MUDDY WALKERS 

ディパーテッド The Deparded

ディパーテッド 2006年 アメリカ 150分

監督マーティン・スコセッシ
脚本ウィリアム・モナハン

出演
レオナルド・ディカプリオ
マット・デイモン
ジャック・ニコルソン
マーク・ウォルバーグ
マーティン・シーン ほか

スト−リ−

 犯罪者の一族に生まれたビリー(レオナルド・ディカプリオ)は、自らの生い立ちと決別するため警察官を志し、優秀な成績で警察学校を卒業。しかし、警察に入るなり、マフィアへの潜入捜査を命じられる。一方、マフィアのボス、コステロ(ジャック・ニコルソン)にかわいがられて育ったコリン(マット・デイモン)は、内通者となるためコステロの指示で警察官になる。

レビュー

 香港映画「インファナル・アフェア」をハリウッドでリメイク。監督はマーティン・スコセッシ。マフィアに潜入する警察官ビリー・コスティガンをレオナル ド・ディカプリオが、警察に潜入するマフィアの一員コリン・サリバンをマット・デイモンが、そして警察が殲滅しようとしているマフィアのボスコステロを ジャック・ニコルソンが演じる。舞台をボストンに移し、アイルランド系移民の悲哀と、善や正義が失われ暴力の応酬が繰り広げられる社会の現実を背景に、警察とマフィア双方が送り込んだスパイの駆け引きと対決を描く。

 それが監督の狙うところだったとしても、下ネタ満載のセリフや下品なやりとりに、うんざりさせられる。マフィアのボスであるコステロのチンピラじみた下 品さはどうなのか。どう見ても、大物マフィアには見えなくて困ってしまった。普通に『ロード・トゥ・パーディション』でポール・ニューマンがやったみたい な偽紳士程度で良かったのでは。ジャック・ニコルソンは狂人じみたキャラクターを怪演していたが、そもそもそんなキャラクター設定が必要なのか疑問だ。こ の極端な人物設定のせいで、彼に育てられたコリン・サリバンが彼を追い詰め射殺する、その心情の変化や苦悩が伝わってこなかった。このように、ジャック・ ニコルソンの出しゃばりすぎのせいで、かえって語られるべき主人公二人の心情やプロットが疎かになった気がする。  レオナルド・ディカプリオは犯罪人一家に生まれ育った唯一の善人として、裏表のある人物像を熱演しているが、マフィアに同化して悪事を働く彼の苦悩がい まいち伝わらないのは、脚本のせいだろうか。レオ様の熱演は最後まで報われず。汚辱にまみれた人物ばかりの中で、ビリーとコリンの両方に関わる精神科医マ デリンは興味深い存在だった。両方の男と寝てしまったのは残念。できればどちらとも肉体関係を持たない“神の視点”を持った人物であって欲しかった。

 全体としては、2時間40分を超える長丁場を飽きさせずに見せてなかなかの出来ではあるのだが、これみよがしに見せた切断手首とか、ビリーがマデリンに 手渡した黄封筒が結局どうなったのかわからないままだし、最後になって突然もう一人のネズミが現れたり、きちんと出したものをまとめきれずドタバタした幕 切れになったのがなんとも残念。特にリアリティを追求しているようなのに、相も変わらず中国人マフィアの安っぽいこと。中国政府が核攻撃に使うマイクロプ ロセッサをマフィアから買うという設定が、劇画チックで浮いていた。  密会場所にポルノの映画館(てか、まだそんなものがあったのね…)とか、音楽にローリング・ストーンズとか、正直「ふるっ!」と思ってしまった。スコセッシ監督の感覚は好きだけれども、この作品にはあまりマッチしていなかったかなー。
 最後のあの人は、彼もネズミだった…ていう解釈でいいんですよね? ご丁寧にもちゃんと、後ろにネズミがちょろちょろしているのを映してくれていましたし…(それも、余計なお節介)。

評点 ★★★

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 MUDDY WALKERS◇