戦いが終わり、破壊されたガルベストン首都の地下都市では、カポネーロを倒したダイラガーの周辺に民衆が集まっていた。
ナレーション 「宇宙暦2203年2月9日、ダイラガーを先頭に三惑星連合艦隊はガルベストンに攻め込んだ。激しい抵抗を退け、地下都市に突入したダイラガーは脱出しようとしたカポネーロを倒し、テレスの率いるゲリラ部隊は王宮を占拠してコルセール帝を死に追い込んだ。ようやく、戦火から解放されたガルベストンの市民たち。だが、ガルベストン星の崩壊は、刻一刻と迫っているのである、、」
テレス 「地球の諸君! ガルベストン司令官ソクラット・テレス、無条件降伏をする!」
パティが群衆の中にテレスの姿を認め、群衆から進み出た彼は連合軍に無条件降伏する。降伏を受諾した安芸はマシンを降りてテレスと面会し、ここでラガーチーム15人は初めてテレスと顔を合わせる。
安芸 「俺は地球銀河警備軍、安芸マナブだ。テレス司令、あなたのことは話で知っています。」
テレス 「安芸君、私もガルベストン軍司令官として、責任を回避するつもりはない。しかし、ガルベストンの国民には何の罪もない。どうか、寛容なる措置をお願いしたい。」
安芸 「しかし、、それはアシモフ司令が決断することで、、我々では、、」
テス 「私をアシモフ司令に会わせてください。」
テレス 「!!」
テス 「テレスに責任はない。彼はガルベストンを救うため、戦争を終結するためにコルセール帝を倒したのだ。」
背後から現れた白髪白髭の老人にテレスは動揺する。テレスにはまだ市民を救う仕事が残っていると言い、テスは安芸にアシモフへの仲介を頼む。
テス 「すべての責任は私にある。私は内務長官テスだ。地球の代表者に会わせてくれ。」
テレス 「父上!」
安芸 「父上?」
テレス 「安芸君、私の父だ。」
テス 「もうこのガルベストン星の命は尽きてしまう。指導者は倒せたが、市民を救えなければ!」
テス 「とにかく、この何も罪のない市民を救うことが、我々に残された最後の任務だ。」
「分かりました」、安芸はパティにテスをアシモフの旗艦に案内するように言い、テレスにアシモフはガルベストンの窮状を理解するはずだと話す。しかし、激しい戦いの結果、地球艦隊の戦艦も残り少なくなっており、すべての市民を収容することは不可能である。そこで地震が置き、マグマが市中に吹き出す。ガルベストン星の崩壊はもはや猶予のない所まで来ている。そして宇宙港では、アシモフが伊勢に今後の見通しを話していた。
アシモフ 「ガルベストン星の壊滅は時間の問題だ。万一この攻防戦で我々が敗れた時の事を考えて、地球への増援艦隊の派遣を要請してあるのだが、、戦いに勝った今、、」
伊勢 「では、増援艦隊でガルベストン市民を?」
アシモフ 「そうだ、しかし、この辺りの空間の状態が悪くて連絡が取れないでいる。もし彼らが来なければ、ガルベストン市民を全て助けるのは無理だ。」
伊勢 「来ます、増援部隊は来ます!」
パティ 「ガルベストン内務省、ソクラット・テス長官をお連れしました。」
パティがテスを彼らの部屋に案内し、座を勧めたアシモフの面前でテスは床に崩れ落ちる。土下座して市民の救出を頼むテスにアシモフは思わず走り寄る。
テス 「アシモフ司令、お願いです。ガルベストン市民をお助けください。この通りです!」
アシモフ 「テス長官! どうかお手をお上げください!」
テス 「ガルベストン市民には、何の罪もないのです。我々この国の幹部の野心が、このような結果を引き起こしたのです。私はどうなってもいい! どうか市民を助けて下さい!」
アシモフ 「分かりました、我が艦隊も今度の戦いでわずかしか残っていない。しかしたとえわずかでも、救出できる者は一人でも多く、救出します。」
アシモフ 「伊勢! 指揮を取れ!」
伊勢 「はいっ!」
テス 「、、、、」
伊勢 「長官! 増援部隊は来ます! 全てはこれからです! 最後の最後まで努力しましょう! パティ、急げ!」
パティ 「はい!」
テス 「申しわけありません、、」
敵と味方の和解がなった瞬間である。アシモフの命令で伊勢はラガーメンバーに市民を第3発進基地に案内するように命じ、全艦艇に基地に着陸して市民を収容するように命じる。一方、安芸らのいる市街地では、会談の間にも市街地が崩壊し、崩れ落ちた岩塊で市民が犠牲になっていく。「神に祈るほかありません。あなた方だけでも脱出してください」、どこか安全な場所はないのかという安芸に、テレスはこれがガルベストンの運命だったのだと嘆息する。そこにパティから連絡を受けた甲斐が救出作戦の開始を彼らに伝える。命令を受け、テレスとラガーメンバーは一致協力して市民たちを第3発進基地に誘導する。
テレス 「急げ! 第3発進基地だ!」
サーク 「皆さん! 急いでください!」
安芸 「市民の皆さん! 急いで第3発進基地へ移動してください!」
ウォルター 「第3発進基地に、急いでください!」
キーツ 「市民の皆さん! 第3発進基地で皆さんを収容します、急いでください!」
宇宙港に降着した旗艦では、アシモフがテスに市民の移住先として第37恒星系第3惑星を考えていると話す(アシモフは27恒星系と言っているが、37の間違いである)。かつてテレスが命を賭け、政府に武装放棄を強請してまで守ろうとした星を移住先とするというアシモフの提案にテスは驚く。可住惑星の最有力候補であり、地球側が熾烈な戦いでは決して渡さなかった星をアシモフは新生ガルベストンの新天地にするというのだ。
「あなた方の仕事はこれから始まるんですぞ!」、アシモフは第3惑星につき、政府との交渉をテスに約束し、テスとテレスにガルベストンの再興のために全力を尽くすことを求める。そして市民の収容作業が開始される。「女性と子供が先」、増援艦隊はまだ到着していないが、一人でも多くの市民を救うべく、ラガーメンバーは市民の収容に協力する。市民が乗船を始めたことで安堵した様子のテレスを指して、サークは安芸にテレスのあんな嬉しそうな顔は初めて見たと話す。
「お母さんを大事にするんだぞ」、子供の頭を撫でつつ、感謝する夫人を抱擁するテレスだったが、一方で厳しい現実もあった。船の数が明らかに足りない。「乗せてくれよ!」、乗船する女子供の近くで、後回しにされた男性がウォルターに抗議する。「増援艦隊は必ず来ます!」、民衆にそう約束するキーツだったが、本当に艦隊がガルベストンの崩壊までにやってくるのか知っている者は誰もいないのだ。そして乗船者を見送るテレスを厳しい視線で見つめる3人の人影があった。そして地中からマグマが吹き出し、続く地震で、乗船の開始で一時和やかだった宇宙港の雰囲気が殺気立ったものに変わる。
伊勢 「ガルベストン星崩壊までの時間は?」
サーチ 「5時間25分。」
戦艦ラガーガードでは、分析を終えたサーチにガルベストン消滅までの時間を告げられた伊勢が表情を険しくする。増援艦隊との通信は未だ不通で、もしこのまま連絡がとれなければ残された市民はどうなる? 尋ねる安芸に伊勢は「神に祈るしかない」と答える。
一方、地球を発した出羽の支援艦隊はガルベストン本星近郊にまで達していた。27話以来の総司令の出陣と、三惑星連合で恒星間航行可能な船を総ざらいして来援した新旧格式不揃いな艦隊は43話のテレスとの会談でガルベストン政府の暴政を知った地球側が戦略として組み込んでいたものである。そしてその頃、地下都市に降着していたアシモフ艦隊では収容人数が限界に達していた。
ウォルター 「ダメだ! 支援艦隊はかならず来る! 待つんだ!」
市民A 「そんなこと信じられねえよ!」
長門 「チーフ! もう一杯です! ストップしてください!」
ウォルター 「なにっ!」
キーツ 「んんっ!」
乗船活動の打ち切りで市民の間に落胆のため息が漏れる。地上に残ったテレスは収容を中止した戦艦ラガーガードを睨みつける。艦橋で眉間に皺を寄せている伊勢に収容現場から駆け上がってきたウォルターとキーツが抗議する。
ウォルター 「艦長! どうするんですか!」
キーツ 「このままでは全滅してしまいます! まだ多くの市民が発進基地に溢れています! このまま市民を見殺しにするつもりですか!」
アシモフ 「伊勢! 発進する!」
伊勢 「ええっ!」
キーツ 「そ、そんな!」
アシモフ 「伊勢! 発進だ! ガルベストンの未来を閉ざすことはできない!」
エンジンを点火して離床する戦艦ラガーガード、全員を助けることはできなかった。女性と子供を優先したといっても、それすら不十分にしか救出できず、艦内は重苦しい雰囲気に包まれていた。発進基地では残された市民たちが呆然として去っていく地球艦隊を見送っている。そしてテレスは怒りを込めた視線で艦隊が去った発進口を睨みつけるのだった。
しかし、降着していた艦隊がこのタイミングで地底深くの地下都市から離れ、ゲートを開門して地表に出たことは幸運であった。無線が回復し、すでにガルベストン星に到着し、地表付近でアシモフ艦隊を捜索していた出羽の支援艦隊と交信可能になったからだ。「状況を報告してくれ!」、アシモフから事情を聞いた出羽は第3発進基地に降下して市民を救出することを決め、伊勢は艦隊を誘導するためラガーチームに全機発進を命じる。そして、再び降下してきた艦隊とラガーチームをガルベストン市民は歓呼の声で迎える。
「神はいた、、」
今週の言葉はテレス司令、他の話はいざ知らず、この52話だけは筆者はこの言葉しかないと第1話のレビューを書く時から決めていた。ダイラガーの世界は現代の物語らしく、総じて神などいない世界である。戦いも後半になってくると、特にガルベストン側は情勢がどんどん悪くなっていくので、テレスなどが神に祈る場面はしばしば見られる。しかし概して報われず、超自然的現象のないこの世界では悪しき者は悪しき結果を刈り取り、全ての事象は人間の所為として物語が進んでいく。テレスや伊勢が神に祈っても、むしろ祈るだけ、それはもっと悪い結果で終わるというのはお約束のようなものであった。
しかし、最後のこの祈りだけは、制作者の方が奇跡を行うことを決めていたように見える。この世界では超能力(ESP)でさえ半信半疑でしか認めていない。当時の作品が「ニュータイプ」を前面に押し出した機動戦士ガンダムから始まり、超能力やエスパー現象を描くことがむしろ当たり前だったことを考えると、この作品の超常現象否定の姿勢は例外に属する。ガンダムのラストの場面、ニュータイプに目覚めたアムロがテレパシーで仲間の危機を救うような描写、そしてそのアムロが爆発する要塞の中、汚れを知らない幼児たちのテレパスに誘導されて救われるような「甘っちょろい」話を、この制作者は断固として認めていない。そういう物語であるから、最終話のテレスのこの一言は、ありえないことが起きたということで、ガンダムのラストのカツ・レツ・キッカたちの予知能力と同様、あるいはそれ以上のインパクトを作品で持つのである。
本当は、神などいないのかもしれない。しかし、ちょうど星の崩壊寸前にアシモフの艦隊とダイラガーがガルベストンの軍事力を僅差で粉砕したこと、全く同じ時にテレスが処刑されずに救出され、ゲリラが政府を倒したこと、皇帝ではなく、移民船の建造を監督(48話)していた内務長官ソクラット・テスが生き残ってガルベストンの市民代表になったこと、そして、ガルベストンの崩壊を見越していた三惑星連合が住民救出のための支援艦隊を仕立てていたこと、どれか一つの条件が欠けても、市民の救出は進まなかったに違いない。
例えばアシモフと会見したのがテスではなくベンチュラだったら、多分支援艦隊が来ても市民全員の収容は無理だっただろう。移民船団の計画を統括していたのはベンチュラではなくテスであったからである。また、このテスが潔く責任を認めて陳謝したことも政府崩壊後の無政府状態を回避する結果に繋がっている。そして、三惑星連合が住民を収容するのに十分な隻数の船舶をガルベストンに送っていたことは、21話での銀河警備軍の長官若狭による対ガルベストン戦における三惑星連合側の大義があったからである。若狭がカポネーロのような人物だったら、第三連合艦隊は戦闘艦隊しか派遣しなかっただろう。
そして、その艦隊の指揮官に収まった出羽がカポネーロと違い、自ら率先して後置部隊の指揮を取るような人物だったことも幸いした(27話)、危険な宙域に官民含む雑多な船団を送り込むことは部下任せでできることではなく、総指揮官自らがやらなければいけないことだからだ。三惑星連合が市民救出に意を用いるのは、43話でテレスとアシモフが会談したからである。また、24話でのテレスとサークの出会い、テレス軟禁後にゲリラを組織して彼を救出したこの女性の存在がなかったら、ガルベストンは戦いの最中に滅びていたに違いない。こういったことの一つ一つに思いを巡らしたテレスが降下してくる支援艦隊の艦影を見て、神の実在を信じる言葉を発したことは無理のないことである。
支援艦隊が到着し、タイムリミットまでの住民救出に一定の目処がついたことにテレスは安堵し、ラガーメンバーは嬉々として乗船する市民たちを避難船に迎える。これで避難船が惑星を離れれば、ガルベストンと三惑星連合の市民は和解し、全てが終わるかに見えた。しかし、この物語は実はそれでは終わらなかったのである。
救出作戦が再開されたことを見たテレスは踵を返すと、しばらく人混みを離れる。乗船が進み、すでに宇宙港も人影がまばらになっていた。とある一角に近づいた彼は、前方から走り寄る3人の人影に気づく。
「そこで何をしている! 早く艦に乗ってこの星を離れるのだ!」
物陰に潜んだまま、動かない3人にテレスは近づく、早く退去するように声を掛けた彼は3人の手に握られている凶器に絶句する。
「裏切り者め!」
「死ね!」、突然暴漢がナイフを取り出し、立ちすくんでいるテレスに襲いかかる。「なぜだ、、」、脇腹に3本のナイフを突き刺されたテレスは苦悶の声を上げる。
テレス 「なぜだ!」
暴漢A 「お前は裏切り者だ!」
暴漢B 「お前たち幹部がこの星を破滅に追い込んだんだろ?」
シム弟 「俺の兄さんシムも、お前たちのために死んだ! お前たちが勝手に拡大した戦争でだ!」
テレス 「シム? そうか、、お前がシムの弟か、、」
シム弟 「俺たちはお前を許さない。お前が笑ってこのガルベストンを出ていくのを許さない! この星と道連れにしてやる!」
テレス 「ぐうっ、、分かった、、ガルベストンがこのようになったのは、私たちのような司令官が無力だったからだ。私は君たちを恨まない。君たちに責任はない、、早く艦に乗ってこの星を離れるんだ、、」
暴漢A 「いやだ! 俺たちはこの星に残る! この星と運命を共にするんだ! 敵である地球の情けを受けて、生きたいとは思わないんだ!」
テレス 「なにいっ!」
暴漢たち 「!!」
テレス 「貴様らーっ! 何を甘ったれたことを言っているんだ!(立ち上がる)」
暴漢たち 「うわあああっ!(後退りする)」
テレス 「(シム弟に掴みかかる)こんな所で死んで何になる! 死ぬのは私一人で十分だ! お前たち若者が新しい星へ移って、ガルベストンを再興しなければ誰がやる! 頼む! ガルベストンを再興してくれ! ガルベストンを、、」
暴漢たち「わあああああーっ!(逃げる)」
テレス 「責任は私が取る、、(息絶える)」
テレスがいなくなったことに気づいたサークはゲリラたちと共に彼を探す。人気のない場所から走ってきた3人の若い兵士がサークの顔を見て怯えたことを見て、サークは3人が走ってきた方向に駆け出す。「安芸、サークの様子が変だぞ」、駆け出したサークに、収容作業を行なっていた安芸たちも異変に気づく。そしてサークは宇宙港の一角でこと切れているテレスを発見する。すでに惑星の大地からはマグマや水蒸気が吹き出していた。倒れ伏しているテレスの遺体を見て、サークは呆然と立ちすくむ。「なぜ、、」、サークは思わずテレスに抱きつき、その頭を掻き抱く。
「なぜ! やっとあなたが願い続けたガルベストンが生まれる時が来たというのに! ガルベストンの再興を見ないで死ぬなんて、あなたは何のために!」
「サーク、それは違う!」、その時、安芸の声がし、サークが顔を上げると嗚咽する彼女の周りに安芸たちラガーメンバーが集まっていた。
「テレスは生きている! 君たちや僕たちの心のなかに、ガルベストンの再興を願う国民の中に、永久の平和を願う全世界の人々のために!」
「これは僕たちの平和を守る誓いの印だ」、安芸はハルカのペンダントをテレスの前に置き、サークにテレスの遺志を継いでガルベストンを再興するように促す。そして彼らはガルベストン星を離れる。
安芸 「俺たちにとって、初めての戦いだった、、」
ウォルター 「しかし、こんな虚しさを感じたのも初めてだ。」
キーツ 「「戦いは虚しさしか残さない、勝っても虚しい、、」
崩壊していく惑星から離れていく艦隊で、安芸たちは戦いの虚しさについて語り合う。アキレウス星で初めてガルベストンの部隊と遭遇してからすでに2年余、長く続いた戦いはガルベストン政府とガルベストン星双方の崩壊で幕を閉じた。一つの星が今、滅んだ。しかし、それはようやく戦火から解放された三惑星連合と、第3惑星で再出発を目指すガルベストンの人々にとっては、共に手を取り合って新時代を築くことができる、新しい「銀河の夜明け」でもあった。こうして、機甲艦隊ダイラガーの物語は幕を閉じる。
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愛を伝える旅(エンディングテーマ) |
作詞:藤川桂介/作曲:横山菁児/編曲:横山菁児 歌:川津恒一
名もない花をいたわるように
見知らぬ命 守れるか
旅に出る時 贈ってくれた
君の言葉をわすれない
星から星へ 人から人へ
あふれる思いをしあわせを
勇気にかえて 伝えたい
君の心を 伝えたい
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