より複雑な世界の動き、
その世界にコミットしていく
マシュマーとハマーンの動きに注目。
女性としての幸福と平穏な日々を得た彼女が、再び表舞台に引き戻されるところで第一部は幕を閉じます。続きを心待ちにしておられる読者の皆さんに、第二部の見所をご紹介ください。
■小林 第一部と比べると第二部は三年後の話で、よりテンポの早い話になっています。見所といわれましても、作者としてはどの場面も見所で、それぞれに感慨がありますが、やはり注目点は第一部よりさらに複雑な世界が描かれていること、そして、その世界にコミットしていく二人の主役の動きでしょうね。
特にハマーンについては彼女の立場は第一部よりもより重要なものになっています。マハラジャという後ろ盾を失った彼女が難局をどう切り抜けていくか、そして、マシュマーとの関係を女性としてどう守っていくか、女性から指導者に成長していく彼女がやはり第二部の見所でしょう。
ありがとうございました。
ガンダムの続編、あるいは外伝を謳った作品は数多くオフィシャルなものからファンノベルまで数多く制作されていますが、こうした作品を手掛けるときのこの世界独特の「お約束」があります。それは、宇宙世紀の公式年表に従い、既存の作品で描かれたことをすべて前提として受け入れなければならないということです。しかし、それらはみな「Zガンダム」の時代に作られた古い土台、古い対立構造の延長線上に作られているために、現代をとりまく情勢や課題、人々の内面に本当の意味で届いていくものになっていない、ということがありました。
そんな中、本作はまったく違った大胆なアプローチと綿密な分析をもとに、ガンダム諸作品の土台となっていた部分を壊して新たな息吹を吹き込みました。そのことで、宇宙世紀という舞台が、かえって「リアル」なものとなって私たちの前に立ち返ってきた、ということを、インタビューを通して感じることができました。その意味で、本作を通して小林昭人さんが成そうとしているのは、今や死に絶えようとしている宇宙世紀ガンダムの「蘇生」といえるかもしれません。
ファーストガンダムで提示された宇宙世紀の舞台装置や「Zガンダム」から本作に移植されたモビルスーツ等は決して斬新なものではありませんが、その背後にある世界観、またマーケティング戦略を新しく構築していくことで、古いものが斬新なものとして蘇るところを、本作で皆さんも目の当たりにしたことと思います。だからこそ、この作品は「オリジナル」と名乗るにふさわしいということに、誰も異論はないでしょう。
(インタビュー・構成/飛田カオル)
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