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 宇宙戦艦ヤマト(1974)各話レビュー →宇宙戦艦ヤマト2レビュー

 第4話「驚異の世界!!光を飛び越えたヤマト」


あらすじ (人類滅亡まで、あと362日)

 地球を飛び立ったヤマト。沖田艦長は早速、ワープテストを実施しようとする。ワープとは、光速を超える速度で航行し、時空に歪みを生じさせて一気に「ジャンプ」する航法である。もし失敗すれば、宇宙そのものが崩壊してしまう可能性もあるという。まずはテストとして、月から火星へのワープを試みるヤマト。しかし、超巨大ミサイルでの撃破に失敗したガミラスは、冥王星基地から空母を出撃させて、ヤマトを迎撃しようとしていた。

コメント

 ヤマトの脅威のメカニズム、第一弾は「波動エンジン」による「ワープ」である。今では使い古された感のある「ワープ」であるが、茶の間にこのようなSF用語を送り届けるようになったのは、日本では本作が最初ではないだろうか。ヤマトが初めて試験的に実施することになった「ワープ」は、多くの人にとって、未知の概念、未知の科学技術(もちろんフィクションではあるが)なのだ。
 それだけに、この最初の「ワープ」にたっぷり1話分をとってストーリーを作り上げ、前半では、その空想科学における理論や、宇宙が消滅してしまうかもしれないという危険性について、技術長の真田を通して、私たちに説明している。

 もちろん、ヤマト以前にもSFアニメがなかったわけではない。「鉄腕アトム」や「サイボーグ009」など、長く歴史に名を残す名作が、テレビアニメの黎明期から製作されてきた。その中でも「宇宙戦艦ヤマト」が異彩を放つのは、まず、一にも二にも、タイトルにもなっている「主役」がロボットや人造人間など、人間をイメージさせる人格を持った存在ではなく、「宇宙船」であることではないだろうか。その性能は、クルーが乗り込むことによって初めて発揮される。2話でその来歴が語られ、3話で新生して発進したヤマトだが、その乗組員はもちろん、艦について熟知しているかに見える沖田艦長でさえ、その性能を実体験したことはない。ヤマトはやがて太陽系を出て未知の宇宙へ旅立っていくわけだが、その前に、まず未知なる「ヤマト」という船について、一つひとつ丁寧に、その脅威の性能を、登場人物たちとともに体験できる。それが、この最初のパートの醍醐味といえよう。

 本邦初の「ワープ」の映像表現も、近年のSF作品によくある、光とともに空間に吸い込まれ、光とともに別の空間に飛び出してくる、といった表現に比べると異色なものとなっている。「ワープ」が始まるとともに視界が歪み、ヤマトの背景に恐竜や原始人があらわれる。「時空の歪み」という概念を、アニメ的に分かりやすく表現したものであろう。もちろん当時ワームホールという概念はあったが、まだ一般的ではなかっただろう。SFに用いられる科学の概念を、視覚的にわかりやすく表現しようという制作者の創意工夫が感じられるシーンである。森雪のコスチュームが透けて見えるのは、創意工夫というよりサービスカットというべきかもしれないが。  

 月軌道から火星へ向けてワープしようとするヤマトを狙って、ガミラスが攻撃を仕掛けてくる。ワープまで残り3分となったところで、被弾したブラックタイガー隊の山本が着艦できず、僕に構わずワープしてください、という人間の側のドラマがある。古代は着艦口へ降りていき、パイロットの山本に口頭で指示して無事戦闘機を収容する。
 一方がミラスは、攻撃を仕掛けようとしたヤマトの姿が消えたことに驚いている。それは、地球にワープできる船があったのか、という、別の種類の驚きである。そのことは、本国ガミラス星にいるデスラー総統へも報告される。
 イスカンダルからもたらされた科学技術によって、14万8千光年の宇宙の旅が可能になったヤマト。初のワープテストは、艦に少々の損傷を残したものの、無事に成功した。しかし、どうやら敵のガミラスは、そんな地球をはるかに上回る科学技術力を誇っているようである。その「差」を埋めることは可能なのか、可能とすればそれは何なのか? まだヤマトの旅は、始まったばかりである。


ピックアップ 「科学力」

 宇宙戦艦ヤマトの舞台となるのは、西暦2199年の地球である。地球防衛軍が組織され、冥王星までの太陽系の圏内を航行できる宇宙船を有しており、地下に巨大な地下都市を建設するなど、現在よりも相当に進んだ科学技術を有していることは間違いない。また、ヤマトの設備を見ても、何でもオートメーションで作り上げることのできる工場や、(映像では出てこないが)食糧生産が出来る「ヤマト農園」もある。長期にわたって、補給が受けられない状況下で、生命を維持し乗組員の生活を支えるための技術は、太陽系全域に進出してゆく過程で培われたものであろう。  

 しかし、地球上が滅亡寸前といわれるまで荒廃している現状から見て、2199年の地球では、どのようなエネルギー源から必要な動力や電力を得ているのか、ということを推察することは出来ない。また、宇宙開発が進んでいることは考えられるが、ヤマトは月に着陸することはなく、また、ワープテストで損傷した箇所を修理するために着陸した火星にも、基地や都市らしきものは見当たらなかった。火星には、第1話で古代と島が訓練のため滞在している場面があり、何らかの訓練基地があることはわかっているが、彼らの背景に描かれていた火星は、荒涼とした砂漠であった。まだ宇宙開発が進んでいないのか、あるいは、ガミラス星の攻撃によって荒廃したのかは定かではない。  

 一方のガミラス星は、第4話ではじめて主星の風景が映し出されるが、地球とは全く違った景観を持つ、非常に先鋭的なデザインの都市である。オープニングナレーションで、イスカンダル星と並んでいる様子が描かれていることから、地球からの距離はやはり14万8千光年ほどあるのだろう。そんな遠方からはるばる地球をめざし、冥王星に最前線基地を構える。ヤマトの「ワープ」と同様の高い宇宙航行技術を持ち、使いこなし、冥王星からピンポイントでヤマトをミサイル攻撃できるということだけとってみても、相当高度な科学技術を持っていることは間違いないであろう。  

 ヤマトがワープした、という知らせを聞いて、デスラー総統は高笑いするが、それも頷ける話である。そのような敵に対して、何をもって立ち向かっていくのか、というのもまた、ヤマトの見どころの一つといえるであろう。


関連レビュー
「宇宙戦艦ヤマト2第4話 未知への発進!」



地表に墜落したら、大惨事になる!───── 藤堂平九郎


あらすじ

 防衛会議の決定に失望し、各々部署を放棄して地下ドックに集結する旧ヤマト乗組員。一方、誘いを受けた島は反乱行動に参加することに躊躇を感じていた。一方彗星帝国では戦闘衛星を爆破して発進してきたヤマトにサーベラーらはデスラーの予言が的中したことを感じ、ナスカ艦隊に警戒を命じる。


海底から発進するヤマト

Aパート:ヤマト乗員集結、島の逡巡
Bパート:ヤマト発進、戦闘衛星との交戦

コメント

 先の2話と比べるとあまり考えさせられる所のない話である。乗員はすでに集結し、島も復帰して戦艦ヤマトが出港する話だが、復隊を命じつつ、その実はヤマト乗員に暗黙の支持を与えている藤堂長官の腹芸が見所の話である。が、その腹芸のせいで高価なマグネットミサイルが4発も破壊され、偵察機1機撃墜、戦闘衛星まで爆破されたことを見た参謀は金星基地のアンドロメダに迎撃を命じる。ミサイル1発が2億円として、偵察機が100億円、戦闘衛星が300億くらいと考えるとずいぶんな経済的損失である。あと、アンドロメダの燃料代もある。防衛軍にこれだけの損害を与えれば長官の罷免問題に発展しそうなものだが、ヤマト世界ではそういうことはなく、次の話では艦隊司令の土方までもが藤堂に同調するので、古代の上長二人のこの共謀により、ヤマトはなんとか太陽系を離脱できることになる。アンドロメダにはドライブレコーダーは付いていなかったらしい。
 現実にあるのかこんな話と思うが、話のヒントはラストのナレーション、「祝福されざるものであったとしても、信じるもののためにヤマトは往く」に隠されている。実は似たような話があるのだ。「志(こころざし)」というものは日本人には重要な徳目で、特に武士道では重視されている。
 元治元年の天狗党の乱は水戸藩(現在の茨城県)の一派が当時の将軍後見徳川慶喜(水戸藩の出身である)に攘夷を求めて西上した話だが、日光東照宮で神君家康の霊に誓いを立てた彼らは幕府に追討を命じられた諸藩の検問を次々と突破し、なんと京の手前の敦賀にまで辿り着いて加賀藩に降伏した(直訴された慶喜自身が自藩の反抗に恥じ入り自ら追討に向かったこともある)。これは彼らが軍事的に有能だったからではなく、追討命令を受けた諸藩の武士たちが我が身を捨てた武田耕雲斎以下の天狗党の「志」に感じ入り、形だけ追討しつつこれを通してしまったことがある。当時の武士にとって、志を立ててそれを実行に移すことは幕命よりも気高く、侵すべからざる行為に見えていた。尊王攘夷運動は歴史の教科書の内容だが、およそまっとうな当時の指導者でこの運動を字義通りに実行することを考えていた者は皆無だったと言われている。建前と本音があったのであり、指導者の多くは開国派だったが、表面的には倒幕のため攘夷を装っていた。天狗党はその欺瞞を指弾し、その率直な主張が当時の(国際情勢に疎い)多くの士族に感銘を与えたのである。はるばる敦賀まで辿り着いて彼らが降伏したのは、直訴に向かった当の慶喜(水戸藩主の弟)が請願を受け容れないことを明らかにしたためである。志を失った天狗党は捕らえられ、首魁の武田以下多くは斬首に処せられた。
 この辺の感覚は、実は今の日本人には分からないかもしれない。いや、放映当時でさえ分かるものがいたかは疑わしい。が、日本人の深層心理には確かに天狗党に似たものがあるのであり、それは七〇〇年前の禅宗の渡来とともにあり、徳川幕府の二六五年間によって陶冶された日本人の心である。見た目は反乱に見える彼らの行動がその内実はともかく(天狗党も軍資金調達のために略奪などしていた)、清々しく美意識さえ感じさせるものに見えるのは、士族については明治になって彼らに共感を与えたスマイルズの西国立志編と同じく、それが古今東西に普遍的な義を含んでおり、特に戦前においては、それが我々の父祖の行動原理だったからである。
 なお、当時のムック本には土方や藤堂長官の人柄を説明するに「古武士」という表現が良く用いられた。西暦2201年にもなってヤマト乗員が執り行う天狗党まがいの行動は当時でも疑問のあるものだったが、少なくとも宇宙戦艦ヤマトを制作していた人間は分かっていたことの証左である。これは制作者が視聴者と同じレベルで物事を考えてはいけないことの良い例である。
(レビュー:小林昭人)

評点
★★★★ 様式美ではあるがシリーズ中最高の発進シーン。

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