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 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第14話「銀河の試練!! 西暦2200年の発進!!」


あらすじ (人類滅亡まで、あと280日)

 オクトパス星団ですでに3週間も足止めされているヤマト。艦内では乗組員たちの間にイライラが募っている。航行スケジュールでは45日で中間地点のバラン星に着いていなくてはいけないが、まだ銀河系を出たところですでに60日の遅れが出ていた。島は作戦会議で、星団の向こう側に抜ける海峡があり、そこを通れば難所を短時間で切り抜けられるとして嵐の収束を待つことを主張する。しかし古代は「本当に海峡があるのか」と疑い、コスモゼロで偵察に出かけるが・・・

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 宇宙の難所で3週間の足止めを食らっているヤマト。艦内では暇を持て余した乗組員たちが、将棋などに興じている。古代と島との対局は島が優勢で、古代は「待った」をかけてばかり。そんな古代に業を煮やした島が嫌みを言うと激高した古代は将棋盤をひっくり返し、二人は取っ組み合いの喧嘩を繰り広げることに。乗組員たちはそれを見物して退屈を紛らわせていた。
 いかにも暑苦しく、むさくるしいヤマト艦内である。すぐカッとなって手が出る、足が出る、の古代はさすが「戦闘」班長という感じだが、航海班班長の島も負けてはいない。取り巻きの乗組員たちにとっては、娯楽の少ない艦内では、この乱闘騒ぎはいい息抜きになっていたようだ。
 騒ぎは沖田の館内放送で中断され、中央作戦室で航行スケジュールの確認が行われる。すでに予定より60日の遅れが出ていることが明らかになり、そりゃ皆さん荒れるわねえ、と納得する。もしこのままどんどん予定がずれ込めば、その間に人類が滅亡してしまうかもしれないからだ。ところがスケジュール確認で、島があてにしている「海峡」の存在が実は未確認であることがわかり、島と古代の確執はヒートアップする。挙げ句の果てに、独断専行で偵察に出た古代は、たちまち嵐に巻き込まれてコスモゼロを大破させ、沖田から罰として格納庫の掃除を命じられるのだった。

 そんなピリピリしたムードを緩和させようと、生活班長の森雪は沖田艦長に「餅つき」を提案する。実はもうすぐ正月なのだ。ところが、沖田は「ダメだ」とにべもない。なんと、ヤマトの食糧事情が厳しく、2ヶ月分の食糧しかないというのだ。航行スケジュールで200日以上の予定を立てておきながら、なんでやねん!と盛大に突っ込んでしまう。沖田は途中で補給を考えているようだが、これこそ、島の「海峡はあるはず」以上に心もとない想定である。そうだ、ヤマトには農園があった、だから食糧自給ができるはずだ、と賢明に自分を納得させた。

 そんなある日、とうとう嵐が晴れ前方に通り抜けられる空間が出現する。なんと、その先には敵のガミラス艦がおり艦橋には緊張が走るが、沖田は「あれは戦艦ではない、見逃すんだ」と戦闘より安全な航海を優先するように告げる。そして古代に、海峡が通じているか調査するよう命じる。(大破したが、おそらくヤマト工場で修理したらしい)コスモゼロで再び飛び立った古代は海峡を発見、通信不能のため途中で引き返して帰艦し、何のために調査に出たのかと島からの逆襲を受ける羽目になる。しかし沖田の判断でここを一気に抜けることになり、艦内は慌ただしくなった。
 が、それで終わらないのが古代である。島を呼び出し、「お前をぶん殴ってやる」と息巻き、結局再び殴る蹴るの喧嘩になる。

 結果的に、古代が恐れたように海峡が向こう側に通じておらずヤマトは遭難、ということにはならず、ヤマトは無事宇宙の難所オクトパス星団を抜けて、新年とともにイスカンダルへ向けてさらに前進するのだった。

ピックアップ 「男の友情」

 古代と島はしばしば衝突するが、この回では将棋の最中、ヤマトの海峡突破前の2回にわたって大乱闘を繰り広げ、2回目の乱闘では二人とも青あざだらけの姿で艦橋の席についている。猪突猛進の古代と冷静沈着な島、それぞれの性格の違いでこの二人の衝突は説明されることが多いが、それだけではないように思う。前回の第13話にあったように、古代進は両親を遊星爆弾の攻撃で失い、兄も冥王星での会戦で帰らぬ人となった。ガミラスに対して強い復讐心を持つ一方、地球に彼の帰りを待つ家族はいない。対する島は、第10話にあったように両親とも健在で、年の離れた弟もいる。無事に地球に放射能除去装置を持ち帰らなければ、という思いは古代よりずっと強いだろう。
 将棋での喧嘩はそれぞれの性格によるものだ。しかし2回目の海峡突破前の喧嘩は、こうした二人の背景の違いを感じさせるものだった。古代は、もし自分の調査が不十分だったためにヤマトが遭難しても、それはいい、でも、お前だけは許せない、と言い放つ。古代はこのように、自暴自棄になりやすい内面の葛藤を抱えているのだ。島は冷静沈着な性格だが、そういう古代を受け流すことができるほど冷めてもいなければ大人でもない。真っ正面からぶつかり合い、殴り合うことでしか受け止めるられないのだ。だから二人は殴り合うのだが、ある意味それこそが「友情」の証だといえるのではないだろうか。

 ヤマトの航海を成功させて地球を救いたい。それは殴り合う二人が抱く共通の願いである。海峡に突入したヤマトはぶつかり合う気流(?)にもまれて前進が阻まれる。重い操縦桿に悪戦苦闘する島に思わず手を差し伸べる古代。殴り合っていた二人が、最後には力を合わせてヤマトを前進させるのである。二人は必ずしもウマが合うタイプではなかったかもしれない。しかし陰にこもらず、互いに腹の内をぶちまけ、時には殴り合うことができるほど相手に対して正直でいられた。だからこそ、こういうときも正直に、思いのままに手を取って力を合わせることができるのだ。こういう「男の友情」は、自分だけは安全圏にいたい、という発想では作れない。だとしたら、すぐに頭に血を上らせて殴り合う二人を、簡単に指差して嗤うことは、果たして正しいことだろうか?


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第14話 反撃!テレサを発見せよ」



地面の上で死ねたら本望よ!───── 斎藤始


あらすじ

 ザバイバルとの戦闘に勝利した古代らはテレサの宮殿テレザリウムに辿り着く。一方デスラーは逮捕され、腹心タランは無念の涙を呑む。


数少ない空間騎兵隊の見せ場

Aパート:ザバイバルとの戦闘、ザバイバル対斎藤
Bパート:デスラー拘束、テレザリウム発見

コメント

 テレザート星のエピソードはこの物語にしては実はかなりの尺を取っている。実は前話の到着以降5話もあり、全26話の5分の1を占める。これはゴーランド艦隊との戦闘やデスラーとの戦いよりも長く、ややバランスが崩れているが、話の大半がここに来て本邦初公開の島との恋愛話なので話としてもやや退屈で何だかなという感じである。映画版のテレサは反物質人間でそもそも恋愛の対象になるような存在ではなかった。
 14話では戦艦ヤマトの寄宿人、無為徒食のルンペン兵団であった空間騎兵隊がようやく同じ陸戦部隊、ザバイバル戦車兵団と戦い面目を施す話だが、ザバイバル部隊が全滅したことでズォーダーはデスラーへの怒りを露わにする。陰謀が露見しかけたことを知ったサーベラーはデスラーを拘禁する。彗星帝国の同盟者とはいえ、かつての大帝国の総統が宮廷の一女官の指図で投獄される様子に腹心タランは無念さを露わにするが、実質は流民という現在の立場を最も自覚しているのは他ならぬ総統自身である。デスラーは無駄な抵抗はせず、悠然と監獄へ足を運ぶ。
 筆者が視聴しているビデオには英語の字幕が付けられており、これはたぶん販社のヴォイジャー・エンタープライズ(米国の西崎氏の会社)が付けたものだと思うが、デスラーについては“Lord(大公)”と大帝に準じる呼称で呼ばれている。一方サーベラーはデスラーを“leader(指揮官)”と呼んでおり、明らかに使い分けがなされている。我々の知る宇宙戦艦ヤマトではデスラー総統(Fuhrer)なので、サーベラーの呼び方の方が近いが、元々フューラーという呼称はドイツ語で指揮官という意味であるがナチス党の総裁の呼称でもあり、政権を取ったヒトラーがその後も党首のこの呼称を用い続けたことによる。
 我々の知るナチスの総統というと元は伍長上がりで、画家くずれのボヘミアのルンペンであり、落ちこぼれの劣等生で、陰謀や詐術で数あるライバルを蹴落とし粛清して成り上がった人物という印象が強いので、デスラーもそういう人物と思いがちだが、ヤマト2以降のデスラーはどう見てもそういう育ちではなく、より貴族的で、一介の戦士としても経験と実力に富み、より誇り高い人物である。そもそもヒトラーなら監獄のシーツくらいで文句を言わない。  元々ナチスの総統をモデルにしてデスラーと名付けたこの人物(後年の松本零士の主張を筆者は全く顧慮していない)がどうしてこうなってしまったのか、筆者にも良く分からないが、宇宙戦艦ヤマトの設定には元々ギリシャ・ローマ史への傾倒があり(イスカンダル(=アレキサンダー大王)という呼称など)、敵役というとどうしてもローマ帝国がイメージされることがある。ヤマトの延長で、その極限がほぼ同じスタッフが制作した筆者レビューの「機甲艦隊ダイラガー」である。
 ヒトラーが神聖ローマ帝国(ローマ帝国の後継国)を意識して「第三帝国」と名付けたように、実際には敗北したナチスにはあるべき帝国のイメージがなかったために、当時のスタッフは実はこういう帝国と古代ローマにデスラーの帝国のイメージを重ねたのかもしれない。ナチスについてはシャイラーの優れた著作(第三帝国の興亡)があるが、彼らがこれを読んでいたなら、デスラーについてはこういうイメージ(ローマ貴族)では構築しなかったに違いない。


ヤマト上陸中でも相変わらずの酒飲み彗星帝国

付録・宇宙戦艦ヤマトの飲酒事情

ガミラス

執務中は禁酒、指図され小姓が酌をする。グラスは使い捨て。天井都市の決戦でヒスが差し出したのはおそらく清涼飲料水。プライベートでの飲酒は可(ゲール、ドメル、ダゴンなど)。

ビーメラー星

飲酒より自身が酒の原料になることの方が多い。

ボラー連邦

コスモ共産主義国なので禁酒。酒瓶すらない。

バース星

ボラーより緩いが多少たしなむ程度。

暗黒星団帝国

原則禁酒、飲酒時には小姓がグラスを殺菌消毒し、指紋さえ残さない。

ディンギル帝国

神権政治なので総統もアルコールなし。

彗星帝国(ザル)

各所に酒瓶が置いてあり、要塞内ならどこでも飲酒可能。時折行われるパーティーは無礼講(大帝に敬礼さえしない)。なお、バーにバーテンはおらず、酒のつまみも見られない。大帝さえ原則として手酌

地球連邦

原則禁酒、ヤマトのみ日本酒、ビールを艦載。実写版では洋酒も積み込む。空間騎兵隊は戦闘行動中禁酒(ミルクで代用)。つまみはさきイカなど市販のスナックがほとんどで、おでんや小料理は見られない。

イスカンダル

パート1、新たを通しスターシャは下戸と思われる。実家では酒豪の古代守はつらい。どじょう踊りもご法度。

テレザート星

テレサが提供した酒のつまみが地球より上質だったことから、人並みの飲酒文化はあり、テレサ自身飲酒に理解があるはず。嫁にするならこういう女性がいい。

シャルバート星

神道国家なので供物以外酒はなし。

SUSその他

たぶん禁酒。


 ヤマトがテレザートに上陸したにも関わらず、今回もズォーダーは酒を飲んでいたが、階級の上下にかかわらず、執務室でもどこでもバーがあり、酒瓶が置いてある組織は宇宙戦艦ヤマトの数ある悪の帝国でも彗星帝国だけだろう。この回はラーゼラー以外の全幹部が飲酒していたが、デスラー失脚の陰謀を言い含めるため、あちこちに酌をして歩いていたサーベラーはその手慣れた様子から、たぶん、要塞都市の高級スナックの元マダムかもしれない。カットシーンからの類推で宇宙戦艦ヤマトでアル中疑惑があるのは艦医の佐渡酒造とズォーダー、そしてこのサーベラーである。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★ やや退屈な話だが、デスラーの陰謀劇を加えたことでスリリングに。

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