MUDDY WALKERS 

ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE

ルパン三世VS名探偵コナン
監督亀垣一
脚本前川淳

出演
栗田貫一/小林清志/浪川大輔
沢城みゆき/山寺宏一/高山みなみ
山崎和佳奈/小川力也/山口勝平 ほか

スト−リ−

 厳重な警備と捕縛体制をかいくぐり、怪盗キッドが宝石を盗んで逃走した。その途上で彼は発砲し、スケボーで追跡したコナンはナゾの剣士にスケボーを真っ二つにされてしまう。キッドの正体はルパン三世の変装、ナゾの剣士は石川五ェ門だった。コナンは、なぜルパン一味が日本に来たのかと訝しむ。そのころ、海外人気アイドルのエミリオ来日で、鈴木園子と毛利蘭は盛り上がっていた。二人はエミリオの滞在先をつきとめてホテルに押し掛け、エミリオの希望でベルツリータワー見物に出かける。だが実はエミリオはコンサートを中止するよう何者かに脅迫されていた・・・。

レビュー

 2009年にテレビスペシャルとして放映された「ルパン三世VS名探偵コナン」の劇場版で、ストーリー的には後編と位置づけられている本作。そうとは知らず、こちらの方から先に視聴したことを最初にお断りしておく。

 江戸川コナンのライバル、怪盗キッドを逮捕しようと、警視庁が大規模作戦を繰り広げる。しかし怪盗キッドはビルの屋上からまんまと逃げ果せてしまう。実はこれがルパン三世の変装だったという導入はバツグン!・・・だったのだが、舞台がコナンの本拠地東京なだけに、コナンの主要キャラの出番がしっかりと作られており、コナン初視聴としては入りやすくはあったが、なかなかルパンとの絡みが始まらず、そして何より「事件」が起こらない。コナンのお友達のちびっ子探偵団は、恐らく毎回の定番らしい「ダジャレクイズ」やアナグラムによる推理を披露。ルパン一味が来日したことを嗅ぎ付けて、なんとアジトを探し出してしまう。しかしさすがにルパン一味がちびっ子を相手にするわけにいかず、今ひとつ盛り上がらず。
 一方、鈴木園子と毛利蘭は、憧れの外タレ、エミリオの来日コンサートで浮かれており、滞在先のホテルを聞き出して押し掛けるしまつ。このエミリオが、コンサートを中止しろと脅されている、という話が出てきてようやく事件の匂いがしてくる。園子と蘭がエミリオと外出し、ベルツリータワー(どう見ても東京スカイツリー)で転落騒ぎを起こす、というエピソードはそれなりにハラハラさせられるが、結局断片的エピソードで終わってしまう。エミリオへの脅迫は自作自演とわかったが、実はそうした理由は「悪い人たちがコンサートを利用して闇の取引をしている」ことにあるらしい。そこでようやく事件の匂いがしてくるのだが、その取引の何が問題なのか、コナンやルパンがどう絡むのか、阻止することでどんな正義が果たされるのかがよく分からないまま、最終的に取引現場に踏み込んで、FBIまで登場しての銃撃戦と空中戦で幕を閉じる。

 で、見終わって「結局、ルパンって何か盗みに来たんだっけ? お宝って何だったの? ただコナンに協力しただけ?」となってしまった。一つひとつのエピソードは派手に盛り上がるが、全体としてはちぐはぐな印象。しかも、事件の匂いがしてから、話がまったく分からなくなってしまったが、その理由は、本作公開の4年も前にテレビ放映された前編から持ち越された「ヴェスパニア鉱石」をめぐる陰謀という設定が絡んでくるからだ。ヴェスパニア鉱石とは、ガンダムにおける「ミノフスキー粒子」のような効力を持つ希少金属という設定だが、ガンダムのように軍事が絡む話ならいざしらず、海外人気アイドルを迎えて盛り上がる東京、というお話に絡めてくるには無理がある。最後にはルパンと一緒にコナンが軍用機を操縦していて、さすがに「それはないやろ」と思わされた。まあ、お祭り企画だからこれでいいといえばいいのだが、せっかくのコラボを生かした面白い話に出来なかったのかと悔やまれる。

 2013年に長らく銭形警部の声を務めて来た納谷悟朗さんが逝去され、前編と声優が大幅に入れ替わっている。本企画はルパン三世放映45周年記念でもあったようだが、さすがに時の流れを感じた。

評点 ★★

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