MUDDY WALKERS 

銀河鉄道999 THE GALAXY EXPRESS 999 

999 1979年 日本 128分

企画・原作・構成松本零士
監督りんたろう
脚本石森史郎

出演
野沢雅子/池田昌子/麻上洋子/肝付兼太
井上真樹夫/田島令子/富山敬
小原乃梨子/柴田秀勝/藤田渉子
納谷悟朗

スト−リ−

 今から遠い未来のお話。地球のメガロポリスは究極の機械化文明を謳歌していた。富裕層は、機械の体をただでくれるというアンドロメダ星雲にある星へ行き、機械化された永遠の生命を手にいれている。貧しい人たちは、そんな都市の外側で、機械人間が楽しみに行う「人間狩り」に恐怖しながら生きていた。星野鉄郎は「人間狩り」で母親を機械伯爵に殺された怨みを晴らすため、銀河鉄道に乗って機械の体を手に入れる旅に出ようと、定期券を強奪する。警察に追い詰められて危機一髪のところを助けてくれた黒い服の美女はメーテルと名乗り、彼に、一緒に連れていってくれることを条件に、銀河鉄道999の乗車券をくれるのだった…。

レビュー

 公開当時友だちと映画館で観て以来、これまで一度も再見したことがなかったので、「今みたら、どんなふうに感じるんだろう」と不安に感じる部分があった。それは同時期に大ヒットした『宇宙戦艦ヤマト』が、今ではすっかり色あせて共感を得るのが難しい作品になってしまったからである。しかし、それは杞憂だった。中学生だった当時は気がつかなかったが、ティーンズ向けのSFファンタジーの王道を行くこの作品、まさに世代を越える名作アニメである。

 アンドロメダ星雲をめざして宇宙をゆく蒸気機関車というアイデアは恐らく、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』からきているのだろう。松本零士独特のSFテイストに彩られ、母の面影を感じる謎の美女と少年との旅、少年の夢、野望、そして旅の途上で知る悲しい現実…と展開してゆくストーリーは、物質文明の頂点を極めようとしている私たち現代人の心に深くつきささるものがある。原作は1977年から1981年にかけて連載された漫画で、全18巻という長編。映画化にあたっては、主人公・星野鉄郎の年齢が10歳から15歳に引き上げられて賛否が分かれたが、『宇宙戦艦ヤマト』で開拓されたティーンズという年齢層をねらった改変で、成功していると思う。莫大なエピソードを持つ原作を2時間8分の長さの脚本にまとめるには相当の技量が必要だっただろうが、大人の入り口に立った少年の旅立ち、挫折と成長というテーマに絞って的確にエピソードがピックアップされており、長い旅の結末までをきっちりと見せてくれる。松本零士ファンにとっては「キャプテン・ハーロック」「クイーン・エメラルダス」など他作品とのコラボレーションも楽しめる贅沢な作りになっている。

 アニメとしての動きも躍動感にあふれてすばらしく、映画が始まってから15分ほど、ほんのわずかしかセリフがないが、見事にキャラクターが動いて物語の世界へと引き込んでくれる。叙情的な音楽もすばらしいが、特筆すべきはゴダイゴによる主題歌だろう。当時人気絶頂のグループがアニメの主題歌を歌うのは画期的なことだった。「さあ行くんだ、その顔をあげて〜 新しい風に 心を洗おう♪」ドラマのラストを締めくくる歌詞、ポップでキャッチーなメロディは、2時間余りの映画がこの曲のために作られたかのような、名曲である。

評点 ★★★★★

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