 全26話を通して回収されなかった伏線も多く、ラストもやや強引にまとめた感はあるが、それでも終盤付近は盛り上がり、十分に熱く、感動的な物語となっていたのは、物語というのは、やはり設定がどうのとか理論武装がどうのといった屁理屈ではなく、人と人との心のぶつかり合いを描き切ることに真髄があるからだろう。蒸気機関車が宇宙を飛んだり、鉄道公安員が銃や大砲を撃ったりするナンセンスさはひとまず置き、「銀河鉄道物語」は、この時代の作品として十分見ておく価値のある佳作である。
(レビュー:小林昭人)

作品キャラ・用語紹介

フォレシス巨大戦艦 
 縁起物の伊勢エビが巨大化したような外観のアルフォート軍の旗艦で、別宇宙から数百隻の艦隊を指揮していた将軍フォレシスの乗艦。イスタリオンの技術であるディメンション・ホールで宇宙から宇宙を通り抜けることができるほか、別宇宙から銀河鉄道のある宇宙にある別働隊を指揮できるなど高度な指揮通信能力を持つ。そのスケールは他のアルフォート艦を遥かに凌ぎ、銀河鉄道の軌道ステーションよりも巨大な威容を誇るが、技術レベルはイスタリオンより少し劣るアルフォートの技術で作られているためか、船体はコスモマトリクス砲の攻撃に耐えることができない(もっとも、1部、2部を通して、この砲の直撃を受けて原型を保っていたのはこの艦が唯一である)。反撃に転じたビッグワンにより 船体を破壊され、内部に潜入された上、その後生じた火災で完全に破壊される。原型となったガトランティス軍の超巨大戦艦と比べると、見掛け倒し観の強いB級ムードが出現当初から漂っていたのは作品のせいであり、曲射ビームなど適当な武器を持つが、銀河鉄道物語の世界でこの武装がどうのとか言うのは意味のない話である。

シリウス小隊 
 銀河鉄道001号のSDFの旗艦小隊、以前はアクルクス小隊がその任を担っていたと思われるが、旗艦列車ビッグワンの配備により全SDFの象徴として認知されている。そのため隊員は精鋭揃いと思われるが、有紀学やルイなど明らかに未経験の新人もいることから、アクルクス小隊同様の隊員教育の任も担っていると思われる。隊長は有紀渉(前シリウス小隊長)以降はSDF随一といわれるシュワンヘルト・バルジ、戦闘班長は射撃の名手ブルース・J・スピード、賭博好きの運転手ディビッド、医療スタッフにアンドロイド・ユキと一流のスタッフが揃っている。特にユキはシリウス小隊にしか配備ユニットがなく、高い医療技術のみならず新薬や治療法の開発まで行う超高性能ロボットである。その編成は攻防のバランスが重視され、攻撃力はアイアンベルガーに、情報収集力はフレイムスワローにそれぞれ譲るが、速度、パワーも含む総合性能はSDF随一である。いわば万能型の小隊。
 シリウス小隊は10年前のタビト事件で指令車両が失われ、また、アルフォート軍との戦闘でも大破しているが、その都度再建され、新車両、新隊員により現役に復帰している。SDFの中でもアクルクス小隊と並ぶ歴史のある隊と思われ、おそらく銀河鉄道創設当初から存在していたと思われる。隊の象徴はおおいぬ座の恒星シリウス、人類発祥の地、地球から8.6光年の全天中最も明るい星で、小隊の銀河鉄道における重要性を示している。

カオルmemo

 敵の大型戦艦を撃破したビッグワンの前に別宇宙から巨大戦艦が出現。敵将フォレシスが最後通告を突きつける。バルジは乗員を降ろし特攻を決意するが、学の言葉に思い留まり転進する。
「隊長、俺、ビッグワンを降りたりしませんよ」学の言葉を受けてユキもバルジに首を振る。バルジが有紀隊長のコートを羽織ったときから最後は特攻と思っていたが、ここに意外な展開があった。「我々は空間鉄道警備隊」、マイクを取ったバルジは銀河鉄道を守るために命を預けてくれ、とビッグワン総員に呼びかける。負傷した暁を学が助け、データ解析ができないビッグワンをスピカ小隊が助け始める。敵戦艦の通信室で転進するビッグワンを見たルイは、敵中枢部のデータをビッグワンに届け、ついに彼らは最後の総攻撃に着手する。
 一人の命の犠牲によって助けられる多くの命がある。本作冒頭の有紀隊長はそのことを教えたが、ラストで学たちが体現するのは、それとは別の生き様だった。「銀河鉄道は人の心を、思いを永遠につないで行く、宇宙のすべての命をつなぎ続ける無限の絆なんだ!」絆の力で巨大な敵に打ち勝つ。戦艦でなく機関車が、軍人でなく社員が戦うラストとして、これほどふさわしい形があっただろうか。

今週のメンヘラ社長


あなたは、あなたたちは・・・!

学!!

カオルのひとこと
 アルフォート軍との最終決戦はいよいよ最終局面を迎えます。しかし敵将フォレシスと対面し交渉するのは平社員の学・・・。メンヘラ社長はその超常能力で事の次第をすべて見ているようですが、学の危機にも「学!」と叫ぶだけで、結局床に倒れておしまいでした。有紀隊長のときには「一緒に逝きましょう〜」と連れ立って特攻していたのに、この差は何なのか? ディヴィッドやブルース、ルイなどさしたる思い入れのない社員や自分と主義主張の合わない社員は見殺しにする、どこまでいっても恐ろしいブラック社長だったのでした。

評点

★★★★★ 
学とルイの関係にきちんとケリを着け、ラストまで漕ぎ着けたことは評価。(小林)
★★★★★ 
どこかで見たような場面がてんこ盛りだが、絆で勝利するラストに喝采。(飛田)

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