◇MUDDY WALKERS
SF小説”An another tale of Z” 各話レビュー
◇現代〜0098・エイジャックス/ソロモン国防省 エウーゴによる輸送作戦の成功で、オーブル軍は大攻勢を仕掛けている。そんな中、アガスタ大統領はソロモン艦隊に、アガスタのコロニー「シャリア」を出てコロニー「ボジヌルド」へ移動するよう命じる。しぶしぶ命令に従うマーロウだったが、ボジヌルド周辺宙域は最小10キロ程度の隙間しかない狭い宙域で、ブッダ艦長は不安を憶える。近郊には、宇宙世紀以前に起こったレギオン戦争の戦跡であるストーン・リッジがあった。 一方ソロモン国防省には、ジオンで再度勃発したクーデターに関する報告が届けられていた。 ◇現代〜0098・エウロパ/専用船ラ・コスタ 遠く離れた木星の衛星、エウロパにいたハマーンは、MCVのテレビ中継で、クーデターの勃発を知る。首都星ズム・シチは、ジオン陸軍と宇宙艦隊とが対峙していたが、テレビでは、ハマーンの改革によっていかに格差が拡大し、職にあぶれたかつての中産階級が悲惨な目に遭っているかが延々とレポートされていた。ハマーンは、改革の中で置き去りにされ、あるいは自由化と規制緩和のあおりで転落の憂き目にあった人々の状況を目の当たりにして愕然とする。頭を抱えるハマーンに、「君は帰るべきだ」と声をかけたジュグノーは、そっと肩を抱き、ハンカチを差し出すのだった。 ◇現代〜0098・ズム・シチ 深夜のオフィスで、明日の新聞のコラム欄を執筆していたセイラ・マス。コラムはクーデター派の計画により多くの市民が公園で野宿を強いられた実態や宮殿占拠後に証券取引所が破壊され、株式市場が事実上崩壊したこと、にもかかわらず比較的穏健に進んでいるクーデター派の動きなどを伝える内容となっていた。そのとき数個のケースを手にしたブロッホ将軍がアルテイシア新聞社を訪れ、節度ある報道と取材の自由を認める、というクーデター派の意向を彼女に伝える。将軍が去った後、セイラは宇宙艦隊司令部に面談希望を申し入れ、クーデター派とハマーン派に分かれてにらみ合っているジオン陸軍と宇宙艦隊の交渉の仲介役を買って出ることを申し出た。
◇現代〜0098・ソロモン派遣艦隊VSティターンズ艦隊 タイロンを制圧され、いよいよ追いつめられたティターンズ艦隊。ガディ・キンゼー大佐はサイド2脱出を企図するが、そこにソロモン派遣艦隊の司令官、エドワード・マーロウが立ちふさがる。旗艦エイジャックスは、実は巡洋戦闘艦と小型空母が合体した複合戦艦だったのだ。マーロウの意図を悟ったガディは自ら操縦桿を握り、他のティターンズ艦隊をテッド・アヤチ大佐に委ねて単艦でエイジャックスを阻止することを決意する。しかし、実はその作戦には裏があった。 エイジャックスの船体を分離させたマーロウは、分離した巡洋戦艦「エイジャックス・ファルコン」でガディの操るアレクサンドリアを追撃する。切り離された空母部分「エイジャックス・イーグル」を指揮するのは艦長のブッダ大佐。彼はロンバルディアの艦長となってエウーゴ艦隊を指揮するエマ・シーンと連絡を取り、ティターンズ艦隊を迎え撃つ。ソロモン・エウーゴ連合軍はティターンズ艦隊を圧倒するが、その戦いの果てには思わぬ悲劇が待ち受けていた。 ◇現代〜0098・専用船ラ・コスタ捜索隊 コロニー「アルカスル」のテレシコワ港で修理を終えた戦艦アーガマ。グラナダからアルカスルへ向かう際、ガディの猛攻を受けて艦は半壊、主砲は折れてしまったが、竜骨は無事で航行に支障はない。アーガマに飛び乗ったブレックス准将は、一路アクシズへ進路を取るよう指示を出した。ジオンの宇宙艦隊司令リューリックからの命を受け戦艦グワンランでハマーンの乗るラ・コスタ回収に向かっているグスマンと会合するためである。操舵輪を握るのは派遣をやめてエウーゴに復帰したトーレスである。一方、ソロモン共和国軍の火星・イプシロン基地からは、太陽系外周艦隊の巡洋艦シーハウンドが戦艦グワンランと合流すべく出港していた。 その頃、ハマーンはジオンへの帰路についていた。まだ行程の3分の1までしか来ていないことに苛立つ彼女のもとには、国際情勢の資料のほかに、夫の近況をとらえた写真も届けられていた。
◇現代〜0098・ズム・シチ クーデターが始まって3週間が経過し、アルテイシア新聞社では編集会議で記者から政変後の状況について次々と報告されている。グレミーを中心とした暫定統治委員会の動きは早く、行財政改革はまったなしで進められている。以前ブロッホ将軍の案内でセイラの見た満員のシェルターが、今は閑散としているという。そんな中、新聞社にブロッホ将軍が訪れ、社主のセイラは彼と連れ立ってズム・シチの街へと出ていくのだった。クーデターの状況や今後の方向性について話すブロッホの姿に、セイラは父ジオン・ダイクンに似た何かを感じる。 摂政となったグレミーは、自身が傀儡という立場になってしまったことに気付き悶々としていた。愛機バウでズム・シチ上空を飛行することぐらいしかすることがなく、政権内での役割といえば詔書を言葉通りに読み上げるだけのものである。一方、そんな彼を操る黒幕マチアス・フォン・フリッツは兄である大蔵大臣ギュンターの家に入り、兄への個人的な復讐心を新たにするのだった。 ◇現代〜0098・専用船ラ・コスタ捜索隊 イプシロン基地から出た太陽系外周艦隊の巡洋艦シーハウンドは、次々と来襲してくる海賊船と戦っていた。支援に駆けつけたエイストラとともに海賊船を大破させるが、エイストラは燃料欠乏のため帰還を余儀なくされる。オルドリンのソロモン沿岸警備艦隊司令本部で指揮を執るマクニール大将は、外惑星の直航航路に出没した60隻もの海賊船から、いかに航路とハマーンの乗るラ・コスタを守るかという作戦に思いを巡らせていた。そんなとき、センサーが一隻の中型艦の機影を捉える。
◇現代〜0098・オルドリン/ズム・シチ オルドリンの首相官邸で、リーデルはマクニール大将から海賊船殲滅の報告を受ける。救援に向かったエウーゴの戦艦は主砲が損傷したままのアーガマで、リックディアスで出たクワトロは8隻もの海賊船に捕捉され窮地に陥っていた。海賊船といっても連邦軍の正規軍なみの戦艦が揃っており、ラ・コスタを守り切ることは至難かと思われたが、そこにソロモンの太陽系外周艦隊が現われ、見事海賊艦隊を退けたのだ。リーデル首相はマクニール大将に、この件で活躍したブレストンらへの叙勲を約束する一方、ハマーンが亡命を希望するなら受け入れる意志があることを明らかにする。続けて行われたMCVの番組「炉端談義」のインタビューでジオン情勢について問われたリーデルは、「上からの改革を志向するバマーンには、改革を優先し国民の窮状を放置した罪がある」と明言した。一方MCVのベルトーチカ・イルマは、ソロモン国防省でのインタビューを終えた作戦部長マシュマーに、浮気現場の写真を突きつけてどうするつもりなのか、と詰問する。 そのころズム・シチではジオン陸軍主催で「アリスタ式」の大規模な集会が開催され、100万人もの群衆が、討論会を聞こうと会場につめかけていた。ノルマン・ケムスキー博士は討論で、資本主義がどのように破綻しているか、ジオンの労働問題を取り上げて解説。うつ病患者を量産しなければ成り立たない粗悪なビジネスモデルだと糾弾し、為政者への抗議を呼びかける。シュプレヒコールに沸き立つ集会の様子を醒めた目で見ていたグレミーは、ついに首都脱走を決意するのだった。 ◇現代〜0098・専用船ラ・コスタ/戦艦サラダーン エウーゴとソロモン共和国軍の救援で無事海賊船襲撃の窮地から脱したハマーンだが、ラ・コスタ船内でジオンでの集会、そしてリーデル首相の「炉端談義」を観て、自らの評価と 、ソロモンの後ろ盾を失ったことにショックを受けていた。マシュマーにさえ裏切られた彼女だが、地球圏に無事帰還を果たし地球を背後に浮かぶ故国ジオンのコロニーを臨み、首都奪還のために戦うことを決意する。 ズム・シチに帰還したハマーン一行はハーフェン宇宙港を根拠地に抵抗を続ける宇宙艦隊に迎え入れられる。首都奪還のための作戦を練るハマーンの胸にはしかし、迷いがあった。グレミーの離反を信じられない気持ち、さらに「彼らはなぜ戦うのだ」という疑問。そこへグレミー逐電の一報が飛び込んでくる。立ち上がった彼女は、「公王は余一人である」と宣言し、ハーフェン宇宙港は兵士たちの歓呼の声に包まれた。
これは、アルカスルの田園地帯、ザパドノに暮らしていた少年ジェーニャと少女イザベルとが、失われた実りの大地を取り戻すまでの物語である。 0057年、ザパドノは一面の小麦畑であった。畑のあぜ道をゆく二人の少年は、農場主であるバトレーユ家の娘について噂していた。そこへ当の本人が、買ってもらったばかりのポニーに乗ってやってくる。少年の一人、ジェーニャはイザベルの言葉に従い馬を引き、もう一人の少年は去って行く。その横を通り過ぎたリムジンには、イザベルの父と科学省からやってきた技官マイッツアー・ロナとが乗っていた。技官はまもなくサパドノが凍土の地と化すことを説明し、補償を受けてここを立ち退くように説得するが地主は耳を貸さなかった。 0079年、一年戦争でジオンの侵攻を受けたサイド2「ガイア」では、アナトール・マックスのもと結集した諸勢力がジオン軍と戦闘を繰り広げていた。小麦畑を歩いたかつての少年と少女は、コロニー「オムスク」の酒場で思わぬ再会を果たす。ジェーニャはマックスの軍で部隊長、そして女優となったイザベルは、慰問団の一員となっていた。荒んだ生活をしている様子のイザベルに、彼女がジェーニャの愛称で呼ぶ部隊長、バンベドフはザパドノ復興を約束したマックスについて熱く語るのだった。 0098年、ガイア統一を目指す戦いは、勝利を目前にするところまできていた。テレビのインタビューに応えるオーブル軍の将軍バンベドフの手には、ネロ・バートンの「同志バートン語録」が握られている。バートンが、ザパドノ復興の必要性を語った言葉が記録されているのだ。アガスタ大統領となったイザベル、そしてオーブル軍上級大将のバンベドフ。二人の“勝利”もまた、目前となっていたが…。
◇現代〜0098・首都攻防戦 クーデターを起こしたグレミー軍の総司令官は、ジオン正常化同盟でマ・クベから「大タイタン」の称号を授かったベール将軍である。ジオン正常化同盟は一年戦争後のジオンにおいて、ジオンとスペースノイドの理想を実現するために結成された秘密結社であった。将軍が25万人の陸軍兵士を前に演説すると、ジョニー・ライデン少将の命で戦闘準備が整えられ、やがて600の砲門が火を噴いた。対する女王軍の総司令官リューリック中将は、ベールの堂々たる演説を聴き終わるとただ一言、「前進せよ」と命じ、ハマーンの首都奪回に向けた戦いの火蓋が、切って落とされる。重厚な布陣を敷き、高い士気で戦いに望むグレミー軍は女王軍に対して優勢に立つが、陣地を視察し兵士を鼓舞するベール将軍が体に不調を憶えたそのとき、グレミー軍には一瞬の隙が生じていた…。 ◇現代〜0098・宮殿包囲 社主のセイラとともに新聞社屋から市街戦の様子を見ていた記者たちは、敗走するグレミー軍と行進してくる女王軍を目の当たりにする。やがて新聞社の前に装甲車が停車すると、女王軍の提督がやって来て、セイラに節度ある報道と取材の自由を認める、と言い渡すのだった。セイラはその提督、タケイ少将にハマーン宛の親書を託す。一方ゴットンとブロッホは敗戦が確実となった後も徹底抗戦を覚悟し、宮殿に籠城して抵抗を続けていたが、ジョニー・ライデン少将に連れてこられた首相補佐官フリッツは、武器弾薬も尽き果てた部隊の状況を見てとり、ついに降伏を決意する。 ◇現代〜0098・首都掌握 ホテル「ベルリン」に仮司令部を置いたハマーンは、激戦の後始末に追われていた。徹底抗戦を続けるゴットンとブロッホについて、ハマーンはダイクン首相に「なぜ彼らは余に抵抗する?」と問い掛ける。やがて降伏し、彼女の前に引き出されてきたフリッツだが、そこで意外な真相が明らかになる。反乱士官のゴットン、ライデン、そしてブロッホの処遇について、ハマーンは難しい決断を迫られることになる。 ◇現代〜0098・激戦のあと リューリック中将が女王救出と引き換えにエウーゴ支援を確約していたことから、ハマーンはサイド2の戦場に赴き、オーブル軍によるガイア統一は決定的となる。やがて、マシュマーのもとに、ジオン会計検査院のトップとなったペリー博士から講演依頼が舞い込んでくる。ハマーンの今の心の内を知る由もないまま、マシュマーは女王が返り咲いたジオンの首都、ズム・シチに向けて旅立つのだった。
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