MUDDY WALKERS 

ルパン三世(2014) 

ルパン三世 2014年 日本 133分

監督北村龍平
脚本水島力也
原作モンキー・パンチ

出演
小栗旬/玉山鉄二/綾野剛
黒木メイサ/浅野忠信

スト−リ−

 シンガポールにある美術館から、古代オリンピックのメダルが盗まれる。国際的な盗賊集団「ザ・ワークス」の会長ドーソンが、メダルを盗んだ者を次の会長にすると宣言したためで、ルパン三世(小栗旬)やピエールなど若手盗賊がチャレンジするが、メダルを最終的に手にしたのは峰不二子(黒木メイサ)だった。香港にあるドーソンの邸宅で彼は会員たちにクレオパトラの首飾りの一部を見せる。欠けた一部「真紅のルビー」は闇社会を牛耳るブムラックが所有しており、互いに相手の秘宝を狙い合っていた。この2つを奪おうとマイケル・リーが動き出したが、かねてからドーソンを張り込んでいたインターポールの銭形警部(浅野忠信)が邸宅を包囲していた。

レビュー

 アニメの実写化がここ数年続いていますが、その中でも特に注目されたのがこれ、「ルパン三世」ではないでしょうか。なにしろ「サザエさん」と並ぶ国民的アニメ。映画「ルパン三世 カリオストロの城」はあの宮崎駿監督の出世作でもあり、知らない人はいないというキャラクターですから、当然といえば当然でしょう。

 であるからして、まずは誰が誰を演じて、どうだったかという話になるのですが、それは悪くなかったと思います。ルパン三世=小栗旬、次元大介=玉山鉄二、石川五ェ門=綾野剛、は良かったです。特に玉山鉄二からは次元愛を感じました。峰不二子=黒木メイサ、銭形警部=浅野忠信は微妙だけど、許せる範囲だったと思います。

 だけど、感想としては、どうしても「これはルパンじゃない」となってしまう。ルパン三世といえば、アルセーヌ・ルパンを祖父に持つ大泥棒なんですよ。そんなことはみんな百も承知で見ているのだから説明はいらないけれど、映画ではしばしばそこにフォーカスします。まあ、それはいい。でも、やっていることは大泥棒ではありません。武器弾薬をしこたま使った破壊活動、そのものです。そういうのは、シュワルツェネッガーとか、スタローンとか、ブルース・ウィリスとかに任せておけばいいんです。ルパン三世が大人気だったのは、そうした破壊活動なくして、あっと驚く手法で盗み出す、まさに古典的な大泥棒だったからでしょう。そうそう、特技は変装でしたよね。ローテクで、人をだましたり欺いたりしながら、難攻不落のお宝を攻略する。それが見どころじゃなかったでしょうか。

 それともう一つ、ルパン、次元、五ェ門、不二子の4人はチームじゃないんです。あくまで一匹狼で、そんな彼らが、いろいろな腐れ縁などがあって、不思議につながって一緒にやっている、というのがいいんです。組織の論理やチームプレイなんていうのは、ないんですよ。それが、最初から犯罪者集団の中の一人、みたいな扱いになっていて、違和感ありまくり。だから冒頭から、もうストーリーについていけなくなってしまいました。

 キャスティングでは不二子と銭形が微妙、と書きましたが、この二人がなぜ微妙かというと、やっぱり元キャラとかけ離れていて(見た目というより、存在のしかたが)、バランスを崩す一つの原因になっているからなんですよ。黒木メイサはヤマト実写版のときもそうでしたが、気も強く腕っ節も強い戦う女、というキャラでないとダメ、という人なんでしょうか? 不二子がそういう感じになったのは時代の要請かもしれませんが、もともとの不二子は、甘い言葉でルパンを誘惑し、特に大活躍はしなくても最後においしいところを持っていく、そういうキャラではなかったでしょうか。そうしてルパンを利用しながらも、いざ危機となったら「たすけて〜ルパン!」となるところがいいんですよね。実は芯は強くて頭もいいけど、それは出さずにとっておく、みたいな感じが面白い女性なんです。だから、ルパンが翻弄されても許せるんですよ。でも、戦う強キャラだったら、逆にそんな不二子になぜルパンが翻弄されるのか、よく分からない。そんな感じになっちゃっているんですよね。小栗ルパンと黒木不二子の絡みは、なんだか見ていて辛かったです、二人のバランスが悪すぎて。

 銭形警部はというと、伝説の首飾りを取り返すためにルパンと取引する、という展開がありえない。ルパンといえばどんな状況であれ、手錠を振りかざしてルパンを追いかけ、逮捕する。それが銭形警部でしょう。そういうルパンひとすじな姿勢があるからこその面白さ、をなくしてしまったら、普通のアクションドラマと変わりません。

 というわけで、ルパンらしさをことごとく消しさったハリウッド調の大型アクション、という出来になってしまった本作ですが、アクションシーンもつなぎ方がごちゃごちゃしている上に、やたらとスローモーションを使うためにとっても分かりにくい。ストーリーも面白くない、となれば、がんばった俳優陣の演技も台無しです。

 ついでにいうと、マイケルやドーソンをはじめ、誰やねん?というキャラが多すぎるのも困りもの。マイケルに至っては、途中までずっとこの人が次元かと思っていましたよ。ハイテクを使いこなすルパンにもちょっとガッカリ。全体的に、ルパンでなければ出来ないことが一つもないのが残念すぎでした。しかも権利関係の問題があるのでしょう、あの有名なテーマ曲が流れなくてテンション下がりまくりです。あと、今回のお宝である「クリムゾンハート・オブ・クレオパトラ」という古代エジプトの首飾りが、超ショボいつくりで何の思い入れも持てない代物でした。お宝にストーリーがあるのも、ルパンの魅力の一つじゃないですか。今回ルパンがこのお宝を盗むのは、ある意味「お義理」的な動機からだったのですが、それじゃダメですよね。大泥棒は、お宝の持つ魔力にひかれて盗みに及ぶ、というものでなきゃ。

評点 ★★

<<BACK  NEXT>>

 MUDDY WALKERS◇