MUDDY WALKERS 

メジャーリーグ Major League

メジャーリーグ 1989年 アメリカ 107分

監督デヴィッド・S・ウォード
脚本デヴィッド・S・ウォード

出演
トム・ベレンジャー
チャーリー・シーン
コービン・バーンセン
ウェズリー・スナイプス ほか

スト−リ−

 インディアンズの新オーナーはフランチャイズの拠点をクリーブランドからマイアミへ移すために、三流プレイヤーばかりを集めて故意にチーム最下位を狙うが、それを知った選手たちは一致団結リーグ優勝を目指す。

レビュー

 公開当時、確かこの映画にものすごくハマった気がする。万年Bクラスの落ちこぼれ球団が、 オーナーの悪巧みにも負けず、見事地区優勝を果たす。弱小球団ファンにとってはたまらない展開だからだ。それも、実際に34年間も優勝から遠ざかっている、クリーブランド・インディアンスというアメリカの実在の球団の話である。思わず阪神タイガースに思いを重ねて観た人も多いのではないだろうか。  しかしあれから10数年の歳月が流れ、球界も変わった。売れ残りを寄せ集めた「東北楽天イーグルス」という球団が38勝97敗、勝率2割8分1厘(2005年)という悲惨な成績を残したり、千葉ロッテマリーンズが31年ぶりに優勝したり、阪神タイガースが3年で2回も優勝したり(ともに2005年)と、予想もしていなかった現実がある。今ふたたびこの映画を観ながら、どこか冷めた気分に なっているのは、映画がつまらなくなったのではなく、映画より現実が面白くなったからだと考えてみる。

 野球映画には「野球愛」を描いたものと、「チーム愛」を描いたものがあるが、この映画は間違いなく後者である。。それはオープニングによく現れていて、他の野球映画の多くが父と子のキャッチボールという黄金パターンで幕を開けるのに対し、『メジャーリーグ』ではクリーブランドの町とそこに暮らす人々の風景が映し出される。その中でさりげなく、34年前に優勝したあと惨めに負け続けるインディアンスの様子が、新聞を使って描かれる。この導入部、実にうまい。あっという間に現在のチーム状況を説明すると、さっそくどうしようもない選手たちが一人ひとり呼び集められる。主人公のジェイク・テイラー(トム・ベレンジャー)は元メジャー選手だがひざの故障でメキシコ・リーグ落ち。新人投手のリッキー・ボーン(チャーリー・シーン)は刑務所から出てきたばかり。ウィリー・メイズ(ウェイズリー・スナイプス)はもともと名簿に名前がなかったのにド厚かましく紛れ込み、足の速さだけでレギュラーに。大砲セラーノ(デニス・ヘイスバード)はキューバからの亡命選手で変化球が全く打てない。そんな面々が揃うのである。

マイアミに本拠地を移転したいがために最下位、最低観客動員数を目指すオーナー未亡人は、そんなへっぽこチームが「15勝もした」といって不機嫌になる。このヘンまでの流れは勢いもあって実にいい。15勝する間に43敗もしているのだが。そして未亡人の嫌がらせが始まるのだが、予想に反して意外にも、シーズン終盤手前で60勝61敗借金1という、ポンコツチームにしては手堅く生き残ってゆく。このあたり、最初の1か月を5割で乗り切り、その後嫌がらせが始まって連敗地獄に堕ちる方が、らしいかなあと思ったり。負け続けてモチベーションがどんどん下がっていくチームの状態というのも、もうすこし面白い描写が出来たと思うのだが。ジェイクの恋愛話が絡めてあるのも私は好きだが、ちょっと簡単すぎかなあと思う。3年連絡を取らなかった恋人とよりを戻そうなんてムシが良すぎるし、もうすこしジェイクを通してメジャーリーガーの矜持みたいなのが描かれると良かったかな。

 と中盤はちょっと中だるみの感もなきにしもあらずだが、この映画の真骨頂は終盤のヤンキースとのプレーオフ。最後の試合にはかなり時間をかけている。先発のリッキー・ボーンを抑えにまわす、いわゆる「特攻ローテ」がカッコイイ!彼が最後に抑えで出てくることは読める展開 だが、それでいいのだ。シーズン当初は閑散とした観客席が、ファンで埋め尽くされている。0−0で進む白熱した試合は、 ヤンキースのツーランで均衡が破られるが、その裏、空砲と化していたセラーノの回心のツーランで同点に追いつく。しかし9回表、先発ハリーが力つき、(多分2アウト)満塁の危機に。そこでピッチャー交代、リッキー・ボーンの名前がコールされると、盛り上がりは最高潮に達するのだ。球場を埋め尽くしたファンが「ワイルド・シング」を大合唱! いや〜、このシチュエーション、たまりません。

 そして同点で迎えた9回裏。…とこの状況を作るところが、野球映画の王道たる由縁だ。一打サヨナラ。分かり切った展開で、どういうふうに得点させるか。ここにすべてが集約されるところが、野球映画の面白いところだ。落ちこぼれ球団インディアンスのワンシーズンを象徴する戦いがここにあって、それが見事に表現されていると思う。ポンコツらしい、実に泥臭い勝ち方ではないか。

評点 ★★★★

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇