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An another tale of Z

 Zガンダム第1クールのレビューを終えて 小林昭人さんインタビュー

 2011年8月より、小林昭人さんと共同で始めた「Zガンダム」全話レビュー。第1クール終了の第11話までのレビューを終えて、見えてきたものは? 物語のスタートからここまでを振り返り、作品に表れている作風や制作者の視点、そして明らかになってきた問題点について、小林さんとの対話を通してまとめていきます。

Zガンダム放映時の1985年には、ガンダムは他とは違う
「特別な作品なんだ」という意識があった。

1.放映された時代

■カオル 私は「機動戦士Zガンダム」を初めてみたのは実は2000年になってからで、放映当時の状況を体験していません。「機動戦士ガンダム」は再放送で観て劇場版も観に行ったので当時の熱狂は体験していますが、続編の登場するまでの6年間に次々新作品が出てくる一方、自分も大人になって、興味が別のところにいってしまったという感じなのですが、私よりも少しお若い小林さんから見た放映前後の状況はどんな感じでしたか?

■小林 今は2011年ですが、ここで時間を巻戻してみると、この作品は1979年の「機動戦士ガンダム」の続編のはずですよね。もっともこのガンダムという作品、当時の放送事情から何回も再放送され、実際に見たのは1983年だったとか82年だったという人は少なからずいると思いますが。映画が81年から82年ですから、たぶん、この頃に見た人がマスとしてはいちばん多いと思います。実は私もそのクチですね。おともだちの間で「量産型〇〇」とか「ガンダムとザクはどちらが強いのか」とかいう話を聞く頃に映画をやっていた記憶はありますから、この辺だと思います。ちなみに私があのロボットを最初に見たのはアニメですらなく、「お祈り戦士オガンダム」でしたね。これは82年で映画後の作品ですから、やっぱりこの頃がピークだと思います。

■カオル 初放送時には人気がなかったと。確か視聴率の低迷で打ち切りになったんですよね。人気が出たのは再放送を繰り返したことによるのですか?

■小林 そうなんじゃないかと思います。ビデオも有線放送もなかった時代ですから、何回も再放送して地道に支持を広げていく。「ルパン三世」なんかフィルムが擦り切れるくらいやっていたんじゃないですか、だから、ルパンのアニメを見ると画面にホコリが(笑)、、

■カオル 打ち切り当時のスポンサーは超合金の玩具メーカーでしたが、再放送でじわじわと人気が広がり、劇場版が作られてガンプラがブームになりましたね。小林さんは以前、アニメとプラモの販売を結びつけた説明をされていました。放映数話で新メカが出ないとプラモが売れない、というお話でしたが、再放送で人気が出たとなると、それとは矛盾するのでは?

■小林 別に矛盾しませんよ、再放送の方に合わせれば同じですから。プラモだって今と違って職人が金型から作らなきゃいけないんですから、そんなにポンポン作れるわけじゃない。いずれにしろ、放映数話で新展開がなけりゃ子供にだって飽きられます。



■カオル 確かにそうですね。この当時は主役機は1つと決まっていましたし、敵の新メカが続々登場するわけでもない。そんな中で飽きさせないストーリー展開がありました。だからこそ再放送が繰り返されたといえるでしょうね。その意味で、初放送時に人気がなく、再放送後に盛り上がっていったというのは、別にこの作品に限りませんね。

■小林 ヤマトなんかもそうでしたからね。ビデオもインターネットも有線放送もない時代では、一度見逃したら最低でも半年、場合によっては一年以上待つ必要があった。で、Zガンダムの放映は1985年ですが、その間にテレビではガンダムの再放送のほか、イデオンとかその他の作品も流れていたわけです。85年といえば、ガンダムはもう古いので飽きられ、ダンバインとかエルガイムとかもっと絵がメカっぽくて絵もホコリが映らない(笑)新作にシフトしていた頃でしょう。しかし、これはガンダムの神通力がなくなったというのとは違う、他の作品とは「別格」、特別な作品なんだという意識はこの当時すでにあったと思います。

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