◇MUDDY WALKERS
SF小説”An another tale of Z” 各話レビュー
◇一年戦争前史〜0068年・アルスカル 0063年、作家としてサイド2「ガイア」のコロニー、アルカスルを訪れたジャミトフ・ハイマンは、サイン会に滑り込んで来たガイア科学省の技官、マイッツァー・ロナと出会った。それから5年後、政治家となったジャミトフはアルカスルを再訪し、彼の主催する政財界若手エリートの会合「金曜会」の一員として招いたマイッツァーから返礼を受けていた。その会合の席で、マイッツアーはアルカスルのザパドノ地域を凍結させた経緯を説明する。 ◇現代史〜0098年・アルカスル/ソロモン アルカスルの凍結地帯、ホロドノスチではオーブル結成同盟とクロスボーン・バンガードが激しい戦闘を繰り広げていた。ソロモン共和国では、サイド2「ガイア」に属するアガスタ共和国からの要請を受け、派遣艦隊の編制が行われており、作戦部長のマシュマーは、艦隊司令に親友でもあるマーロウを指名しようとしていた。このようなソロモン軍の動向を探るべく、オーブルから一人の少女が偵察のため難民になりすましてソロモンに入国した。彼女は開放的な雰囲気や勤労権を保障する同国のシステムに驚きながら、諜報活動を始めるべく国防省へ向かう。一方、少女の出身地では、父ウズミラがエウーゴの派遣艦隊を受け入れるべく、ブレックス准将を戦場へと案内していた。ブレックスはそこで、困窮する市民、モビルファイターを駆使するクロスボーンに対して人海戦術で挑むしかない悲惨な戦い、そしてウズミラによる上級大将粛清の現場を目の当たりにする。
◇一年戦争前夜〜ジオン侵攻へ〜0079年・ソロモン/アルスカル 0077年、ジャミトフ主催の「金曜会」で知り合ったガイア科学省のマイッツァーとヘンデルは、ジオン、ガイア、ルウム3国の合弁事業の打ち合わせのため、ルウムの首都オルドリン市を訪れていた。打ち合わせ後の食事の席で、ヘンデルはジオンの合弁事業への参画中止をマイッツアーに告げた。その2年後、一年戦争が勃発。サイド2ガイアはジオン公国による侵攻の危機に直面する。マイッツアーは議会で義勇軍による抗戦を呼びかけるが、議員たちの関心はすでに戦後の利益配分に向けられていた。限界を悟ったマイッツアーは、息子で彼の補佐官を務めるガロッゾとともに、フロンティア疎開計画を実行に移すことを決意する。 ◇現代〜0098年・ソロモン/クロスボーン・バンガード オーブルから工作員としてオルドリンにやってきたカガリナは、ソロモン共産党本部を訪れて職探しについてアドバイスを受ける。ソロモンの求職システムは、労働者がその素質と意欲にふさわしい職に就き、能力を発揮できるよう雇用企業に責務を求めるものとなっていた。カガリナはその中から、求職者に求める能力ランクが低く回転率の高い「ヤクルート社」に目をつけた。一方、サイド2のコロニー「フロンティア01」に本拠地を置くクロスボーン・バンガードは、ガイア時代に反ジオン同盟を結成した2月18日の「抵抗記念日」を迎え、観閲式が行われていた。その科学力の粋を結集して造られた潜宙艦の艦長となったザビーネ・シャルは、作戦決行を前に士気を高めていた。
◇現代〜0098・ソロモン/アガスタ派遣艦隊 ヤクルート販売員となって諜報活動を始めたカガリナは、ソロモン共和国軍のアガスタ派遣艦隊の情報をオーブルの首都テレシコワの共産党本部に報告し、さらなる情報をつかもうと、出航前でにぎわう宇宙港に屋台を出して偵察活動を続けている。アガスタ、クロスボーン・バンガードの両国はそれぞれに、自国の立場を表明するテレビCMをソロモンでひっきりなしに流している。そんな中、アガスタ共和国に向けて出航した戦艦エイジャックスを旗艦とするソロモンの派遣艦隊だったが、司令官のマーロウは艦隊進路が漏れていることに気付いていた。 ◇現代〜0098・クロスボーン・バンガード/アガスタ 潜宙艦「ネクロスIII」艦長ザビーネ・シャルは無制限作戦の開始を受け、サイド2に向かう航路を航行する輸送船への無差別攻撃を開始。アガスタ共和国大統領イザベル・バトレーユは、ソロモンのみならずサイド4ユニオンにも支援を要請し、これに応じてローラン提督を司令官とする派遣艦隊がアガスタに向かって航行していた。これに対してクロスボーン・バンガードを支援するティターンズも戦力を投入、アガスタに向かってくるソロモン、ユニオン両艦隊にクロスボーンとティターンズが狙いを定める。
◇現代〜0098年・ケネディ宇宙港〜ハマーンの旅 引退した前連邦第一艦隊司令官のアレクシス・ド・ブルックス退役大将は一人旅の途中、保養旅行の途上にあったハマーンと出会い会話を楽しむ。その中でハマーンはクロスボーン・バンガード成立についてブルックスに尋ね、パシフィック正統政府、アガスタ共和国、十二市国、アリスタ共和国、オーブル結成同盟、そしてクロスボーン・バンガードといった諸国が乱立することになったガイア分裂の歴史をひもといていく。 ◇ガイア戦後史〜0083年・アルカスル 一年戦争後、ガイアにはパシフィック統一政府が成立し、元オムスク市長で自由党のアナトール・マックスが初代統領に就任した。しかし0082年の冬、彼は急逝し次期統領を決める選挙が行われる。事実上人民主義者ネロ・バートンと自由党副党首のアジール・サルラックの一騎打ちとなった選挙はバートンが得票を伸ばしてゆく。これに対して人民主義に政権を明け渡すことを恐れたサルラックは開票結果を待たずしてオムスク軍を動かし、ハデス大佐にパシフィックの戦艦を確保させた。選挙に勝利したはずのバートンは逮捕され、免訴されていたはずの罪で死刑判決を受ける。しかしその法廷でバートンは裁判長に銃口をつきつけるのだった。バートン派のテロとサルラック派の無差別攻撃で市街地は焦土と化し、もはやガイア分裂は避けられないと悟ったマイッツアーに、中道党のフォレスタルは現在の政府からの離脱を提案する。折しもフロンティアを訪れていた連邦下院議員のジャミトフ・ハイマンは、連邦政府がフロンティア全域を借り上げて租借地とする計画を話、事実上の独立を果たすよう薦めた。こうしてパシフィック政府の分裂は決定的となっていく。
◇一年戦争末期〜戦後史・ソロモン要塞/ズム・シチ 0079年、一年戦争末期。ジオンの要塞ソロモンが陥落し、連邦軍は次なる目標、ア・バオア・クー攻略に向けて着々と準備を整えていた。第七艦隊を指揮していたブルックス大将は、ここで「スコルピオ事件」と呼ばれる怪事件に遭遇する。突如戦艦スコルピオが制御不能となり、要塞に激突したのだ。その原因は戦艦の製造上の欠陥とされたが、戦後、ジオンの首都ズム・シチに駐留した際、彼はその真相を知ることになる。 連邦駐留軍司令部の治安部長を務めることになったブルックスは、ジオン大学学長のギュネイ・ガトー教授から内務省参事官、マハラジャ・カーンを紹介される。鋭い眼光を放つその痩せぎすの男は、「ジオンに憲法を作る」と提案し、ブルックスを驚かせる。公王制を存続させた立憲君主型の憲法を作るというのだ。戦争を起こした国の元首の地位が存続することにブルックスは疑念を抱くが、立憲君主制であるべき理由を語るマハラジャの明瞭な意思と、連邦が新生ジオンの成立に関わるべき、と役割分担を求めるギュネイ教授の地に足のついた姿勢に心動かされたブルックスは、このチームでジオン公国憲法の制定、そして新生ジオン国家の成立をサポートしていくことを決意する。 ◇現代〜0098年・サイド2行き航路/ズム・シチ 派遣艦隊の後に続いてアガスタのコロニー「シャリア」に向かっていたエゼルハート・カーター少将は、乗艦「ウパニシャッド」を沈められ、グラナダ宙運の輸送船に救助された。ここで、かつてエウーゴでアーガマの操舵手を務めていたトーレスと再会し、臨時雇いとしての彼の処遇を目の当たりにして疑問を抱く。一方、保養旅行を終えたハマーンは、宇宙港で義弟、グレミー・トトの出迎えを受けるが、彼の様子に異変を感じる。
◇現代〜0098・クロスボーン・バンガード/ソロモン ハマーン暗殺事件の狙撃犯、ジェフ・ゴールドマンは一年戦争に従軍し、心に大きな傷を負っていた。もし、戦後に適切な治療を受けていたなら、ドロップアウトして闇の組織の手先になることはなかっただろう。そうした思いから、パイエス夫人が設立したジェフ・ゴールドマン療養所で、クロスボーン・バンガードからの亡命者、フィリポ・ツベクロマが療養生活を送っている。療養所を訪れたマシュマー・セロはパイエス夫人の案内で、ツベクロマと面会した。彼は心身に深い傷を負っていた。マシュマーに、その原因となった恐るべきクロスボーン・バンガードの教育・人材登用制度について語った彼は、ある計画をマシュマーに打ち明ける。 ◇現代〜0098・アガスタ/サイド2ガイア宙域 ソロモンからの派遣艦隊は到着したものの、クロスボーン・バンガードの無差別攻撃が開始されて以来、アガスタに至る航路を通過する船の数は激減したままだった。大統領のイザベル・バトレーユは、このことについて補佐官を務める夫イチローに自身の見解を聞かせる。交易国家であるアガスタにとって、航路の通行量の激減は国家の存亡に関わる問題である。しかし、ソロモン艦隊は航路の防衛のために派遣されたわけではない。ならば、ソロモン自身がクロスボーン・バンガードと戦うように仕向ける、というのが彼女の戦略であった。イチローは、大統領の意を受けて闇の組織との接触を図る。 一方、派遣艦隊ではゲアリ中佐とビシェッツ中尉がリック・ディアスでサイド2宙域を哨戒飛行していた。20を越えるコロニー国家がひしめく複雑な宙域には、それだけでなく、過去に起こった核戦争の戦跡ストーン・リッジもある。3日後、自身が隊長となったビシェッツは3機のガリバルティと哨戒飛行中、センサーに反応があったことを受けて調査に向かう。
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